35.ワシ、郁ちゃんの事、まだまだ分かっとらんかったわ
うわーっと書いていたので、誤字脱字が出るわ出るわ。
こうやってチマチマと編集して推敲して体裁を整えるのって、結構大変ですね。
書く時はうわーっ、なんですけどね。
みーよに礼を言って、別れたその足で、学校の理事長室に上がり込む。
あたしの正体を何となく知ってるくせに、深入りは絶対にしてこない、みーよの距離感がとても好きよ。
もう少し買い物とか遊びに付き合ってあげたいんだけど、ごめん、スケジュール的にあんまり余裕がない。
みーよ、あんたのパパの借金、あたしが何とかしてあげなきゃなんないからね。
そして、あたしのパパの身体、あたしが何とかしてあげなきゃなんないからね。
「源さん、整備状況は?」
「機体に負荷を掛けすぎだよ。あれは、ちょっとびっくりしたわ」
「そのへんは、源さんの腕でなんとかしてよ。無駄な力は一切機体には掛けてないつもりよ?」
「わかってる、つもりだったけどね。いやあ、ワシ、郁ちゃんの事、まだまだ分かっとらんかったわ」
ちょっと、ほんのちょっとだけ悔しそうな源さん。
自分の身体のように滑らかにしなやかにグランザール様を操るあたしに合わせて機体をセッティングしてくれる源さんだけど、そうね、全身を滑らかに回して力場を一点に伝える螺鈿の技は、初めて見せたかもね。
別に敵を欺くには味方から、なんて言うつもりもなくて、今までは単に使うほどの相手とか状況にならなかっただけなんだけどね。
フィンファンネルの力場と、あたしの螺鈿の技でグランザールが作り出すフィールドバリアーの力場。
まあ、お相手はもちろんだけど、あたしの機体も無事では済まない、かもしれないわねぇ。
相手の爆発に巻き込まれて、ではなく(そんなヘマはしないわ)、機体を瞬間的に過負荷状態にしてるからね。
いやでも、自分の身体で技を試してるときは、別に何でもないのよ?
ま、連発はできないんだけど、さ。(実はすごく疲れるんだよね)
なので、あとは整備士の源さんにお任せなんだよね。
メガドーラー・オブ・メガドーラーを決めるこの公式大会は、連戦形式。
弾薬とエネルギーは試合ごとに補給されるけど、武装や手足を失うと、修理できない。ただし形が残っていれば、修復はできる。
あたしの無茶な操作で蓄積されたグランザール様の機体ダメージは、公式には記録されない。別に攻撃されたわけじゃないからね。
当然、形はそのまま、というか無傷なので、パイロット的には普通に修理して欲しかったりする。
んでも、普通の整備士だと、ダメかもしんない。結構、無茶してるのは自覚してる。源さんを信頼してるから、100%直してくれると信じてるからなのよ?
ね?できるわよね?
と、笑顔を向けてみる。
「やるだけのことはやった。次の試合までもう少し時間があるから、とりあえず搭乗ってみてくれ。細かいところは微調整する」
「りょーかい」
さすが源さん、頼りになるぅ!
ついでの話だけど。
フィンファンネルは肩装備で、左右それぞれ8機ずつ。単独で失った時は、修復扱いにして欲しいけど、ダメなんだって。
普通の盾を削られても、修復は可能。じゃあ、フィンファンネルも“盾”扱いにして欲しいものなんだけどね。
なので、これまでのドーリングでは、フィンファンネルをあんまり攻撃にも防御にも使っていない。故障は直せるけど、撃破されると戻せないのよね。
必然、手足さえ残れば直せる、いえ、直してくれる機体に過負荷を掛けてるんだよね。
ま、今までも機体をさんざんこき使ってた、そのままのスタイルだけどねぇ。
ついでに武装はいくら壊れても、大会から憐みの2000crは支給されるから、その範囲内では使い放題、直し放題、交換し放題だった経験が生きてるんだけどねぇ。
それだけ、隣のコロニーと小惑星の採掘権をめぐる試合の代表者を決めるこの大会は、コロニー側としても金と手間を掛ける価値があるわけなんだろうけどさ。
源さんがいるからこそ、無茶ができる。
郁美がいるからこそ、整備にやりがいが生まれる。
お互い、win-winの関係性です。