安心
「あの!私以外で同じ天使を見た人はいますか...?」
重い空気が耐えられなかったのかフィーは唐突に切り出す。こんな暗い過去を語るのは俺であっても辛いものだと思っていたが意外なことにフィーの顔は少し明るい。悩みを誰かに話せば気持ちが和らぐようなものだろうか。いいや、そんなはずはない。でも、この空間に安心感を覚えていてくれているなら良いことだろう。
そしてフィーの質問に耳を傾けたものはいいものの、全員首を横に振り見ていないと否定するばかり。
「ごめんね、お役に立てなくて。」
「いえ、その...大丈夫です。」
そしてその答えを聞き顔が再び暗くなる。そんな顔をされるとやっぱりどうにかしたいと思ってしまう。何かないかと考えているととあることを思い出す。
「あ!」
と声に出したことで下を向いていたフィーと皆が俺の方に一斉に向く。
「楓、剣魔大会の日程っていつだっけ?」
「え?ああ、もしかして...」
「ああ、これならいけるだろ?」
そう大会にはツァイス中央都市以外からも沢山の人がやってくる。それは魔族も例外ではない。他の国でも同様の武勇を競う大会はあるものの未だ魔族の差別意識が残っている影響もあってか、大会に出場する魔族は少ないとのことだ。
しかしどこにだって例外はあるもので、このエンブレイ共和国は国教を五大神教にしたせいか魔族の交流が多い。剣魔大会もその内の一つである。
「え?え?」
皆が納得している中フィーは困惑した表情でこちらを伺っている。それを見たロメロードは大会に来たらフィーの母が見つかる可能性があることを伝えた。
「えっと、フィーは魔族だから。外に出ちゃダメって。」
「大丈夫。外に出たら以外と魔族は歩いているわよ。もし何か言われたら私が消し炭にしてあげるから。」
「ええ、私もエスタリア聖教を信仰しているけど、フィーを悪く言う人は許さないわ。主に誓って貴女を守るわ。」
「私も。出来ることは少ないけど困ったことがあったらいつでも頼って。」
「俺もだ。遠慮なく頼ってくれ。」
皆が守る頼れと言っているのだ、何も怖いことなんてないはずだ。そう思っていたが何が悪かったのかフィーは急に泣きだした。
「え?え?大丈夫か?」
するとロメロードはフィーを胸に抱き落ち着かせようとする。
「大丈夫。大丈夫よ。」
「は、い。ありがとう、です。」




