相棒?
「さて、貴方を監視するという話以外にも重要な話はありまして。ただ貴方のためだけに私という聖教の対魔用の主力を遊ばせているわけにもいかないです。そこで貴方には私がやっている仕事の補佐をしてもらおうということになりましてね。」
全くもって勝手な話だ。俺を監視するのは自由にしてもらっても構わないが、そちらの都合で俺を振り回すのはやめて欲しいところだ。
「いきなりそんな話をされても困るんだが。」
「貴方の事はここ数日でしっかりと調べさせていただきました。なんでも古くから続く村雨流剣術を継ぐ人で武を極めるためにこの学園に入ったとか。」
「ああそうだが。というか仕事なのかよそれ。」
「私の仕事は主に魔物関係。つまり私と一緒に来れば自ずと武も極める近道になると思いますよ。それにこの学園で基礎的なことを年単位で学ぶよりよっぽどためになるはずです。」
確かに直接魔物と対することがあれば俺の剣術にも少し磨きがかかるはずだ。それに俺が目指しているのは芸術としての剣術じゃない。誰かを守ることができる純粋な力だ。
この学園に入ったのも祖父の言葉によるものだし、色んな人に出会って少し見える世界が広くなった。でもまだこの学園で学べることもあるだろう。
「基礎を疎かにすることなかれ。祖父の言葉です。だから学園を辞めるつもりはありませんよ。」
「ええ私もここには少し用があって来たので今辞められると面倒です。というわけで他に何か質問はありますか?」
「ないよ。」
「そうですか。それではこれからよろしくお願いしますね。」
そういい彼女は手を差し出してきた。俺も同じようにして握手を交わす。よく考えたら昼食の最中だった。余りにも興味を引く話だったので仕方ない。
昼食を食べ終えた俺たちは食器を片付け食堂を後にしていた。そして話があるからと中庭の方まで来ていた。
「私が聖教の関係者というのは兎も角、仕事の内容までは人目のあるところでは話せませんからね。」
「それで?話ってなんだよ?」
「勿論仕事についてです。今とある村で行方不明者が続出するという事件が発生していまして、その調査の依頼です。」
「依頼?」
「聖教では民間から魔物に関する依頼を受けていまして、今回はその調査です。」
「へぇ~。で出て来た魔物を討伐するわけか。」
「今回はあくまで調査ですよ。まあ出て来た魔物のランクが弱ければそのまま倒してもいいと言われていますが、もし手に負えない相手であれば応援を呼ぶ必要があります。」
「ランク?」
「魔物の生態や種類についてはもう一通り授業で習っていますよね?ランクは魔物を13の種類に分類して影響が強い順番に順位を付けたものです。まあ保持している魔力の量によって上下しますし。変異種の暴魔なんかもいますから頭の片隅にあるくらいで十分です。」
「なるほど。」
本職の人に聞ける機会なんてそう多くはない。これを機にしっかり学んでいきたいところだ。