誓い
「村雨君、大丈夫かしら?少し顔色が悪いようだけど...」
「ああ、酷い幻覚だった。」
俺は大丈夫と無理を言って相手を安心させるほどの余力は残っていたかった。未だにあの光景と感覚が頭から離れてくれないのだから無理もない。
「まさか魔王の眷属の生き残りが居たなんて思いもしなかったわ。あの状態だししばらくは目立つようなことはしないと思う。だから今日はもう帰りましょう。」
「ああ。」
そう言って俺たちはその場を後にした。
車で家まで送ってもらい、着いた時間は20時を越えていた。家の鍵を取り出し扉を開けると楓が待ち構えており、俺を見て驚いた顔を見せ勢いよく抱き着いてきた。その温かい感触と声に安心感を覚え、思わず強く抱きしめてしまう。
「お兄ちゃん!!もう、遅い...!心配したんだから...?」
「楓。ごめん...!!俺、もっと楓を守れるように努力するから...!!」
あの時の自分の無力さといったら本当にに酷いものだ。あれで誰かを、妹を守ろうだなんておこがましいにもほどがある。だから誓おう。俺は何があっても妹だけはちゃんと守る。そのためにはどんなことを犠牲にしてでも強くなるって。決してその努力を怠らないって。例え妹と俺だけになったとしても最期まで妹の勇者でいる。だから、この一時だけ温かい幸せに溺れさせてくれ。
翌日、俺はロメロードに話があると言われいつもの学園の中庭に来ていた。
「それでもう大丈夫なのかしら?」
「ああ、おかげ様で覚悟が決まった。改めてロメロードの仕事の手伝いをさせてもらう。」
「そう。では、昨日訪れた村だけど改めて討伐隊が派遣されることになったけど、これは不発に終わりそうね。あの様子だともうあの地で人が犠牲になることはないでしょう。一応相対した貴方からも何か変わったことがあれば聞きたいんだげど。」
「魔王の眷属って自称していて幻覚のようなものを見せて来るのと、やたら強かったのだけは覚えているがそれ以外は特には...」
「一応文献通りね。魔王とその眷属だけがもつ特異な力。『異能』があるのなら間違いないわね。」
「あいつ、倒せると思うか?」
「貴方は兎も角、私でも無理よ。ただの吸血鬼なら私でも容易いことだけど。」
「戦ってた時に使った爆弾。あれがあれば...!」
「無理よ。あれはイリス鉱っていう特殊な金属で出来ていて、錬金術じゃないと生成できないそうよ。その唯一錬金術が使える国が魔王に消滅させられて技術としては失われているわ。」
「国が消滅!?そんなことがあったのか!?」
「ええ、天使型の魔王。顕れた時に太陽が黒く染まったことから『黒陽の熾天使』なんて命名されてるけど。それに加工もオニキス社が独占しているしどうにもならないわよ。まあ仮にイリス製の武器か兵器があっても私でも簡単には倒せないわ。」
「じゃあどうしたら倒せるんだ?」
「...貴方が持つ力。『能力』があればある程度は善戦できるでしょう。」
「その能力がまともに扱えればあいつを倒せたのか...?」
「さあね。生憎私は能力を持ち合わせていないの。貴方の強くなりたいという気持ちは理解できるけど私では力になれないわ。」




