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Sweet Bomb  作者: 白河夜舟
1.絶対無敵っ!
7/75

7.ツベルクリンの予防接種跡なの。見る?

 編集に、割と時間がかかりますね。気が付いたら、もうこんな時間か…

 と、砲身の揺れが止まった。

「あはん、せっかちさん」

 どうやら狙いをあえて絞らずに“範囲”で撃つつもりらしい。

 そりゃそうよね、こっちは極限まで薄くしている装甲。一発でも当たったらオシマイだもの。

 相手パイロット、なかなかやるわね。

 …でも。

 それなら最初からそうすべきよ。どうせ、全弾命中させて大ダメージを一気に与えて、あたしを機体ごと誘爆させるつもりだったんでしょうけど。

 まあ、あたしはそういう傲慢な態度、結構好きよ。

「でも…女にはモテナイわね、おぼっちゃま」

 ささやかな捨てゼリフと一緒に、右手に残った的を相手に投げつけるように放出する。

 当たるわけでも届くわけでもないけど、膨らみながら近づいていく的に、あたしの機体が一時的に隠れる。

「…今!」

 的を貫くようにして放たれたエネルギー弾。

 狙いは正確に的の四方を貫いていった。

 あたしが的の影になるどこにいようとも、絶対に命中する。

 でも、わざとダイビングするみたいに転倒したあたしの頭をかすめていくに終ったけど。

「イテテテっ、いくみぃ、乱暴すぎるよぉ!」

「いいからいくわよ!」

 当然、パパの愚痴なんか聞いてるヒマなし。

 着弾の衝撃でモニターが真っ白に光ってる事なんて構ってられない。

 あたしのカンと本能で、右15度に機体を修正させる。

 的を使い切って少しは軽くなったグランザール様の両手両足をフルに使って、機体を思いっきり前方に跳ね上げさせた。

 ライト級でしかもギリギリまで絞った武装重量だからこそ、そしてあたしの超人的なパイロット技術があればこそできる大技。

 んでも当然、一気に下方に叩きつけられるみたいな、強烈なGを貰っちゃう。

 あたしの脳味噌から、血液が音を立てて一気に引いていくのがよく判る。

 そのままブラックアウトしそうになるのを意志の力でムリヤリ押さえこんで、ドライブギアを攻撃モードに切り換える。

「い、いくみぃ!」

「ガタガタ言わないっ、モニターまだ直んないのっ?!」

「い、いけるよお!」

 パパの叫びと共に、画面が一気に快復。さすが、メカニックレベルで右に並ぶもの無しと自称する(げん)さんだけの事はあるわね。

 戻った画面は、ドンピシャで相手のばかでかい機体の真上を映し出してくれた。

 そのまま、あたしの機体は相手の頭目掛けて落ちる、落ちていく。

 今度は頭に血が登り過ぎて、目の前が真っ赤に染まって見えて来る。

 ちょっと、ラリッてきた感じ。

「どう、あたしの腕前は?」

「いくみぃ!んなこと言ってる場合じゃないっ!」

 自動防御が働いているらしく、相手の左腕のビームセイバーシールドLが頭部を被って保護しようとしている。

 あたしの回りをぐるぐる回っていた、相手のフィンファンネルも、大急ぎで間に割り込もうと迫ってきている。

 アハ、必死ネェ。

 でも、必死になるのが、ちょっと遅すぎるわ。

「無駄よ」

 あたしは直感でドライブギアを右に倒しこみ、クラッチを左足に切り換えながらパワーペダルをスライドさせる。

 グランザール様の左足が、相手のセイバーシールドを蹴飛ばして揺らす。

 ミッションディスクMD-L4の楯排除率40パーセントは、やっぱり伊達じゃない。実体ビームでフィールド構成されてる軽量な楯の弱点をきっちりついた攻撃プログラムで、ものの見事に楯が撥ね上げられた。

「お顔みっけ!」

 野ざらしの頭部目掛け、必殺のドラゴンクローをぶっ放した。

 グランザール様の左肩がガバリと開き、鋼鉄製ワイヤーに繋がれた4本の円錐状の「爪」が射出されて相手の機体の頭、腕、胴体にそれぞれ絡みつく。

 フィンファンネルが一機、頭部を護ろうと割り込んできたけど、貫通させて一緒に捕まえてしまう。

 大きな機体をぐるぐる巻きにして、最後に装甲に突き刺さり、外れないようにガッチリ捉えてくれた。

 あたしは、頭部に巻きついたワイヤーをたぐってヤツの背中にへばりつく。

 このワイヤーが切れない限り、相手がいくら逃げようとしても無駄なのよね。

 だから。

「いくみぃ、ワイヤーが!」

「そりゃそうよ」

 ヤツめ、楯にしていたセイバーシールドをビーム剣の形に変えて、早速一本目を切りはじめた。

 相手だってバカじゃない。豊富な資金を使った正統派の機体だもの、こういう場合を想定して、斬属性の武装位使ってくるわよ。

「慌てなくてもいいわ。残り3本のワイヤーが切れない限り、背中にいるあたしは攻撃できないのよ」

 ほんと、パパったら臆病なんだから。

 慌てず騒がず、相手の頭部に、腕に仕込んだフラッシャーを押しつけてあげる。

 「ツベルクリンの予防接種跡なの。見る?」

 マイクに向かって旧時代の冗談をカマしながら、スイッチを押した。

 ピカッ!

 瞬光弾の着弾なんかとは比べ物にならない位の爆発的な光で、ダイレクトに相手のカメラを焼き殺してあげる。

 宇宙空間における非常遭難信号の役割を果たすフラッシャーの光は、安いからといって侮っちゃ、だ・め・よ。

 まして、誰が使ってると思ってるのよ。

 ツベルクリンの予防接種跡って、今の人は分からないですよね?

 一応の補足ですが、フラッシャーは腕装備です。

 もちろん作品世界でも、なんですかそれ?になりそうなもんですが、郁美の隠れた趣味である、旧時代のドラマや資料に出てきている、とでも思ってください。


 

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