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Sweet Bomb  作者: 白河夜舟
1.絶対無敵っ!
3/14

3

 ドーリングを運営する本部は、参加者を増やすために、最低資金を無償援助しています。

 建前上は人命優先ではありますが、当然、死亡事故は絶えません。

 参加者の減少は避けられないので、新規参加者が参入しやすいように手を打っているのです。

(いく)ちゃん、武装はいつも通りでいいのかい?」

 源さんが、大会本部に送る申請書に書き込みながら尋ねてくる。

「いまさら、小細工なんかしなくてもいいわよ」

 別モニターに映るメカニック(源さん)に、サービスで微笑みかけて上げたけど、書類に目を落したまま、完全無視。

 ま、いいけどさ。

 機体は、もう全面的に(げん)さんの腕を信用してるけど。

 武装って、大会本部から購入の形にはなってるんだけど、実際の所はいつどのように使われたのか判らない、レンタル品みたいなものなのよね。

 賞金が入ったり、壊されちゃったりで、毎回の試合ごとに武装が入れ代わるのは当たり前なんだから、仕方ないんだけどさ。

 だから、対戦中に武装が故障したり弾が詰まったりするのは、結構よくあることなのよ。

 軽くて威力があって命中率も高いビーム兵器なんかは、特に壊れやすいのよね。

 一発撃ったら回路が焼き切れてハイオシマイなんて、日常茶飯事だし。

 第一、そういう複雑な機構の武器ってば、基本的にお値段が張るから、あたしんとこみたいに借金抱え込んでる特殊事情(ビンボー)チームだと“手が出ない”。

 といっても、安くて丈夫なスティックやトンファーなんかの「(じったい)」みたいな武器なら「故障」はしないけど、威力もあんまり期待できない。

 んで、あたしがいつも使ってる主武装は、右肩からニョッキリと生え出てくる第三の腕、トリニティビットなのよね。

 あたしは「歯医者さんのドリル」って呼んでるんだけど、昔の歯医者さんってレーザー治療なんか知らなかったから、こんなもの使ってたのよね。

 命中率も威力も破壊力も攻撃回数も充分、しかも軽い上に155crという安さ。

 ビンボーなあたしたちのチームにとっては、まさに「お気に入りの武器(てっぱん)」なのよね。

 んで、反対側の肩には、ちょっとお値段が張るけど頼りになる武装、ドラゴンクローよ。

 一見、肩からちょっと張り出したお飾りみたいに見える本体の中には、まさに竜の爪そのものともいうべき、巨大で鋭い隠し爪が仕込まれているわけ。

 ガス圧発射式だから一発しか撃てないんだけど、その代わり構造自体は至極単純で、切ったり殴ったりする(じったい)武装と同じだから、近接距離ならまず絶対に外さない。

 破壊力もかなりのものだし、なによりも相手に食い込んだ爪と、絡みついたワイヤーのお蔭で、相手に逃げられなくてすむのよ。

 相手の防御はともかく、一時的にせよ攻撃不能(ホールド)に陥らせる事の出来る、お値段が400crと泣けちゃうくらい高いだけの価値のある武装ね。

 まあ、これを買っちゃうと、残りの資金が35crしか無くなるのが悲しすぎるんだけど。

 後は、光学式センサーの目つぶしに仕えるフラッシャー。値段は10cr。接近戦主体で、軽量機体だからいつでも先制攻撃のできるあたしにとって、重宝できるんだけど。

 あたしの対戦相手って、みんな金持ち機体ばっかりなのよね。

 だから、安くて丈夫な光学式センサーは、あまり使ってくれないことが多い。

 だからまあ、装甲の代わりと、牽制の意味合いが強いんだけどさ。

 これで、攻撃武装はオシマイ。

 防御にかけるお金は、25cr。

 たったこれだけ、じゃないわ。これで充分お釣りがくるのよ。

 両手にそれぞれ、白いお饅頭みたいなプニプニしたものを握る。

 通称「的」。

 まさに、的。

 冗談じゃなくて、ほんとに敵弾の命中率100パーセントを誇る謎の物体なの。

 なんて、本当はコロニーの緊急補修用の風船なんだけどさ。

 一個10crという破格の安さ。

 その代わり、当然ながら一発当たったらオシマイの、使い捨て品。

 まあ、手で使える武装は、強力で使いやすいものが多いんだけど、ビンボーなあたしたちには関係ないお話だから。

 ううん、ヤケで言ってるわけじゃないの。

 両手に一個ずつ、2回だけ絶対に直撃を防いでくれる、信頼性抜群の防備だからこそ。

 なかば冗談みたいな武装でも、ベストセラーと呼ばれているのよ。

 なんたって、一回限りの使い捨てで構造が単純という事は、絶対に故障しないわけだし。

 新規参加者の死亡率は、相当高いのです。

 しかし、勝ち続けると莫大な富と名誉を手にできます。

 しかも、参加費無料、コンピューター任せでいいので、特別な技術も必要ありません。

 ですので、参加者がいなくなることは無いようです。

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