無力
突き出された刀を前に俺は覚悟を決めた。
「二人とも、この子を頼む。」
「傷の手当は出来るからこっちは任せて。」
「私も一緒に...!」
「ダメだ。俺一人で相手する。」
そう言い銃と剣を構えるロメロードを俺は止めに入る。別に勝てそうにない相手に自棄になったというわけではない。
「ほう、よいのか?全員で来ればまだ善戦出来ように。」
「ああ、この勝負の勝敗はあの子の保護には関係ない。どちらに付くかはあの子に決めてもらう、でどうだ?」
「よかろう。仕事とはいえ命まで奪うのは気が引けるのでな。」
「おい、勝手に決めるな!!刹那、お前の仕事はあいつを連れて行くことだろう!?」
それを聞いた刹那は獣人の方へ振り返り腹部へ一撃。そしてもの凄い速度で飛んでいき、気の根本に叩きつけられ気絶してしまった。
「さて、邪魔者はいなくなった。」
そうして鬼人刹那は刀を構える。俺も準備のために放り捨てた刀を拾い鞘に納め型を構える。
両者の間に緊張感が流れ静寂が訪れる。
「一ノ型『三日月』」
目にも止まらぬ早さで抜刀し相手を一撃で葬ることだけに特化した型。達人の域に達していて普通の人間相手であれば必殺の型。しかし今回は鬼人が相手。まだ熟達仕切っていないその型はいとも簡単に受け止められてしまった。
「軽いな」
鬼人と人間では力量に格差があると感じ鍔迫り合いになるのを防ぐため一旦距離を離そうとする。しかしそんな俺を見てここぞとばかりに重い一撃が飛んでくる。防いではいけないと分かってはいても避ける隙もなく刀で受け止めるしかなかった。そして俺は成す統べもなく吹き飛ばされてしまった。
ある意味目的通り距離を開けれはしたが、集中した力は俺の腕を痛めるのには十分だった。そしてその痛みに思わず刀を落としてしまいそうになるが、それは負けを意味すると耐え再び力を入れる。
「四ノ型『彗星』」
全体重をかけ刀を振りおろし真っ二つにすることを目的とした型。これもまた人間相手では完全に受け流すことは難しく、必ずどこかしらにダメージは入る型だった。しかし鬼人にとっては俺一人は軽いという認識だったようで、軽々と受け止めダメージすら与えることは出来なかったようだ。
「五ノ型『東雲』」
無数の斬撃を放ち相手を翻弄し体勢を崩す型。これなら少しは効果があるだろうと思っていた。しかし刹那は顔色一つ変えず来る斬撃を容易く全て防ぎきっていた。その光景に思わず呆れを通り越して恐怖すら感じてきてしまった。
村雨流剣術は十の型で構成されているが俺はまだ全てを習熟できていない。俺が習熟しているのは先の五ノ型までが扱える範囲だった。どうすればいいかとそんなことを考えている内にあることに気が付いた。
それは俺が剣術を浴びせているのに刹那はその場から一歩も動いていないという事だった。
つまりそれはまだ本気を出していないということ以外に他ならない。俺どころか全員で相手しても赤子に手を捻るより簡単に殲滅できていたであろう。そのことに気が付いたとき俺は自分が物凄く無力に感じてしまった。




