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Sweet Bomb  作者: 白河夜舟
3.強制停止っ!
16/75

16.ギルティ・ランス

 チョイ短め。郁美の過去を知る人物が登場です。


 本作品としては、主要登場人物はこのエピソードですべて登場です。

 郁美の一人称、視点で書いているので、彼女にとって印象深い人物は細かい描写を、そうでない人物は適当に描写しています。まあ、自然にそうなりますよね?

「近野でーす。入りマース」

 ジョシコーセーの(たしな)みとして可愛らしい声を作りつつ、ドアノブに手を掛けたんだけど。

 あらま、カギなんか掛けちゃってるわ。合鍵(スペア)持ってるからいいけど。

 でもね、ガッコのみんな、あたしが理事長の“公認の愛人”だとかは、表立っては言わないのよね。

 ま、言われても困るけど、なんにも言われないのも女としてはちょっと、ねぇ。

 入っていいとかいう返事もないけど、ま、いいや。

 そのまま、強引に理事長室に入り込む。

「な、なんだ、近野君か…」

 目元が黒ずんだ、まさに狸顔。チビハゲデブと三拍子揃った典型的な貫祿親父が、大きな机の後ろで、妙にオドオドしながらあたしを見つめ返している。

 あたしを前のチームから引き抜いた時には、けっこう可愛い、クリクリっとしたお顔が魅力だったけど、それは信頼関係があってこその話。

 理事長、いえ、オーナー。

 あたしの事は、まだよく判っていないみたいね。

 パパがあんな風に(コンピューターと)なった(同化した)のは、半分はアンタのそのウラでコソコソする陰謀主義のせいよ。

 あたしは後ろ手で、カギをカチャリと閉めた。

「久しぶりね、オーナー。お顔を見れて、嬉しいわ。で、どういう事か、説明して貰いたいんだけど…お客様が来てるのね?」

 感じる。この部屋の中に、もう一人いる。

「いやそのあの…」

「さすがは連戦連勝のドーラーですね。理事長、私から直接、説明致しましょう」

 オーナーの後ろのカーテンがふわりとなびくと、背の高い金髪の青年が“舞い降りた”。

 ように、見えた。

「本当はもう少し後でお会いしたかったのですが、理事長も怯えている事ですし」

 気障(きざ)な格好で、肩まである軽いくせ毛の金髪をバサリと振るうと、大きな机をヒラリと飛び越えて、あたしの目の前に降り立った。

「お久しぶりです、近野郁美(こんのいくみ)さん。いえ、“アズラエル”」

 フランク系エウロピアンの特徴を色濃く残している、高い鼻と深い目元。

 身についた習慣そのままに丁寧に差し出された、握手の手。

 あたしより頭一つ高い長身(約190cm)

 抑えの利いた、低い声(イケボイス)

 ギルティ・ランス。昔の“同僚(どうりょう)”だった人。

 そ、あくまでも、同僚(ただのひと)

 昔の話よ。

 あたしは、過去を決別するように、その手をピシリと撥ねつけてやった。

「なにを隠れてコソコソやってるのよ。それに、前の名前では呼ばないで。昔話はキライだって、判ってるでしょ?」

「私にとっては、今でも“現役(あなた)”の話なんですがね」

 困ったような笑顔が、あらカワイイ。

 間近でみると、結構いい男(イケメン)なのよん。

 でもね、“危険な色気(ヤバイヤツ)”でもあるのよね。

「で、どこまで知ってるの?」

「大体の所は」

 ギロっと、後ろのオーナーを睨んでやると、完全にすくみ上がっている。

 どーして勝手に物事進めるのよ。

「て事は、用件は…」

「ええ、“現役”の“TILT”の一員として、事前の警告に伺いました」


 TⅠLTは、ピンボールの台をわざと傾けてロストを防いだりゲームを有利に進めたりする不正行為の事です。店側も、そのような行為があった場合、強制停止になる仕組みを台に組み込んでいます。

 というか、今の時代、ピンボールは絶滅危惧種かもしれませんね…

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