58.えーやだなーポンスケに見守られながら眠るのって
終了エピソード。物語は次章で終了です。
筆が進まなくて、詰まって、書く気力を失って未完のままだった本作品。
作者の書きたいを、今になって目いっぱい突っ込みました。
当時は思いつきませんでしたが、そっか、こういう話の流れだったのか、と自分で書いていて気が付いた次第です。(何言ってんだ?)
「…で、負けは、負けなわけね」
「いや、生きて帰ってきただけで、充分だよ郁美君」
ま、あたしも、そう思う。
自分でも、よく生きて帰って来たとは、思う。
ま、試合中はそんなこと微塵も思ってなかったけど、振り返って考えたら、死んでもおかしくなかったわ。
あー、生きてるって素晴らしいわ。
でも、負けは負けなわけで。
ちっくしょー、勝ちたかったわ…
なんでも、脱出装置が動いた時点で、Sweet Bombの胴体完全破壊が確定するので、その時点で負けらしい。
ま、そうよね。それは、もう、しょうがない。
あたしも、もしかして何とかなるかもと思って機体の上半身に薙ぎ払いプログラム入れたし。
ギルティも、決着ついてんのにホークマスター飛ばしてきたし。いや、あれが無ければ、普通にコアファイターで脱出、試合終了でしょうに。
ホント、しつこい。
ま、あたしも同類か。
「で、ギルティの機体、death cowardは、完全破壊、ってわけね?」
オーナーが重々しく頷く。
ざまあみろ、とは、思わない、事もない。
んじゃ、機体の形が残っているあたしの勝ちでいいじゃないのさ。
でも。
ルール的には、負けは負け。
はぁー、このあたしが、まさか負けるとはねー
やっぱり、どんな時でも“絶対無敵”は捨ててはだめだと思うの。あれが無ければ、勝ってたんじゃないの?
ま、それはそれで別の卑怯な手を使ってくるかー
「一応、準優勝なんでしょ?借金とか、契約関係はどうなの?」
「うむ。闇シンジケートとしては、一定の評価を頂いておるよ。借金は半分に減らしてもらえた」
そ。ただ働きじゃないなら、ま、いっか。
負けだから報酬無しとか、言い出しかねないからな闇組織。
ま、そうなったらなったで、正面から潰しに行けば済む話か。
借金返さないのはこっちが悪いけど、そっちがちゃんと報酬ださないのは、また別の話だしね。
なんて、物騒な事考えてると、オーナーがあたしの顔をじっと見る。泣きそうな顔で。
ちょっとやめてよ。あんたとアイコンタクトなんて、まっぴらごめんなのよ?
「本当に、よく生きて帰ってきて来てくれた。君のお母さんに申し訳ないことをするところだった」
いや別に、そこまでかしこまらなくても?
あたし、割と好きでやってるし。
試合での生き死には、オーナーの責任にはならないでしょ?
「郁美、あんた…」
ん?
母ちゃん?
なんでいるの?
「お母さん、彼女はまだ疲れています。もう少し寝かせてあげましょう」
いやいや、意識戻ってるって。
そういえば、ここどこ?自宅?病院?
周囲が暗くて、よくわかんない。
起き上がろうとしたら、軽く小突かれたみたいに頭がクラッとした。
一体、誰が誰に向かって小突くだなんて…
いや、ただ単に、あたしの身体が起きるのを拒否しているだけだ。
血が足りない。頭まで行き巡らない。
…あたし、なにがどーしてどーなったの?
「郁美君、君があんまりうなされてたものだから、心配になってだね…」
うなされて、たんだ。
「様子を見に来たら、勝ち負けを聞いてくるから、答えただけだよ」
へえ、そうなんだ。
「さ、少しは心配事が減っただろう。もう少しお休み」
えーやだなーポンスケに見守られながら眠るのって。
パパなら、まあ許してあげるけどさ…
そのまま、あたしは、こてっと、意識を失った。
(おしまいっ!)
はい、母ちゃんにバレましたー
いつまでもこんなこと隠し通せるわけないよね。
今までが上手いことやりすぎだったのと、母ちゃんがおおらか過ぎただけですから。
だってパパの仕送りが止まってからは(本人の肉体は爆散しました)、母ちゃんへのお小遣いと生活費全般、全部郁美が稼いでくるんですよ?高校生のアルバイトで、ですよ?
まあ、母ちゃんは郁美の才能を見抜いていましたので、自由奔放にさせておりますので、そういうもんだと思っているのでしょう。