勇者の娘の素裸
結局彼の殺しても良いという自棄のような発言の真意も聞けぬまま、放課後に彼との死線を越えるような鍛錬を続け数日たったある日のことだった。
今日は生憎の雨。しばらく晴れ続きだったのでそんなこと全く予想していなかったため傘を忘れて雨に濡れながら帰った。秋の暖かさが残るとはいえもう10月。風邪を引いてはいけないと思いすぐに風呂場に直行した。鍛錬でまた汗をかいて風呂に行くことになるが風邪を引くよりマシだと思い風呂場の戸を開けた。
「え?」
妹は客間にいることは分かっていたので風呂場に誰かいるなんて予想にもしていなかったために目の前の光景に愕然とするしかなった。
「すま...ん?」
無意識なのか乙女の柔肌を下から上へ舐め回すように見ていることを自分で自覚して、謝罪のために顔を見た瞬間その違和感に気が付いた。
金髪なんて学院では珍しくなかったが、美人と言っても控えめなくらい整った顔と人にはありえないはずの長い耳。それを見てすぐにエルフの魔族だと分かったはいいが何故こんなところにいるか全く理解が出来なかった。
「...聞きたいことがあるのは分かるけど、さっさと出て行ってくれるかしら?」
その声と態度で一瞬で誰か分かってしまった。
「すまん!」
そういいすぐに扉を閉める。あとでしっかりと謝罪をしなければと思っていたがほんの数分で彼女は風呂場から出てきた。俺はそれを確認するなり勢いよく頭を下げ誠心誠意謝罪をする。
「すみませんでした!!まさか貴女がここにいるなんて思わず...」
「...あとで話があるわ。そんな状態では話もできないでしょう?早く風呂に入って来てくれるかしら。」
彼女の放たれた言葉はいつもよりどこか冷ややかでそれが怒っているのだと判断のは簡単だった。そして俺が次の言葉を言い始める前に客間に入っていってしまった。話がありそうだったので俺は仕方なく先に風呂を済ませておくことにした。
そうして風呂を終えた俺は客間の方へ直行していた。客間の戸を開けるとロメロードが一人、神妙な面持ちで座していた。その表情からはどんな感情をしているか予想できない。俺は初陣のようなものを感じながら彼女が座る机の対面の席に座った。そして嵐の前の静けさのようなものが一瞬過ぎ、彼女から口を開く。
「つまらない話になるけどいいかしら?」
「あ、ああ。」
そうして語られたのはロメロードの身の上話だった。
まず彼女は自身がエルフと人のハーフであることを明かした。
そして先の魔王討伐戦で活躍した勇者である彼女の母はエルフで父はこの国の対魔軍の隊長だったと。でもその間に生まれた彼女はエルフという魔族の容姿をしながら魔法が使える事はなかったそうだ。
エルフは魔法特化。魔王討伐戦で両親を失ってしまった彼女は魔族としても人間としても中途半端で誰も引き取ってくれる人はいなかったそうだ。
そうしてしばらく孤児院で過ごしてたがそこに現れたのが今、仕事を押し付けて来る司祭だったそうだ。彼は彼女を養女として引き取った後、どこにだしても良いように教育を施したそうだ。
「...こんなこと聞いても良かったのか?」
「本当はずっと隠し通すつもりだったわ。けど貴方に見つかって隠せなくなったから。」
「その、本当にすまん。」
「別にいいわよ。でも私のことは秘密にしておいて。まだ誰にも言える気がしないわ。」
「別に秘密にしててもいいんじゃないか?」
「え?」
「誰にだって誰にも言えない秘密の一つや二つくらいあるだろ。俺にだって妹の楓が大好きという秘密がな...」
「それは知ってるからいいわ。」




