怪談
湿りと曇りで鬱屈とした6月の雨季が過ぎ、今度は晴れ渡った空と暑い太陽の光で暑さにうんざりする日々がやって来た。最近はこれと言って変化もなく平和に過ごしている。そうしていつものように一人で昼食を食べていると、俺を気にしてかオルノスが声をかけてきた。
「よう雫。また一人で昼食か?」
「うるせぇ、一緒に食いたいなら隣が空いてるからそっちに座ってろ。」
と煽りを綺麗にスルーし黙々と食事を続ける。オルノスの方はというと俺の言葉に促され隣に座りプレートに乗った丼を頬張っている。そして視界の端でその光景が見え、見てるだけで満腹になりそうだなぁなんて考えていると急に箸を止めた。そうしてこちらを神妙な面持ちで見つめたかと思えば急に話始める。
「そういえばこんな話知ってるか?学院の敷地内にある図書館。夜12時過ぎに2階の窓を見ると赤いオーブが見えるって噂。」
「はぁ?まだ怪談の季節でもないだろ。だいたいこの学院に魔物が入るなんて不可能だし...」
「そう!それに気が付いた警備員が怖くなって逃げたって。」
「眠気で幻覚でも見たんじゃないか?それか夢。」
一瞬あの吸血鬼が頭を過ったが、いたらそれこそ騒ぎになるはずだと忘れる。
「なぁ、今日それを見に行かないか?」
「はぁ!?見つかったらヤバいだろ。」
オルノスは自他共に認める剣マニアでいつも頭のネジが2、3本外れているなと思っていたがまさかここまでとは思ってもいなかった。警備員がいると自分で言っておいて見つかったらなんてかけらも考えていない。見つかれば停学とガッツリ反省文を書かされることだろう。非常に面倒だしやりたくない。
「見つからなければいいんだよ。」
「俺はいかないからな。」
「え~、じゃあ俺だけでいくわ。」
「はぁ~、俺も一緒に行くよ。」
オルノス一人で行かせたら自由気ままなこいつのことだ、あっという間に見つかってしまうだろう。心配だからとそんな言い訳を自分に言い聞かせて一緒に行くことにした。
それに見つかれば面倒なことになるが、確かに見つからなければ何もないのと同じだ。最近は修行続きで変化のない日々を送っていたせいか刺激を求めている。ここで何か一つでも面白いことがあれば修行のモチベーションも保てるというものだ。そうして俺たちは今日の深夜に学院前で集まることにした。




