とらわれた翼
魔物の大軍と戦い疲弊した身体を少し休ませた後、再び俺たちは森の奥へと歩みを進めていた。
魔物と戦っていた時とは違い耳が痛くなるほど静寂な森は不気味さを感じるほどだった。しかしそんな静寂も唐突に終わりを告げた。
前方から聞こえる枯れ葉を踏む音に俺たちは警戒心を高め武器を構える。そうして現れた生き物を何と判断するまでもなく攻撃を叩き込もうとするが、その行動は捉えた視線が許さなかった。
「...あッ」
そんなか細い声を出し倒れそうになる人を俺は刀を放り捨て抱きかかえる。傷だらけの身体にボロボロになった衣服、それにまったく食事を取っていないであろう軽すぎる体重にこの子がどんな扱いを受けていたか想像してしまい苛立ちを覚えてしまう。
そうして次に目に入ったのは汚れた翼だった。綺麗であれば恐らく天使のような白い翼にとそこまで考えここまでボロボロになってしまった理由が簡単に分かってしまう。天使の魔族。両親を殺した大元の原因である魔王と同じ種族。全く関係ないと分かっていても嫌悪感を感じてしまう。
しかし、魔物と魔族は別物と分かっていて、更に住み分けされている地域もあるのにここまでになるものかと考えてしまう。
「ロメロード、とりあえずこの子を連れて帰ろう。」
「ええ」
「応急処置は私が」
そうして帰ろうとした矢先のことだった。森の奥から足音が聞こえそちらに振り返ると二人の人影が見えた。そうして現れたのは獣人と鬼人の魔族だった。
「なんだ人間?...ああやっと見つけた。全く手間掛けさせやがる。おい、そいつを渡してもらおうか?」
獣人の口からは勝手な言葉が出てくる。そんなこと引き受ける訳がない。
「勝手に出てきて勝手なことを言う。無理に決まってるだろ。」
「チッ、おい刹那。仕事だ。」
「了解。」
俺たちより一回り背の高い獣人の連れは俺たちの方へゆっくり歩みを進める。そうして腰に下げた刀を抜きこちらをひと睨みする。
「なんだ?犬っころの次は鬼か?」
「な!?やっぱり僕がいなくなったのはお前らのせいか!?もういい、皆殺しにしろ、刹那!!」
しかし刹那と呼ばれた鬼人は全く聞く耳を持たずこちらに近づいてくる。
「おい、聞いているのか!?」
「お前の僕は躾がなってないな。」
「黙れ、人間如きが!」
「なあ人間、その子を引き渡すつもりはないか?」
獣人とは違いこちらを睨んでいるのが目つきが悪いだけなのではと思うほど至って冷静な鬼人を前に呆気に取られてしまった。
「無理です。あなた達のこと、全く信用できないので。」
「それはこちらとて同じこと。」
確かに相手の立場になって考えれば俺たちも全く知らないただの人間だと納得してしまう。
「何もその子を捕らえ傷つけようというわけではないのだ。保護したい、ただそれだけだ。」
「それはこっちも同じです。」
両者一歩も譲らない舌戦についに鬼人は溜息をつき刀を構える。
「すまないがこれも仕事だ。」




