表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Sweet Bomb  作者: 白河夜舟
SIDE-A.紅桜白塵っ!
24/75

SIDE-A 4.この恥じらいの乙女心が、ゼンゼン判ってないわね

 食べ終えたら、食べっぱなしにしないできちんと片付ける。

 それが作法というもの、らしいです。

 ちゃんとした作法ができる人は、ゴハンだけ注文なんてことはシマセン。

 きっちりとドンブリを平らげ終えたら、器を自分が座る真正面、左右にも上下にもずれないぶれない曲がらない位置に据え付けて、お箸も上に水平に乗せておく。

 この時のために少しだけ残して置いたお茶で、口の中の赤みを濯ぐようにして飲み込む。

 そう、この間合いが大切なのよ。

 吉味屋は、客の回転率を上げたいという裏事情があるにせよ、むげに「食ったらとっとと出て行け」とはさすがに言えない…はずなんだけど。

 あら、店員さん、あからさまな態度で「とっとと出て行け」とあたしを睨んでるわ。

 いけない、いけないわそういう態度は。

 あたしはお客、そう、大切なお客さまなのよ。

「すいませーん、お茶のお代わりお願いしまーす」

 せいぜい可愛らしい声を作って、呼びかけてあげる。

「はい、ただいまー!」

 とか言ってるわりに、店の奥に引っ込んでなにか作業を始めている。

 あちゃ、完全に嫌われちゃったかな?

 ま、それならそれで、こっちにも考えというもんがあるわ。

 空になったドンブリの中に、もう一度紅ショウガをたっぷりと詰め込む。

 七味もたっぷり、お醤油もたっぷり。

 そう、ゴハンなんかなくっても、何杯でも食べられるのよ、あたしってば。

 それじゃあんまりだと思うから、高いゴハンを注文してあげているというのに。

 この恥じらいの乙女心が、ゼンゼン判ってないわね。

 憤然としながら、口の回りを真っ赤に染めて食べてると。

 カッコイイてんちょーさんが、お茶をもってあたしん所に駆けこんできた。

「お待たせいたしました、お茶でございます」

「どーも」

 キッとして睨んじゃったけど。

 てんちょーさん、今にも泣きだしそうで、目が潤んでいる。

 アハ、素直でよろしい。その謙虚さが大事なのよ。

 あたしはドンブリを残さず平らげてから、おもむろに席を立った。

 てんちょーさん、即座に飛んできて、「御会計130円になります」だって。

 どうしてもなにがなんでも穏便に丁寧に、帰ってもらいたいらしい。

 だから、お財布にちょっきり残っていた80円と、源さんからもらった50円引きのハズレ感謝券を手渡しても、なんにも言われなかった。


                ~ ・ ~


 御会計済ませて、「ごちそーさまっ」と一声掛けて。

「ありがとうございましたー!」

「ありがとうございましたー!」

と、元気にお見送りされて。

 風のように颯爽と店を去っていく。

 うーん、元気百倍よっ!

 吉味屋は、この元気さとスピード感、店と客の間合いの詰め方取り方のスリルがタマラナイんだわ。

 さーて、この調子で、来週の試合もきっちり勝っちゃうもんねっ!



                           (おしまいっ)



 P.S. 良い子のみんなは、絶対にマネしちゃダメよ。


 ま、学校の制服着たまま、あちこちでこんな事ヤラカシてたら、そりゃ通報の一つや二つ、あるわなぁ…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ