LAST.147勝1敗だけど。いいのよ、それでも
ラストエピソード、というより、エンディング。
書こうと思えばまだまだ書けますが、物語としてはこの辺で終えるのがキレイ。
「よお、郁ちゃん、調子はどうだい?」
「絶好調よ!」
ギルティったら「子供は守備範囲外だ。だが、もしお前がハイスクールを卒業しても気持ちが変わらないんだったら、改めて考えてやる」ですって!
あたしたち、将来を誓い合う仲になったのよ!
恋の力は偉大なのよ!
「ハハハ、その意気だ。しっかり頼むよ」
「任せてっ!」
シリウスコロニーと小惑星NO.152の採掘権を巡る争いは、マッチメーカーのドーリングで決着を着けることになった。
今日が、その決戦の日。
あたしたちの住むコロニーの住民と、シリウスコロニーの住民と、多分他のコロニーの人たちも。
ものすごい注目を集めているらしい。
まあ、戦争で大勢が争うよりも、平和的なのかもね。
100勝したメガドーラーは引退するという規定が解除されて、メガドーラー同士ならドーリングして良いことになったわけで。
その規定解除を利用して、この記念大会が開催されることになった。
で、優勝賞品が、小惑星の採掘権、という理屈らしいわ。
ま、うまいこと考えたんじゃないの?
で、あたしたちのコロニーの優勝者のギルティ・ランスは怪我の回復が間に合わない、ということで、準優勝者のあたしに白羽の矢が立ったわけ。
TILTのもう一人、たしか不戦敗にされた2st.ドーラーはどうしたのよ?ディランとか言ったっけ?
ギルティに聞いてみたら。(脅したんじゃないわよ?そんなことしないわよ?)
不戦敗という待遇に不服だったらしく、TILTを辞めたのだそうな。
簡単に辞めれるもんだったかしら?と思ったけど、そいえばあたし、パパを爆散させたと知って、TILTを辞めたんだった。あの時、誰にも何にも言われなかったから、多分大丈夫なんでしょう。
で、その彼はシリウスコロニーに渡って、向こうの優勝者になったドーラーを蹴散らしちゃって、この試合の相手になっているんだとか。
ん?バカなの?
相手があたしだと知って?
いや、違うか。ギルティだと思ってたのか。不戦敗にされた恨みを晴らしたいだけか。
ま、なんでもいいや。強い相手は歓迎するわ。
でも、もう禁止武装はコリゴリだから、それは止めてね。
“銀河流星剣”とか、絶対に止めてよね。マジでやめてよね。
愛機Sweet Bomb。
あの激闘から暫くたつけど、すっかり元通りになってくれた。
天使モチーフの白を基調にした、ヘビー級にしてはスリムな機体。
前の武装も悪くはなかったんだけど、やっぱりあたし好みの武装に戻してもらったんで、両手にはフィールドパンチAP。腕にはビームシールドS。肩にはフィンファンネルが整然と16機、翼の形に組まれている。
メガドライブ内蔵。脱出装置はコアファイター。脚部のブースターユニットは、最近開発された最新式。テスト段階の最終試験に使ってもらおうということらしい。
ちゃんと動きさえすれば、なんでもいいよ。あたし、天才だし。
「よっと!」
掛け声一発、コクピットに飛び乗る。
対Gシートのふわふわ感は、あたし好みのチョイ控えめ。
アームベルトは、ややキツメ設定。
男に抱かれている感じ?だといいな。知らないけど。
コクピットドアが閉じる。コアファイターのキャノピーは、光の加減で見えなくなり、全方位型モニター、正面のドライブギア、各種パネルも順調に作動。
灯。匂い。振動。機体と一体になる、この万能感。
ああ、生きてるって感じ。
AKに搭乗れない?
トラウマ?
なにそれ?
それは、あたしじゃない。
だから、戻ってこれて、良かった。
本当に、良かった。
「パスワードを入力してください」
電子的な音声の照会。
「ただいま“グランザール”」
「お帰りなさいませ、姫様っ」
いつものCPUグランザールの凛々しい顔に、癒される。
「いくみぃ、お帰りぃ」
こっちも、いつも通りのパパの声。
「ん、ただいまパパ」
機嫌は取っておく。ギルティ攻略のため、パパには頑張って貰わないとだもんね。
あたしが死んだら、パパも、多分死ぬ。だから、あたしは死ねない。
大丈夫よパパ。パパは絶対死なせない。
パパに、あたしの子供、パパにとっては孫になるわね。
きっと、見せてあげるね。
パパを、おじいちゃんに、してあげるね。
超高粒子バリアーに被われた、3キロ四方に渡る平面の闘技場。
わざわざこの試合のために、宇宙ステーション込みで建設したらしい。
コロニー同士の紛争解決の為なので、どのコロニーからも中立の立場を保つためなのだとか。だから、今後は重要な試合で使われることになる。
まだ新品の闘技場。あたしたちが、初めての試合らしい。こけら落としを兼ねているのね。
その闘技場の中央に、あたしは機体を進める。
あたしのお相手も、待つまでもなく登場する。
同じヘビー級同士。ビームセイバー、ビームシールドSの両手両腕持ち。
肩はファイヤーバードアタックシステム。なにそれ?流行ってるの?
故障覚悟のビーム系ソード2本に、ソード形状にもなるビームシールドSで、追い足はファイヤーバードアタックのブースターで逃がさないってわけか。
前にまともに闘いそこなった、“オート後の先”機能搭載のSweet Bombの、パイロット搭乗バージョンってわけね。
おっけー、相手にとって不足無し。
真正面から、叩き潰して差し上げるわ。
試合前に、お互いに名乗りあうのがルール。
「応援してくれたみんなのために、絶対に勝つ!」
へえ、応援されてるんだ、そうなんだ。良かったね。
でも、残念ね。相手は、ギルティじゃなく、あたしなんだよね。
一応、言われてるんだ。“TILT”として、闘っていいって。
別口で、あんたの首賞金、結構な金額が出るんだわ。
だから、ごめん。全力で叩き潰す。
大きく息を吸い。
マイクカフを上げ。
147勝1敗だけど。
いいのよ、それでも。
「あたしのSweet Bombは、絶対無敵なのよっ!」
(本当に、おしまいっ!)
エンディングシーンだけは、最初から決めていました。
書き出したのも、あのシーンが上手く書けたから。
だから、最後も同じように、です。