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Sweet Bomb  作者: 白河夜舟
fin.甘美爆弾っ!
71/75

63.顔が紅いぞ。まだまだ子供だな

 カットしづらい、です。

 長いわ。筆がノっちゃってますね。

 何回か見返しましたが、カットできるのがここしかないです。

 これで、お願いします。

「久しぶり、でもないか。元気、でもないみたいね」

 すこぉしの皮肉でジャブ(先制攻撃)を噛ましつつ、ギルティの様子を伺う。

 なによ、最上階の広い入院患者用の個室を占領するVIP待遇だなんて。

 まだ、お嬢様初心者のあたしには、ハードルが高いんですけど。こんな所に入院するような知り合いなんて知らないし、来たこともないんですけど。

 気圧(けお)されないように虚勢を張って、表情を上手く隠す。

 そう、あたしは女優(アクトレス)女優(アクトレス)なんだもんね。

 ギルティは、あたしたちが来たことにすでに気付いていて、立ち上がって出迎えてくれた。入院用の寝巻?入院着?は指定のもの(制服)らしい。着る物に関しては特別扱いはされないのね。

 立てるということは、それほど大したケガじゃないみたいね。

 服で隠されてはいるけど、左鎖骨骨折、右脇腹、多分第二、第三肋骨骨折は間違いない。打ち身や打撲は、さすがに分かんない。火傷はしてないみたいね。

「そういうお前は、顔色が戻ったみたいだな。AK(アーマーナイト)にはもう搭乗()れるようにはなったのか?」

 …コイツにだけは知られたくなかったわ、あたしの不具合(トラウマ)

 情報漏洩は…おまえかオーナー(父ちゃん)

 そっぽを向いて顔を合わせようとしなくても、分かるんだからね!

「いや、その、ギルティさんから(・・)相談をだね。わたしは、ドーラーのことはシロウトだからねぇ」

 誰にそんな相談してるのよ!

 他にいないの??

 よりによってコイツ?!

 あー、どおりで負けが成長とかなんとか言ってたわけだ。

 父ちゃん、もうブチ切れてもいい?

 ギルティじゃなく、あんたに!

「まーね。その節はドウモ」

 声が震えるのをかろうじて堪えて、礼だけは言っとく。病院から帰ったら、父ちゃん(オーナー)をどうとっちめてやろうか、メラメラ燃える感情を押し殺しながら。

 ま、落ち着いた環境でパパを呼び出して話し合う、っていうのは、冷静に考えればいい判断だと思う。

 仕掛け人だけに、対処も考えてある、とか得意そうに言われそうなので、敢えて振りたくはない話題ではあるわね。

「顔が紅いぞ。まだまだ子供だな」

 くっ、これでも頑張って表情隠してるんだけどな。

 やっぱドーリング用のメット持ってくるんだった。イヤ、街中であんなもん被ってたら変態か。

「オーナー、お前のお母さんと再婚したそうじゃないか。おめでとう」

 うわぁ。

 今度こそあたしはオーナーをギロっと睨みつける。

 ただでさえ手に負えない甘美爆弾(親の幸せ)抱えてるのに、どーして幸せだーと(愛の爆弾を)他人にばら撒いたりするかなこのポンスケ(父ちゃん)は!

 あたしの身にもなってミソ。変化に対応しきれてないんだからさぁ!

「同級生同士だったそうじゃないですか。一度はさわやかに諦めた恋を、何十年かぶりに実らせるとは、さすがですねオーナー」

 今度は、オーナーがあたしの顔を見る。

 いや、出所はあたしじゃないよ。ってか、ギルティに会いになんて、あたし誘われでもないと行かないもん。

 ってか、待って?

 あたしのこと、ギルティに色々バラしたの、オーナーじゃないの?

 そういえば、オーナー、あたしが睨んでもあんまり怯えてないわね。

 っていうか、自分の事も色々知られちゃってる?

 あれ?

 あたしもオーナーも、ギルティにそんな話してない、とか?

「ああ、アズラエル、あなたのお父さん、えっと、パパさんに伺ったんですよ。“掲示板”で」

 掲示板?パパに?

「ライブメールもテキストメールも使えませんが、“掲示板”は使えるのだそうです。いやぁ、対応ソフト探すのに苦労しました」

 あっけらかんと、ギルティは情報元(ソース)をバラしてくれた。

 コイツ、顔と(イケメンで)声はすごくいい(イケボイスな)のに、話の内容が伴ってないわ。

 何言ってんの?

「機材も、骨とう品を探してもらって、ようやく手に入れましたよ。回線は通常だと繋がらないので、ネット回線を変換して地球(テラ)に残されている有線回線(電線)に送信して、なんとかな…ったんだ」

 ギルティ、得意そうにオタクな話をしだして、途中で自分のキャラに合わないことに気づいたらしい。ちょっと顔が紅いぞ(お前もな)

「んと、パパとお話できるってこと?」

「ええ、まあ、話というにはラグが強すぎるがな」

 まだキャラ(性格)が乱れてるゾ。本人も、自分の感情(気持ち)を持て余しているみたいね。

 あんた、そんな一面あったんだ。

 一つ咳払いして、気を取り直して、ギルティは続きを話し始めた。

「アズラエル、お前と闘う(ドーリング)に当たって、色々研究し(調べ)たんだ。不正(チート)プログラムのこともな」

 ああ、なんかそんなこと言ってたわね。だからチートはパパじゃない、あたしなんだってば。

「その過程で、旧時代の(ダイヤルアップの)通信機器(モデム)が、お前の不正(チート)プログラムへのアクセス(突破口)と睨んだのだ。どうだ、効いただろう?」

 うぬぅ、確かに効いた。悔しいけど。認めたくないけど。

 あたしの渋い顔に満足したらしい。ギルティは話を続ける。

「あれで、完全にSweet Bombは機能停止(スタン)させたと確信したのだが…なぜ動かせた?」

 あー、あれね。

「パパごと消したよ」

 今度は、ギルティが渋い顔をした。お相子(あいこ)だよ。

「あれって、消せるものなのか?」

「うん。結構ヤバかったけどね」

 渋い顔が、苦い顔に変わっていく。

 あたしも、結構苦い顔してると、思う。あれは、かなりヤバかったからね。

「しかも、あれだけダメージを与えたのに、歩かせるなんて、ありえないだろう」

「あー、こっちのモニターもセンサーもほぼ死んでたから、その辺は分かんない」

分析(アナライズ)動画観てないのか?」

「途中までしか」

 だって、パパが現れちゃったんで、それどころじゃなくなったし。

 そーいえば、あれ、途中までしか観てないね。忘れてたわ。

「…まあ、立ち話もなんだから、座ってくれ」

 入院患者用のベットの奥にある簡単な応接間に、ギルティはあごを向けて誘ってきた。いや、失礼とかじゃないよ。両手とも、あんまり動かせないみたいだし。

 簡易なソファーにしては、ふかふか。でもちゃんと弾力もある。

 エアタクシーのソファーほどじゃないけど、おもてなしには十分。

 なによこれ。随分と気の利いたぜいたく品じゃないのさ。

「すまないが、セッティングは…」

「いえギルティさん、わたしがやりますよ」

 方向違いな感想を向けている間に、大人二人が分析(アナライズ)動画用のモニター操作を割り振っている。指示はギルティ、動かすのは父ちゃんね。

 あたし?そんなことできるわけないでしょ?やらないし。

 簡易コンソールでメニュー選択。

 うわぁ、ずいぶん撮りタメしてるわね。しかも几帳面。

 全部観てるの?

「入院中は暇だから、観返す時間はある。お前はほとんど観返したりしてなかったな」

「昔の話?まーそうかも。今は一応観てるよ」

 ミドルスクール時代、TILTでドーリングしてた頃のあたしは、今より子供で、天才で、世の中がつまらなかったからね。そういう“終わった”もんは観なかったわ。

 自分の事をきちんと観れるようになったのは、オーナーんとこに雇われてから、かしらん。まあ、負けじゃないけど、挫折って必要な事なのかもね。

「これですね?」

 ようやくオーナーがあたしたちの試合画像を見つけて、再生を始めた。

「…この辺は観てるのよ。この大鎌のキャッチ、どーやったの?」

「“卑怯な手”に事前にプログラムしておいた。発動しないと動かないがな」

 なーる。ってか、“卑怯な手”って、そんなこと出来るんだ、へえー

「いかにも卑怯だろ?その辺は大体出来る。この大会を通して大鎌(デスサイズ)の中に仕込んでおくのも、“卑怯な手”だからこそ、出来る」

 すべては、あたしに勝つため。そんな前から事前準備して(仕込んでい)たのね。

 あきれるほどの執念だわね。

 で、ギルティが下がって、あたしが呼び掛けて、キラーボイス喰らって…

 まさか、パパがここにも現れたりしないよね?

 この動画、オフラインだよね大丈夫だよね?

「ギルティさん、ようやく、直接お会いできました。いくみぃがお世話に…」

 ギルティがギョっとして画面に見入っている。

 やっぱ、出るんだ。

 きちんと背広姿のパパだ。

「ちょっとパパ、大事な話の途中なの。引っ込んでて」

「えー、またパパをのけものにするのかい?」

「画面の隅にいていいから、観終わるまで話しかけないで」

「はーい」

 意外に素直に、右下隅に引っ込むパパ。聞き分けが良くてヨロシイ。

 オーナーが気を聞かせたのか、一時停止してくれた。あたしに対してじゃなく、ギルティにね。

「これって…」

「そ。あたしが観ているモニターには、パパは現れることが出来るらしいの。ネットに繋がっていないとダメだけどね」

「前にギルティさんが強制回線接続(ハッキング)してましたよね。あれを真似たら、なんか出来るようになりまして」

 照れたように笑うパパ。引っ込んでてって言ったのに、もうアップになり始めてる。

「…うわぁ…」

 ギルティ、かなり動揺している。何をどう言ったらいいのか、分からなくなってるみたい。

 そーいえば、あたしがオーナーに雇われて、機体の方のグランザールに初めて搭乗()り込んだ時に、泣きながら現れたパパに動揺(デバフ)させられたなぁ。

 ホント、試合直前に出てくるのって、やめて欲しいよね。デビュー戦だったのにさぁ。ま、勝ったけどさぁ。

「ごめん、うちのパパ。元々、こういう人だから」

 一応、謝っておく。これでも大切な身内なのよ。いい所で邪魔ばかりするけどね。

「いや、その、まあ…」

 そんなに動揺しなくてもいいじゃない?

「確かに、これは、動画の続きどころじゃないな」

「いいのよ続けて。待た(ステイさ)せとけばいいんだから」

「犬じゃないんだから…」

「似たようなもんよ?」

 ツボに入ったらしく、腹を抱えてうずくまるギルティ。

 ついでに肋骨の辺りにクリティカル(笑いのツボ)が入ったようで、結構痛そう。

 いや、笑わせるつもりじゃなかったんだけど。

 父ちゃんから、病院で、入院患者相手に暴れるなって言われてるし。

「パパ、これオフライン動画じゃないの?」

「いや、大会本部からのクラウド配信だよ?」

 あ、そーなの。あたしの勘違いか。オーナーんとこでもオンライン管理だったけど、病院ではそんな回線繋ぐほど手厚い待遇はされないと思ってた。

 忘れてた。ここVIP待遇の入院室だった。

 まだ笑っては痛がっているギルティを置いといて、あたしは動画の続きを促す。


 ギルティ、あんた、実はそんな性格だったんだ…

 異性への興味は、意外にそういう所からなモンなんですよ、と少女漫画で何となく勉強しました。

 あ、もちろん、リアルでそんなもん通用しません。あくまでフィクション。フィクションですよー

 だからいいじゃん小説って。書く方も読むほうも、ある意味やりたい放題なんだからさー

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