魔法を教えて
アルメラの仕事仲間として迎え入れられて数日後、私は彼女の予定とちょうど暇な日が重なり前々から話していた魔法について話合う機会を得て彼女の家まで来ていた。そうして家の呼び鈴を鳴らして出て来るのを待つ。はーい、という彼女の声が家の中から聞こえ扉が開かれる。
「いらっしゃいエクシィさん。さあ上がって上がって。」
大会に向けた選抜試合で楓で遊んでいたらライバルだと認定されるという奇妙な出会いからこの関係は始まったが、正直大会ではテキトーに暇つぶしして大会に出ることなく卒業まで悠々と学園生活を送るつもりだった。そうして折角入った学院も大きな収穫もなくこのまま退屈な学院を送ると思っていた。
でもあの日見た彼女は誰よりも輝いて強く綺麗な魔法を放っていた。無論、私の足元にも及ばない非力と言っても良いような魔法を放つ彼女だったが、その顔は笑顔に満ちていた。その理由が私にもよく分かってしまった。
魔法を使う心地よさ、好奇心を満たす知識の数々、深い魔法の歴史。それらのほぼ全てを満たしてしまった私と彼女を比べてどうやら少し嫉妬してしまったらしい。もちろん魔法についてももっと深く知って欲しいと感じていた。そうして気が付けば私はここにいた。
「はい、冷たい茶。」
「あ、どもども。」
「最近外結構暑くなってきたよね~、ってエクシィさんそんなに汗かいてない?」
「ああ飛んできたから。」
「え~いいなぁ。私も空飛んで毎日学院に行きたいよ。」
確かに空を飛べれるが今日は何故か特別日差しが暑い。涼しい風でも吹いていればよかったのだが無風で飛ぶ気すら失せてしまった。といっても空間魔法は一回使ったら私の膨大にある魔力の半分近く持って行ってしまう大技なので多用はできない。というか学院を見ていたら分かるが世界でまともに扱えるのは私くらいだろう。普通の人は使ったら魔力が空になって不発に終わるくらいは消費が激しい。
「今日は空間魔法使ってきたの。たまに使わないと内容忘れちゃうから。」
「空間魔法?忘れちゃう??」
そういえば家にあった割と簡単な部類の技術でさえ学院にはないのだから知らなくても無理はないか。
「皆がブツブツ言ってる詠唱って魔法を行使するための準備で魔力を渡す儀式みたいなものなの。」
「ええ!?私は詠唱によって属性が変化してるって。」
「誰よそんな的外れなこと言いだしたの。でここからが重要でいちいち魔法を使うのに詠唱してたらめんどくさいでしょ?だから詠唱を簡略化する技術があるの。テンプレート化って言うのだけれど、その簡略化した詠唱に名前を付けたのがこれ、ウォーターボール。」
「あ!ちょっと!?」
無造作に放たれた水球は家の壁に当たることなく直前で初めからなかったかのように虚空に消えて行った。それを見た彼女は当たるはずだった壁を色々な角度から凝視して魔法の在り処を確かめようとする。
「え?え?え?」
「と、このように魔法を自由自在に操作する技術を...」
「凄いよエクシィちゃん!!」
と私の説明を最後まで聞くことなく、両肩を掴み目を子供の様にキラキラさせている。
「私にも出来るかな!?」
「じゃ、じゃあまずは簡単な詠唱のテンプレート化から。」
このあと楓の兄が帰って来てもまだ魔法についての話が続いてしまっていたのは言うまでもない。




