現れたもの
約束をしたその日、俺たちは学院の門前で集まっていた。勿論門近くには監視カメラもあるので迂闊に明かりがあるところに出ないようにする。完全に不審者である。
街頭と月明かりだけが夜道を照らす光。暗闇に潜む影。この場面で気持ちが昂らないわけないが、間違っても見つかりたくないので気持ちを落ち着ける。
そうして学院の倉庫の裏手にあるという壊れた柵を目指すことにした。暗い夜道でしかも学院の近くを徘徊しているのを見つかったらとやはりドキドキしてしまうが、そんな状況も楽しみつつある自分がいた。
倉庫裏の柵に来たは良いものの暗くてよく見えない。するとオルノスは持ってきた懐中電灯の光を付け何かを確認した後、柵の棒を回して取り外した。それを何本かやって人が通れそうなくらいのスペースを作った。
「よ~し!」
と意気揚々とオルノスは出来たスペースを潜り学院の敷地に侵入した。俺も体格はさほど変わらないので問題なく入れる。さてこれからどうするかと思っていたらオルノスが考えなしに歩きだす。
「おい、監視カメラ...」
気付いた時には遅かった。柱に設置された監視カメラが完全に俺たちを捉えていた。終わったと思って諦めていたが様子がおかしい。門前に設置されていた監視カメラには電力供給の赤いライトが付いていたが、俺たちを捉えた監視カメラに赤いライトが付いていない。もしかして俺たち以外に侵入者がいて電力を切った?なんて考えている内にオルノスはもう遠くの方まで進んでいた。
そうして誰にも見つからずに図書館まで来ていた。鍵の方は案の定警備員の巡回で空いていた。流石に中は月明かりすらないので真っ暗だが、懐中電灯をつけて警備員に見つかるわけにはいかないと明かりを消して入る。いつももの静かな空間でそれが当たり前なのだが、今のこの静寂は逆に恐怖心を増幅させる。
警備員が来れば足音で分かるから良いと言い聞かせて何とか噂の二階の窓までやって来た。しかし何もおらずどうするかオルノスと相談しようとするとそれは現れた。
赤いオーブは一回の棚の死角から現れ、俺たちを気にも留めることなく過ぎ去り目の前の窓を通っていった。本当に出たと驚いて二人とも放心していると一回の扉が開けられた音が聞こえてきた。見つかったら終わりだと物陰に隠れてやり過ごそうとする。
しかしどこか別の場所へ行ってくれという願いも虚しく、俺たちがいる二階へ真っ先に足音は向かっていた。そうして噂の窓がある付近で足音は立ち止まった。
「消えたか。」
男性とも女性とも言えない作られたような声が唐突に聞こえてきて、気になり少しだけ顔を出し姿を確認する。僅かに光射す月明かりに出らされた姿に驚いた。それは降臨月際でいたであろう白装束と姿が一致してた。
「私の邪魔だけはするな。」
そんな言葉を何もない虚空に言い放っているがこれは俺たちに言っているのだと察する。こちらを見てはいないがもういること自体は察知されていると考えていいだろう。これはどうするべきかと悩んでいたら、首から下げたネックレスを取り出し瞬く間に空間の揺らぎと共に消えてしまった。




