怪しい動き
私は聖教に所属している上に魔王を倒した勇者の子という称号のせいで、普通の生徒とは明らかに休日が少ない。平日であっても放課後に平気で市外へ行かされ魔物を倒すという激務を行っている。
正直な話、ここ最近不自然に魔物の活動が活発になっていて全く手が足りていなかったので村雨君とエクシィさんに出会い仕事を手伝って貰って大変にありがたい。
そしてそんな数少ない休日を平穏に過ごせると思っていたのに教会の支部長に呼び足されてしまった。仕方ないと諦めつつ教会に来たは良いもののどうやら諸々の通達だけだったらしい。
魔王が現れる前からここの教会に所属していた大司教は個室の部屋で書類整理をしていた。そして私を確認すると手を止めてこちらを向く。
「最近再び邪教徒の動きが活発になっている。恐らく次に動くのは大会だろうと予想している。聖霊教会も同じ意見のようでな、共に邪の悪行を阻止しようという話になった。」
「それで私の出番ということですか。」
「そうだ。忙しい身だろうが頼んだぞ。話は以上だ。報告することは?」
「いえ、ありません。」
そうして用事を終えた私は退室する。
あの禿げ頭の頑固司祭が私の養父とはなんとも難儀だわ。魔王討伐戦で両親を失った私を引き取り育ててくれた恩はあるとはいえ、ここまで酷使されると私も流石に情が薄れてきそうね。最近の魔物の活発化で心の余裕が無くなってきてるんだろうけど。
私を大会の警備に参加させたのは恐らく聖霊教会から聖騎士が派遣されてくるからだろうが、いつになったらこの不毛な対立は終わるのだろうか。能力者という立場で見てみれば勇者も聖騎士も変わらないというのに。
さて外出次いでに村雨君が伝えてくれた伝言。メーリスさんが言っていた例のものでも取りにいこう。
あの生徒会長、あんな奇抜な恰好をして学院内を生活しているので本当に変な人なのだと思っていたが、前々から調達していた銃の弾薬や剣などの武器類の外にも生活用品や食料、機械の部品なんかも取り扱っている会社を経営しているのを最近知った。
例のものというのは魔王によって消失した国、レミフェリアの主要輸出品であるイリス鉱のことだろう。対魔特効で錬金術でしか生産出来ない重要資源をどうやって手に入れてきたのか気になることろね。
そこそこ遠い距離を移動し彼女のもつ工場が見えて来る。門前で承認を通して工場の隣にある二階建ての事務所に上がっていく。そしてドアをノックすれば彼女の声が聞こえ入室の許可を貰う。
「いらっしゃい、ロメロード嬢。」
流石に会社内ではあの奇抜なメイド姿も見れないだろうと思いきや今度は執事服に男装している。ここに来るのは初めてではないが毎度のこと呆れてしまう。
「例のもの。受け取りに来たわよ。」
「ええ、これがそのイリス製爆薬よ。もう加工は済ませてありますからこのままお使いになれますよ。」
そうして彼女の渡してきた箱の蓋を開け、小瓶に入った銀色の粉を確認して思わず驚いてしまう。間違いなくイリス製だった。
「一体どうやって...」
「企業秘密ですわ。」
「そう。これからも定期的に購入する予定ですけれど問題は?」
「ありません。何か品質に問題があれば連絡してください。」
「ええ、ありがとう。」




