43.開始一発目で頭部全損試合終了狙い!
一応、闘うふりだけでもしないとマズイ。
出来ることと出来ないことを分けて。
よく観察して、対応策を考える。
だいぶ頭が冷えて、冷静さを取り戻してきたようです。
あたしのグランザールと、Sweet Bombが向かい合う。
「あたしのグランザール様は、絶対無敵なのよっ!」
「…」
おーい、お決まりの宣誓なんだから、ちゃんとやってよね。
そんなあたしの気持ちなんか無視して、試合開始のゴングが鳴らされた。
始まる。
あたしは、とりあえず、出来ることからちゃんとやる。
本体操作とは別系統のフィンファンネルをディフェンシブモード、本体護衛にする指示を思い浮かべる。
右肩のファンネルたちを、右上から左下へ弧を描くように周回させる。
左肩のファンネルたちは、逆回りに周回ね。
左手のキーボードを忙しく叩きながら、ドライブギアの右攻撃トリガーを軽く下へ落とし、すこぉし右にひねったあと、右ペダルをタイミングよく2回、軽く蹴る。
メインモニターをちょっとだけ左に傾ける。これはあたしのヘルメットを傾けることで操作できる。
キーボードで力加減と距離を指定。
「いけっ!」
マイクカフを上げて、観客に聞こえるように声を掛ける。
あたしの右拳から、フィールドパンチの右正拳が放たれる、ような動作。
でも機体の顔は左上をチラ見。
マイクが攻撃タイミングを伝えている。
ぜぇんぶフェイント。
機体の周囲をぐるぐる回るフィンファンネルのうち、左周回分の一機を、地面付近から死角になるように、右正拳の軌道とは逆方向から突っ込ませる!
向かい合った初期動作から、構えもせず、グレートソードを地面に垂らしたままのSweet Bomb。
その顔目がけてフィンファンネルを特攻させた。
もしかして、なめてるのかな?
確かにあたし、ヨタヨタと登場してるの、はっきり見られてるしね。
いいわよその油断。
開始一発目で頭部全損試合終了狙いさせてもらうわっ!
急に、ゾクッと背骨が震えた。
左手のキーボードから手を放して、ドライブギアを両手で思い切り引き上げる。
両足のパワーペダルも全開で踏みつける。
あたしのグランザールが、後方に勢いよく宙返りを放つ。
起き直って見つめたメインモニターの先で、Sweet Bomb目がけて放ったフィンファンネルが一刀両断されて爆散しているのが見えた。
…剣先が、見えない。
あのバカでかいグレートソードを、なんちゅう速さで振り回しているのよっ!
先に、死角から、フェイント織り交ぜての必殺攻撃を。
後から、気づいて、だまされずに、あっさり叩き斬るとか。
どこの国の剣聖が降臨してんのよっ!
もしかしたら、イケルかも?
そんな期待を打ち砕く、とんでもないチートを装備しているSweet Bomb。
やっぱ、こうじゃないとねぇ。