SIDE-A 1.巨乳パイパイドロップ
番外編です。
一応、本編の時空列の中に連なっており、2.流星乱舞っ!の後に起こった出来事です。
でも、日常的に確信犯として色々やらかしているわけですね。
「よお、郁ちゃんじゃないか。ささ、入って入って」
ガッコの帰り、みーよを上手くごまかして、よーむ員室に寄ってみると。
ちゃんと源さんが待っていてくれた。
この人の、こういう律儀な所、あたしはスキ。
莫大な年齢差さえ無ければ、お付き合いなんてラブな事考えても良い位に。
もちろん、源さんがよーむ員というのはお昼のお顔。
それは、あたしも同じ穴のジジババだけどさ。
「この前の試合はスマナカッタねえ。タイヘンだったろう」
「そーよー。源さんがいないから、あんな安物のザコに殺されちゃう所だったじゃないのさ。あたしの頼りは源さんしかいないんだって事位、判ってるでしょ?」
「ハッハッハッ、おだててもなにも出ないよ」
真っ白なゴマヒゲ頭をポリポリとかきながら、照れ笑いを浮かべている源さん。
「出して貰わないと困るのよ。オーナーにはクギ指しておいたけど、あれは絶対に何か企んでるはずよ」
「え?」
「ねえ源さん、あたしのグランザール様、ほんとにちゃんと整備してるの?この前みたく、一発撃ったらジャムッたとかいうのは、もうナシだかんね?」
「おいおい、あっしの腕を疑うのかい?あれは、大会側が最初っから仕掛けているワナって話じゃないか。武装の売り上げの向上と、大会の盛り上がりを期待してってネライだろ?」
「よしてよ。搭乗り込んでるあたしたちパイロットの身にもなってミソ」
「ハハハ。相手の機体を素手、いや、足でぶち壊した“破壊神”のセリフとも思えんわな。最後の蹴り技、年甲斐もなくドキドキしちまったぞ」
「ま、あたしと源さんのコンビなんだし。アレ位、出来て当たり前よ」
あたしの探りを入れるための皮肉にも、あっけらかんとしている源さん。
今のマッチメーカーで使用されているマシンがAKと呼ばれる前の時代から、ずっとマシンの制作、メンテナンス一筋で働いてきたこの人に限っては。
裏切りだの暗躍だの、そういう後ろ暗い事とは全く無縁だと断言していいと思うんだ。
っていうか、まず無理よ。源さん、ウソついたりしたら、すぐに顔にでちゃうんだもん。
そのつもりで来たんだけど、やっぱり「シロ」ね。
「おいおい、コンピューターもオーナーもいての“チーム”だろうが」
「うーん。あの鈍臭いパパを当てにしすぎると、あたし間違いなく死にそうだし。あの狸親父だって、借金さえ返し終ったら狸汁にして食べちゃいたい位、無性に腹が立って…」
あたしのお腹がギュルっと泣いた。
そう、誤字じゃないわっ!ちゃんと「泣いた」のよ。
この偉大なるプロポーションを保つためには、毎日の食事をきちんと取らないと…
「さすがにそれだけ“発育”してると、すぐにお腹がすいちゃうんだねえ…」
不用意な一言。
あたしは必殺のヒップアップボンバーを食らわせてあげた。
乙女の愛の一撃よ。
詩歌と受取りなさい。
屍化と受け取っちゃダメだからね。
「ま、参った参った、コイツを上げるから、カンベンしてくれ…」
下敷きにした源さんの手からにょっきり現れたのは、毎月九日十日に貰える、吉味屋の感謝券ハズレ五十円割引券じゃないのさ。
源さん、あんたって人は…
ウソの付けない純粋さもいいんだけどさあっ!
吉味屋の代わりに、巨乳パイパイドロップを謹んで差し上げた。
あくまでお遊び。全然本気じゃないです。ただじゃれてるだけです。