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Sweet Bomb  作者: 白河夜舟
6.剣聖降臨っ!
48/75

40.めちゃくちゃめんどくさいんだけどなー

 全身、冷や汗びっしょり。呼吸も早く、心臓は今にも飛び出しそう。

 こういう局面こそ、パイロットの真価が問われるのです。

 能力ももちろん、そして意志の強さが、問われるのです。

 固まっ(凍り付い)てたあたしの頭が、少し動き出してきた。

 ちょっと待って。

 “Sweet Bomb”のCPU“グランザール”は、「忠誠の試練」を乗り越えられないパイロットの搭乗を許さないはずよ。

 じゃあ、あたし以外に試練を突破できたパイロットがいるということ?

 それとも、まさかだけど、“グランザール”にパパみたいな自我が芽生えたとか?

 あとは、外部操作(ハッキング)で無理やり動かされているとか?

 もしかして、中身は全く別の偽物(デコイ)だとか?

 冷静に考えろ、あたし。

 こういうコソコソした隠し事は、いつだって力で突破してきた。

 あたしは“絶対無敵”、こんな陰謀に負けたりしない。

 とりあえず、あたしが今搭乗()っている機体の方のグランザール(ややこしいな、もう)が動いてくれないとお話(勝負)にならない。

 当たり前だけど、いくらドライブギアをガシャガシャやっ(振り回し)ても、ペダルを親の仇とばかりに(ちからいっぱい)蹴っ飛ばしても、肝心のCPU(パパ)が操作を受け付けてくれないと機体は動かない。

 んで、パパは絶賛フリーズ(硬直)中。

 一緒にあたしもフリーズ(おやすみ)したいところだけど、そうもいか(冗談じゃ)ないの。

 もー、もー、もぉー、しゃあないなー

 めちゃくちゃめんどくさいんだけどなー

 左手をコクピットシートの後ろに廻して、背中側からアーム型キーボードを引っ張り出す。

 オートコントロールを解除。マニュアルシステム起動。

 パパに与えているグランザールの権限を解除して、この使いにくいキーボードの上に左手を添わせる。

 右手でドライブギアを操作しながら、左手のキーボードで微調整して、グランザールを歩かせる。

 パパ抜きで操作権限を行使してみるけど。

 あらら、滑らかさのかけらもないわ。これじゃ死にに行くようなものね。

「パパ、起きてっ!郁美(いくみ)、大ピンチなのっ!」

 マズイマズイマズイ。いくら武装とエンジンが充実していたところで、肝心の操作系が話にならないんじゃ、棄権するしかないじゃない。

 会場では、準決勝第一試合のくじ引きが始まっている。

 せめて第二試合にして。今だけは、困るの!

「第一試合は、“グランザール”VS“Sweet Bomb”です!」

 割れんような大歓声。

 やっぱりというか、当然というか、最初の試合に当たっちゃったわ。

 なによぉ、TⅠLTとヤラセてくれるんじゃないのぉ?!

 なんて、はなから期待はしてない。

 ちょっとは思ってた。元々あたしが搭乗()ってたSweet Bombは、あの時と同じTⅠLTの格納庫(ハンガー)に残されたままなんだから、仮に搭乗()れさえすれば、使ってくるかもな、とは。

 でも。でもでも。

 CPUの方のグランザールのことは、信じてたのに。

 あたし以外のパイロットは絶対に搭乗()せないと、信じてたのに。

 この、裏切り者めっ!

 …なんて。

 先に裏切ったのは、あたしか。

 だって、パパ殺しの機体に搭乗()り続けるなんて、あの時のあたしには無理だったもの。

 思い出したくもない。

 でも、忘れることができない。

 だから、グランザールを裏切って、降りたのはあたしの方。

 裏切り者は、あたしの方。

 だから、いつかグランザールが、裏切り者のあたしのことをTⅠLT(強制停止)しにくるんだろうな、と思ってないこともなかった。

 なんて、まさかCPUが単独でそんな事できるわけないよねぇ。パパじゃあるまいしに。

(いく)ちゃん、棄権しよう」

 (げん)さんの固い声で我に返る。

「無理だ。命あっての物種だ。あきらめよう」

 それは無理。試合前申告、最終調整の後は出場確定だから。這ってでもスタジアムには行かなくちゃならない。

 その後、機体を捨てて脱出する分には、試合は成立しているんだから構わない。

 ただ、あんまり早くにそれをやっちゃうと、整備不良、戦意喪失が問われて、メカニックやパイロットのレベル(評判)が大きく下がってしまう。大会本部としても、八百長を疑われるしね。

「大丈夫、じゃないけど、なんとかするわ。動くには動くし。何かの拍子にパパが復帰するかもしれないし」

 それに。

 元々あたしが搭乗()ってたSweet Bombの今の姿を“最後に” 見ておきたいわ。

 負け、覚悟。でも、闘わなければならない。

 負け方とか、郁美は必死で考えてます。

 でも、もしかしたら、急に状況が良くなるかも、とかも考えてます。

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