神子転生
誰かの慟哭が黒き天に木霊する。ここはどこだろう。私は誰だろう。
その疑問の答えを導くように私の視界は眩い光に包まれた。どこか懐かしいようなそんな感覚に全身の一つ一つが歓喜する。そしてこれに呼応するように誰かの声が聞こえてくる。
「やった!!やっと完成した!!」
世界と同化したような感覚から一つの個へと収束したことをその身で体感したからこそ分かる。私が一つの新たな命として生まれたことを。そしてゆっくりと瞼を開き、私という一つの魂の器に世界の記憶を刻み込む。
視界には白い服を来た女性が一人。ただ私を見つめ、感動の涙を流している。
「貴女は勇者を必要としない新たな世界を作る第一人者となるの。iV、それが貴女の名前よ。」
今まで観てきたからこそ分かる。この女が私の身体を作り出し定着させ、何を成したいのか。でもそれは理に反すること。禁忌というより自然に逆らうような傲慢にも制しようとするものだ。
そしてそれを成そうとするものは例外なく破滅を迎え、その破滅は更なる悲劇を生み世界を闇へと誘う。だからこそ警告をしなくてはならない。
「楽園の花を枯らす者よ、理を制すは破滅の時。古の大罪は万世へと続く、心せよ、その驕りは再び災禍への導きとなろう。」
「え、何?なんで話せて...?」
「彼の者が示せし贖罪の道しるべを歩むべし...さすれば一時の平穏は得られるであろう」
「どういうことなの!?貴女は聖霊ではないの?」
聖霊か。それは人が神の子の始まりを呼ぶときの俗称だったか。そうであれば否と答えるのが良かろう。魂の質を見れば自ずと分かることだ。この久しい感覚は忘れることはない。
「私は神の子。まだ魔という存在が生まれる前に在った者だ。さて、私は生まれ変わった神子として世界を穢す起点を消し去らなければならない。」
そう、かつて神々が人に与えた繁栄の証を。それを悪用する前に、眼前の悪を消し去るべし。
「あ、あっ...!!」
そうして集約された神力は放たれ、光となり女を貫き、轟音と共に闇を切り裂いたはずだった。
「なんてね。その身体は私が研究して私が造った物。何の対策無しに呼び出すわけないじゃない。」
見れば私が定めたはずの腕は全く別の方向を指し力を放っていたようだ。
「人間...!!」
「あははっ!こうしてみれば聖霊も案外可愛いもんだね。あ、神子だったか。まあ何でも良いや。それじゃiV、お休み。」




