エリス教団
「17時には聖教の支部に来てください。そこから村まで車で移動しますので。それでは。」
そういいロメロードは教室に戻ろうとする。本当にいきなりやってきて勝手なやつである。放課後はこっちは修行があるというのに。
そういえば何か忘れているような…。
「ちょっと待った!」
「何?」
そういうと彼女は振り返る。その姿が先ほどの自分勝手な態度を思わず忘れてしまうほど美しく、ふと絵になるなぁなんて考えてしまった。全く黙っていれば美人というのに。
「降臨月祭の、あの変な集団と人が魔物になる現象は一体何だったんだ?」
と疑問を口にした瞬間彼女の視線は鋭いものに変わった。そしてゆっくりと話し始めた。
「あの集団は数年から表れた新興の宗教団体。エリス教団と名乗っているそうだけど、名前からして邪教なのは明白よ。」
「どういうこと?」
「貴方が何の宗教を信じているか知らないけど、聖教の聖典にあるのよ、エリス神。魔王を使わした邪神とされているわ。」
「何か救済がどうとか言っていたけど?」
「さあね。邪神を崇拝する辺り危険なのは招致だけど情報が集まっていないのよ。あの小瓶に入った液体だってどこから入手して、中身が何なのか成分も全く分かっていないのよ。」
「あの人を魔物に変えるやつ。あんなのが出回ったら…」
「それは大丈夫だと思うわよ。今のところ民間に流出したような情報は入っていないし。一番問題なのは薬の効果よ。研究所に送ったら、希釈した液体でも鼠が魔法を使えるようになったのよ。」
「まさか魔物化!?そんなの川にでも流されたら…」
「いいえ。研究所によれば魔法を一時的に使えるようになっただけですって。しかも小規模な魔法を。一種のマナポーションに近いそうだとか。」
そうこう話してると聞いたことのある声が俺を呼ぶ。
「あれ、雫じゃん...って隣にいるのはロメロードさん!?え、一体どういう組み合わせ?」
「ああ、オルノス。ちょっとな...」
「編入したばかりでまだ友達もいないですから、こうして村雨さんに学校を案内してもらっていたんです。」
「へ、へぇ~そうだったんですか。分からないことがあったら俺にも聞いても大丈夫ですよ。」
「ありがとうございます。」
その直後オルノスはこっちに勢いよく向いて
「おい、ちょっとこっちこい。」
と腕を掴んでどこかへ連れて行こうとする。
「何だよ一体?」
すると両肩に手を勢いよく乗せて顔を近づけてきた。しかも凄い渋い?悲しそうな顔で。
「お・ま・え、どうやってアルメラさんと仲良くなったんだよ?」
「え?別に仲が良いってわけじゃ...」
そんな俺の言葉を遮って捲し立てる。
「いいや、何か秘密があるはずだ。なぁ俺たち友達だろ?俺に女子と仲良くなる方法を教えてくれよ師匠...!!」
と今にも泣きだしそうな顔で訴え、身体を前後に揺らしてくる。俺とロメロードが一緒にいるのは仲良くなる方法とは全く関係がない。つまり俺に縋っても何も出て来るはずがない。というか俺は師匠じゃねぇ。
「ちょっと、鬱陶しいって、離れろ。」
そんなことをしていると予鈴がなりだした。休憩時間だというのに精神的に疲れたよ全く。