32.あたし相手じゃなきゃ、いいところまで行けたのかもね
お相手、勝てないんだろうな、とは思いつつ。
いい記念にはなるよね、とも思っています。
ついでに、勝負に絶対はない、とも思ったりしています。
お楽しみの前に、2回戦。
遠距離からチマチマ撃ってくるCPU頼みの超初心者を、さっさと片づけなきゃね。
まだ、手の内を見せる相手じゃないとは思うけど、試合を長引かせると、例のファイヤーバードアタックで削られて判定負けはさすがに困る。
やっこさん、どうせ最初は逃げに徹するんだろうから、やみくもに追っかけ回すのも芸がない。
どっしよっかな~
とか思いつつ、スタジアム用のマイクカフをオンにする。
「あたしのグランザール様は、絶対無敵なのよっ!」
「よろしくお願いいたします」
なによぉ、観客へのマイクパフォーマンスは、盛り上げが大事なのよっ!
闘い方といい、地味さといい、ホント、イラついちゃうわね。
「(パパ、ミッションディスク、MD-D3ディスクね)」
「(わかってるよぉ)」
とりあえずパパにお仕事与えといて、余計なことはさせないよーにっと。
フレームは元々の軽量級だけど、武装と機動ユニットはあたしが以前使ってた“Sweet Bomb”のを使いまわして良いだなんて、ね。
おかげでフレームに載る限界までエンジン出力を上げられたわ。
資金って最高!
両足のシュトルムユニットと軽量級のおかげで、それなりに速度は出る。
あとは追い方次第で、ちゃんと勝負にできる。
お相手は、例によってスナイパーライフルを単発で撃ちつつ、ホーミングレーザーで上から横からランダム気味に牽制してくる。
なかなか、よく考えてるんじゃない?
でも、ホーミングレーザーって、なんか笑えるのよね。
だって、文字通り、曲がるレーザーなのよ?
仕組みなんか知らない。とにかく、曲線を描くレーザーなのよ。
ま、ホーミングとは言ってるけど、実際は単に標的の行動パターンを読んで射撃するだけの虚仮脅し。大体、光速に近い速さでミサイルみたいに誘導なんかされたら、あたしじゃなくてもかわせるヤツなんていない。
とにかく、弾道が曲線を描くから避けにくいというのが売り文句なんだけど。
あたしに言わせれば、曲線だからこそ逆に避けやすいんだけどね。
まあ、当たらないんだろうな、と予想しているのは、向こうも同じこと。
お相手の一番の売り文句はブースターを通常の機動で使えるという事。両手を使っちゃうウィールユニットなしで、ジェットローラーとファイヤーバードアタックの補助推進装置を組み合わせて、機動力は実に17MVというのは、まさに化け物じみているわね。ちなみにあたしの今のエンジンと装備でのグランザールで、ようやく7MVなんだけど、さ。(ちなみに、前の貧弱なエンジンとノーマル装備の時は4MVだったのよ)
両足と両肩に推進力大幅アップの装備をつけているから、遠距離でチマチマ撃って時間稼ぎ。しかもある程度の命中力が期待できて、しかも総弾数が確保できるホーミングレーザーと、ビームスナイパーライフル。両腕ともにつけているのは、ビーム兵器によくありがちな故障対策。
ごめんね、せっかく、観客のブーイングに耐えてまで頑張ってるのに。
あたし相手じゃなきゃ、いいところまで行けたのかもね。
残念ね…
フィンファンネルを二つの塊に分けて、お相手の左右に飛ばし、ビームは撃たずに“寄せて”いく。
撃つぞ撃つぞ、と見せかけるのがコツ。
あ、これ、サイコミュシステムがないと、一般のドーラーにはできない芸当ね。
でも、ま、あたしは、できちゃうんだな、これが。
サイコミュシステムは頭部に組み込むと仕様で決まっているけど、あたし、カメラは光学じゃないとダメなの。
頭部に両方載せは、仕様で無理。
っていうか、サイコミュなくても動かせるなら、こんなシステム別に要らないでしょ?
要は、イメージの力さえあればどうにでもなるわけで。
地球では昔、家畜を放し飼いにしていて、牧羊犬を使って管理していたんだそうで、そういう感じでお相手の逃げ場をふさいでいく。
ちなみに、まだあたしは一発も撃っていない。
ほらほら、自分はちまちま撃っても当たらない。こちらは最初からフィンファンネルのビームは撃たないので、長距離弾の弾切れ狙いなんてできなくなるわよね。
近づくとあたしには勝てない。
遠くからだと当たらない。
こっちは弾を撃たない。
終わってない?
イメージの力さえあれば、サイコミュシステムなんて補助輪イラナイでしょ?
いやいや、普通の人は、補助輪がないと転んじゃうんですよ。いや、補助輪なんて、自転車の話のレベルじゃないんですよ。普通に「使えません」。
サイコミュシステムとフィンファンネルは、コミで運用するものです。
ナシで使えちゃうアナタがチートなだけです。