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Sweet Bomb  作者: 白河夜舟
7.卑怯上等っ!
59/75

51.分かってる!

 いよいよ、決勝戦。たいへんお待たせ致しました。ここまで、長かったなぁ…

 もしかして、ここからが長いの?

 いやいや、飽きさせないように読ませるのが、作者の技量でしょ?

 いえいえ、読むか読まないか、飽きるか夢中になるかは、読者が決めることですからね。

 試合前の宣誓の儀式。

「今日こそは、貴様を倒す!」

「あたしのグラン…じゃなかった、んと、あたしは絶対無敵なのよっ!」

 アブナイアブナイ、機体が変わってたんだった。

 なんか、あたし、油断してるなー

 大丈夫だよね。罠とか仕掛けは、出来る限り徹底的に調べつくしたよね?

 うん、油断も隙も無い。

 よし、とっととギルティを片付けちゃいましょうか。

 機体の反応速度(レスポンス)は、さすがにdeath(ギルティの) coward(機体)の方が上かな?

 でも、Sweet(あたしの) Bomb(機体)には、“後の先(見てから間に合う)”とでもいうべき、恐ろしい剣技(カウンター)が備わっている。

 そして、あたし自身の反応速度(レスポンス)に、CPUグランザールは過不足なくついてきてくれる。

 パパが邪魔(余計な事)さえしなければ、何の問題もない。

「(あっしは何をすればいいんだい?)」

「(そうねえ…)」

 オフレコマイクで尋ねてくる、相変わらず無邪気なパパにもお仕事してもらわないとね。

 ディスクのインストール…グランザール、嫌がらないかしら?CPU(素直)だし、大丈夫かな?

「(そうねぇ、ヘッドキラーあたりでいいかしら?)」

「(りょーかい)」

 あら、パパ元気ね。お仕事貰ってうれしいのね。

 で、あたしは、グレートソードを中段に構えて、ギルティの出方を伺う。

 デスサイズで斬ってくるなら、それを逆狙いで武器破壊、ね。

 あたしの両腕のビームシールドLは、あんたの狙い通り、あんまり役には立ちそうもないけど。

 大剣(グレートソード)に付属されたオマケ効果、防御率10%を引き当てて、あんたの大鎌(デスサイズ)を弾き飛ばしたところを、バッサリ武器破壊ってイメージね。

 ひるんでくれたら、そのままヘッドキラー効果であんた(機体)の頭部を頂いちゃいましょーか。

 と、ギルティ、少し下がりながら、デスサイズを縦に、あたしに引っ掛けるように振り降ろしてきた。

 向こうの武器の方が、ちょっとリーチがあるのよね。自分が斬られない位置から攻撃したいわけね。

 ごめんね、それ、悪手だわ。

 ドライブギアを前に倒すと同時に、右足のペダルをグッと踏み込む。

 左脚のパワーペダルをスライドさせながら、左右の攻撃トリガーを同時にオン。

「姫様、行けます!」

「いっけー!」

 さすがグランザール。あたしの意図を全て汲んでくれる。

 剣技、後の先発動!

 瞬足で間合いを詰めつつ、振り下ろされた大鎌の下から、大剣を上へと振り上げる!

 あたしを狙う大鎌(デスサイズ)の攻撃は、踏み込むことで回避。多少当たるかもなのは、許す。

 大剣(グレートソード)を、大鎌の柄の中心部分狙いで振り上げた!

「武装頂きっ!」

 真っ二つに両断されるデスサイズ。

 そのままギルティの頭部に大剣を振り降ろして…

「ん?」

 ギルティの両手に、短くなった柄の部分が残っている。

 (シックル)は、跳ね飛ばしたので空中をさまよっている。

 けど。

 その、持っている柄の部分に、何か書いてある。

 今までは何も書かれていなかったのに。

『卑怯な手』…

 そう、卑怯な手。れっきとした正式武装。

 ただし禁止武装指定されていて、そのあまりの凶悪さのために、武装の内部に強制停止装置の装備が義務づけられている、あの「卑怯な手」。

 その起動装置も、れっきとした武装として用意されていて、「禁呪符」っていうのだけど、手に装備する100Crの安物で、コイツが放つ特殊電波を作動させれば、攻撃した瞬間に禁止武装に自爆装置が働くわけ。

 こういうルールがあるから、禁止武装なんて使う人はいない。使うと分かってさえいれば、対策は簡単だから。

 でも、装備していないと、意味なんてまるで無い。

 で、ま、当然、んなもん持ってない。

 だって、だって、だってぇ、武装の交換は認められていないんでしょ?

 ギルティ、1回戦から、そんなもの持ってなかったじゃないのさぁ?!

 え?うそでしょ?ありえないわ?!

「いくみぃ、あ、あれって…」

 パパの悲鳴に近い声。まだ現実を把握できていないけど、身体はもうわかっている、ような声。

 あたしも、そんな現実は見たくない。ありえないありえないありえないーとぶつぶつ唱えて、現実逃避(尻尾を巻いて逃げ出)したい。

 ちょっと待って一体どうやって持ち込んだのよ、絶対ありえないでしょ??

「姫様っ!」

「分かってる!」

 多分、すごく、とても分かってる。

 頭はためらっていても、身体はためらってなんかない。

 自分のものではないように、自動であたしの手足がドライブギアやフットペダルを操作して、ギルティの機体の頭部目がけて大剣を振り下ろした。

 分かってる。

 ギルティがそうなる事を全部計算した上で、デスサイズの柄の部分をあたしに斬らせて、武装を“分離”させたことも。

 だから、あたしの馬鹿でかいグレートソードが振り下ろされるその瞬間、観客の目には“ただの棒っきれ”にしか見えない、元はデスサイズの柄で受け止められているように“見える”ことも。

 当然、Sweet Bombが完全に硬直したことも。

 だけど、空中に跳ね上げられたデスサイズの鎌の部分がさー、回転しながら落ちてきて、ギルティのもう片方の伸ばした手にスポッと収まるのは、さすがにやりすぎじゃないの?!

 無茶苦茶、カッコイイじゃないのさ。

 …受け損なって、腕ごと斬れてしまえばよかったのにぃ!


 罠なんだから、何も無いわけなんてない。

 罠なんだから、そう簡単にはバレないように、何重にも工夫して隠しますよ。

 罠だと知ってて、分かってて突っ込んできたんでしょ?

 まあ、そうなるように、巧みに誘導したけどね。

 いやいや、相手は野獣、というより、化け物。

 勝ったと思わず、油断せずに仕留めましょう。

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