壮絶な過去
大量の魔物との戦いとあの鬼人との激戦を耐え疲弊仕切った身体を引きずり家に着いたのは日が完全に傾ききった頃だった。家の扉を開き出向いてくれた妹の表情が困惑と心配に変わるのは早かった。
「兄さん大丈夫!?」
「ああ、大丈夫だ。」
俺のボロボロの身体を見てしまえば放課後、何をしていたか想像がつくであろう。そして前に一緒にいたロメロードとエクシィが一緒に居ればその二人の関係性も見えて来る。が更に奥からやって来た人物を前に流石の妹も驚きを隠せないようで。
「お邪魔します」
「ああ、はい。じゃなくてなんで魔族の、それも天使がここに!?」
もう誤魔化せないなと悟った俺は今までの事と事情をある程度話した。勿論エクシィの持っている禁書なんかは話せるはずもない。そしてそれを聞いた妹は溜息混じりに話し出す。
「兄さんが何かしてることは予想がついていたけど剣術稽古のために魔物と戦ってたなんて。なんて言うか呆れたわ。分かってるの兄さん?魔物と戦うっていうのは怪我だけじゃすまないかもしれないのよ。」
「ああ、分かってる。特に今日は一番それを痛感させられたからな。でもだからと言って今更辞めない。俺はもしもの時誰かに助けを求めるんじゃなくて、俺自身でそれを解決できるようになりたいからな。」
「そう...分かった。でもこれだけは約束して、どんなことがあっても必ず生きて帰るって。」
「当たり前だ!」
エクシィのおかげで目に見える傷は癒えたとはいえ、身体に蓄積したものは簡単には拭えない。細身の身体からは長らくまともな食事をしていないことは明確だった。とりあえずこのままでは病気にならない方が難しいということでフィーを風呂に入れ、その後消化に良く栄養豊富な食事を振舞った。
そして落ち着いたとことでフィーの事情を聴こうと客間に集まったわけだが、なぜか楓も一緒に聞きたいと言い出しそこまで広くもない机に詰めて何とか席に座る。正面にロメロード、フィー、エクシィ、そして俺の隣に楓。この光景、非常に既視感がある。と言っても俺から見た景色ではないが、やはり圧迫感があるようでフィーもどこか落ち着かない様子だ。それがまるで怯えた小動物のように見えてこちらとしても罪悪感を覚えてしまう。だからなるべく優しく接する。
「あー、そのなんだ。フィーのことを知りたいんだが...教えてくれるか?」
すると少し不安が解消されたのか雰囲気が柔らかくなった。そして彼女は落ち着いた口調で自分の過去を離し始めた。
幼いころ母の様子が急におかしくなり、そしてそこから数日もしない内に手紙を残し家を出て行ってしまった。そして手紙の内容を頼りに親戚の家に世話になったが、殴る蹴るの暴行は日常茶飯事で食事もまともなものは食べられなかった。そんな生活が何年か続き、ある日フィーの婚約者を名乗る獣人が現れた。それが森で出会ったあの獣人であった。フィーはそんな大切なこと手紙に書いていないなんてあり得ない、嘘だと断定し家を出てきてしまったと。
フィーの話を聞き終えた俺たちはその壮絶な過去を前に沈黙するしかかなった。




