新世界への歩み
廊下から足音が聞こえてくる。ここまでくるやつはそういない。
「ああ『N』、戻ったのか。随分と遅かったようだが...遊んでいたのか?」
「いえいえ、あれは仕事をこなす上で必要な拘りですよ。まあ遊んでいたというのは強ち嘘でもありませんが。」
「それで?それに見合った収穫はあったのだろうな?」
「それはもう。あの血脈は最高の域ですよ!周りの状況を把握しながらの数多の魔法、去り際に放とうとした広域殲滅魔法。流石月を穢した一族の末裔だけある!」
見れば先程まで戦っていたのであろうか服があちこち焦げているのが分かる。その様子から激戦だったことが容易に想像がつく。魔法使いとしての強さが血筋で決まることは勿論知っている。
今の魔法発展は過去にあったものを含めると第二発展期といったところだ。あの家系は第一発展期からというのだから他にない知識も豊富に蓄えているだろうことは分かっている。しかし私は本当に欲しいのは魔法という一つの理に縛られたものではない。
「お前の話を聞きたいのではない。収穫はあったのかと聞いたはずだぞ?」
「おっと失礼、私としたことが無駄話を。こちらです。」
「ほう、これが例の禁書か?」
そうして話をしているともう一つ廊下から足音が聞こえてきた。
「ああ、やっと戻ったんだ?それでどうだった、貸してあげたホムンクルスaF型の試作は?」
「何と言いますか無駄...というか欠陥が多いように思えますね。戦闘に使えない上に命令無視、虚ろな目からは生気を感じなくて正直一緒に居たくない存在ですよ。本当に使えるようになるんですか?」
「そのための禁書よ。錬金術で造ったイリス鉱の身体と聖霊の定着率が悪すぎる。だから、禁術の灰エメスを研究しようって話になったのでしょう?ってこれ!?ここの記述!」
「神殺し...?かつて月で起こった災厄を沈めた暴虐の兵器か。」
禁術とそれによって作られた兵器で一柱の神と国が滅んだことは私の祖先が残してくれた書物のも記載がある。ただ制御が効かない破壊も不可能なものを今後扱うのにはいくら計画のためとはいえ抵抗がある。
のでまた別の一手としてこれは使わせてもらうとしよう。
「とりあえず私はホムンクルスの研究に戻るわ。それじゃ。」
「それでは私の方も...」
「お前はレオンのところに行って魔王の遺骸を使えるようにと手配をしておけ。良ければそのまま媒体、悪ければ異能の研究にでも役に立つ。」
「相変わらず人使いが荒いですよねホント。」
「さっさと行け。」
そうして出て行ったのを確認してようやく落ち着く。少しずづ着実に進んでいる。そして全ての計画が終われば完成する。神によってもたらされた魔王という名の理とそれに支配された世界の終わりと新世界の誕生が。




