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Sweet Bomb  作者: 白河夜舟
5.鉄拳無双っ!
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30.ファイヤーバードアタック

 故障リスクはつきもの。大切な試合に限って、壊れます。

 実物武器は故障しないので、それなりに人気があります。ただ、重くて威力が少なめに設定されているだけです。ですが、特殊金属などを使うことで補うこともできます。

 と。

 あらま超初心者ちゃん、折角、予備弾まで積み込んだビームスナイパーライフル、相次いで故障とは運がなかったわね。ホーミングレーザーも弾切れみたいだし。

 まあ、あたしみたいにさっさと決着(ケリ)をつけないで無駄に試合を長引かせた自分が悪いのよ。もうどうしようもないわね。

 しめたとばかり近づこうとする星龍杯ドーラー。

 でも超初心者、最後の必殺技の、ファイヤーバードアタックを起動させたわ。

 肩のブースターが、爆発でもしたんじゃないかという勢いで噴射され、機体をむりやり高く飛翔させる。

 空中で広がっていく肩から伸びた翼から、フレア現象のように揺らめく炎が尾を引いていく。そのまま、両端の翼が変形し、機体を包み込む。

 浮力を失い、急速落下していくと同時に、フレアが激しく燃え上がる!

 あはは……。

 何度か、このオバカな武装つけた機体と闘った事があるけど、いつ見ても見栄えだけはスゴクいいのよね。

 落下途中で地面すれすれで軌道を修正し、そのまま体当たり攻撃を試みる。

 かなり広範囲に広がったフレアと、超高速での機動によって命中率はそんなに悪くないんだけど、経験を積んだドーラーにとっては、かわすのはそれほど難しくない。

 案の定、タイミングを合わせて星龍杯ドーラーは上にジャンプしちゃった。

「あぁあ……」

 試合は、終わったわね。

 と?

 フレアがかすめたらしくて、星龍杯ドーラーの左脚、傷が入ってるじゃない。

 バカねえ、肝心な所で操作をコンピューターにでも任せたみたい。自分はカウンターで攻撃に専念でもするつもりだったのかしら?

 悔し紛れに射程外でメーサー砲を撃ってるけど、当たるはずもないわ。

 そのまま、時間切れ。

 機体本体のダメージの総量で勝敗が決まるから、超初心者の勝ちになっちゃった。

「運が良かったわね」

 肩をすくめて、あたしはふかふかのソファーから立ち上がる。

「だ、大丈夫、だよな、郁美君(いくみくん)

 なによオーナー、随分と心配性じゃない?

「いや、その、か、彼の事もあるし…」

 奥歯にものでも挟まっているみたいね、オーナー。

 取って上げましょうか、無理やり。

 両手をわしわしっと動かしてオーナーにすっと近寄ると。

 パニックに襲われた小動物のように、一目散で部屋の隅っこに逃げ出したオーナー。

「彼って、ギルティの事?心配なくても、トーナメント表を見る限りは決勝にならないと当たらないわよ。後はせいぜい、準決勝で当たるTILTの2st.ドーラーのレーザーサーベル遣い位じゃないの?」

 超初心者は表向きなのかもしれないけど、こんな闘い方をするドーラーにあたしが負けるはずもない。この程度の相手なら、パパに任せきりにしても構わない位だわ。

「いや、その、彼の事だよ。あまり弱すぎる相手だと、君がやり過ぎて、その、彼が……」

 ああ、彼って、もしかしてパパの事?

 パパ、相手ドーラーをとにかく助ける事しか考えてないから、あたしが相手の機体どころか、勢い余って相手ドーラーまで殺しちゃうと、関係が悪くなると言う事?

 へえ、オーナーが、パパの心配、ねぇ…

 ま、確かにね。

 あたしは回りくどい事は好きじゃないけど、その辺は上手くやるつもりよ?

 (げん)さんがグランザールの(ダメージ)を気にしているのは承知しているけど。

 パパが相手ドーラーの生命(いのち)を気にしているのは承知しているけど。

 なんとか、折り合いはつけているわ。

 あたしが絶対無敵を貫いている事を、承知しておいて欲しいから。

「いまさらオーナーに言われなくても大丈夫、心配しないで」

「あ、ああ。そう、だよな……」

 オーナー、随分と顔色が悪いわ。よっぽど裏の組織(シンジケート)辺りから脅されているのね。

 ま、あたしのパパを巻き込んで下手なギャンブルを打つからよ。尻拭いするあたしの身にも少しはなって欲しいものだわ。

「ねえオーナー…」

 あんまり心配しすぎていると、そのうち禿げるわよ、なんてつまらない洒落(しゃれ)を言おうと思ってたら。

 メイン画面の第三試合の映像の中に(げん)さんの顔が割り込んできた。

(いく)ちゃん、調整終わったんだけど、来てくれないかねぇ?」

「あーはいはい。じゃ、またねオーナー」

 ホント、こんな狸親父の心配なんかしてる暇はあたしにはないの。

 第一、あたし、そんな柄じゃないし。

 いくみくんとかなんとか背中越しにごにょごにょ言っているオーナーを放っといて、あたしはさっさとグランザールに戻った。


 必殺技は、やはり必殺なのです。直接当たらなくても、勝ちに導いてくれます。

 ちなみに、超初心者チーム、相手の重装甲チームを狙い撃ちしています。ここだけ勝てればいい、という戦略です。

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