SIDE-B 1.特待生ですから、当然の義務ですのヨ
番外編第2弾。
実は、この作品は2000年当時のものではなく、最近書いたものです。
ただ、当時のプロットは元々あって、それを仕上げたものになります。
どうなんでしょうね。当時と今とで、作風とか文体とか、変わったりするものなんでしょうかね。
自分では分かりかねます。
ガッコの校門の前で、ピュアマッキッキーやアパレルピンキーに染め上げた髪の毛をこれ見よがしに見せつけてくれるオバカそうな女どもが二、三人、タムロッてる。
そのバックには、いかにもケンカ慣れしてそうなムサいのが五、六人、改造の反重力制御スクーターをブンブン言わせて、時代後れな木刀やチェーンをこれ見よがしに見せびらかしている。
ああ、アホを絵に描いたような連中よねえ。
コッチのナワバリに、たったそんだけの人数でのこのこ出てきて、なにヤラカスつもりなのかなんて、あたしは知らないんだけどさ。
はっきりいって今のあたし、あんたたちと“遊んで”いる場合じゃないのにね。
ま、“表向きの顔”として「特待生」でガッコに入学している以上、これもお仕事というヤツかしらね。
ホント、一般庶民って、どうしてあたしのコワサ、わっかんないのかしらねぇ?
ついこの間も徹底的に“教育”して差し上げたのに。
「ねえ郁ちゃん、あの人たち、なにもんなの?」
「さあね。あんまり酷いようなら、みーよのパパ、じゃなかった、理事長から“お呼び出し”があるんじゃないの?」
とか言っているちょうどいいタイミングで、「2年A組の近野郁美さん、至急理事長室まで…」と構内アナウンス。
「ほら、ね。じゃ、ちょっと行ってくるわ」
「気をつけてね。あんまり無茶しないで…」
あたしは、黙って背中で手を振って応えた。
廊下を擦れ違う生徒たちが、この時ばかりは尊敬と敬愛の視線であたしを見つめて道を譲ってくれる。普段はあたしの事なんか、色眼鏡でしかみないのにね。
合鍵を使うまでもなく、理事長室は開け放たれていた。
担任の白川センセと、狸親父の理事長が、恋人でも待っていたような歓喜満面の笑みであたしを出迎えてくれる。
「郁美くん、また、例の連中が…」
「学園の平和を守るためにも…」
「あー、ハイハイ」
適当に聞き流しながら、両腕に肘当て込みのガードグローブをはめ込み、足にはひざ下まであるエンジニアブーツを履き込む。
ヘルメットなんて暑苦しいものはイラナイ。
耐衝撃チョッキなんて必要ない。動きにくいし、カッコワルイ。
普段の制服、普段のあたし。
ホントはこんなゴチャゴチャしてるごつい装備もイラナイんだけど。
ま、手足だけは保護してあげる。
だって、自分のパワーで自分の手足、壊しそうなもんで。
今の時代、こんなヤンキーは存在しません。絶滅危惧種、というか、絶滅しています。(未確認)
当時は結構、いたんです。一種の文化と言ってもいい。ドラマや映画、漫画などでも盛んに取り上げられていましたし、流行歌にもなっていたと思います。