49.ギフテッドの正体
さて、院長先生に頼まれた、ミリちゃんの養子先探し。
まずは先んじて、貴族に引き取られるにあたって最低限のマナーは身につけておかないといけないため、ミリちゃんを公爵家でお預かりすることとした。
急ぎではないけれど、できれば私が出産するまでに形を整えておきたい。
「エミリーです! よろしくお願いします!」
ミリちゃんはペコリと頭を下げた。
灰色の髪がふわりと揺れる。
「今日はレオくんはいないんですか?」
「ええ、今日はパパとお出かけしているの」
「そうなんですか……残念、せっかく一緒に遊べると思ったのに」
唇を尖らせて、ミリちゃんはしゅんと下を向く。
「ミリちゃんは院長先生から、どういう風に聞いてる?」
「レオくんのお母さんが、わたしに新しい家族を探してくれるって!」
「うんうん、他には?」
「んっと、貴族になるためにお勉強しようねって。わたし、がんばります!」
にぱっとミリちゃんは、大きく口を開けて天真爛漫に笑う。口の中に八重歯が見えた。思わず頭を撫でたくなるくらい可愛い。
「ミリちゃんからも気持ちが聞きたいと思ってるの。新しい家族の元へ行くとなると、今の生活とはいろんなことが変わっちゃう。なかなか孤児院のお友達や、院長先生にも会えなくなるかもしれない。それでもいい?」
「さみしいけど……でも、わたしだけの家族がほしいです!」
ふ、と。
目の前の女の子に、違和感を覚えた。けれどそれがどこから来る感覚かわからなくて、そのまま話を継続する。
「わかったわ。……新しい家族を探すにあたって、ミリちゃんからは何か希望はある?」
「わたし、子どもがいない夫婦がいいです。できれば、そんなに爵位の高くない老夫婦。新しく子どもができて、トラブルにならないように」
「トラブル?」
「はい。追い出されたりイジメられたりしたくないので。ひっそりと穏やかに暮らしていきたいんです」
これは、……違う。
5歳の女の子のする話の内容じゃない。
ちょっと賢いとか、ギフテッドとか、そんなもんじゃない。
ゾッと背中に緊張が走る。
そうだ、さっき感じたはずの違和感。
いくらギフテッドとはいえ、情動は年齢相応のはずだ。
──5歳にこんな決断ができるはずがない。
親代わりとして育ててくれた人との別離なんて選択、できるはずがない!
「──あなた、転生者?」
そんなことあるわけないと思いながらも、でも私と聖女ミモザの前例があるわけで。恐る恐る、思わずつぶやいてしまった私に、ミリちゃんはきょとんと首を傾げて、それから花が咲くように、本当に嬉しそうにニッコリと笑った。
「やっぱりメイベル様が、そうだったんですね!」
私が口を挟む間も無く、目の前の少女はニコニコと話を続ける。
「だって全然ストーリーが違うんだもん! 最初はレオくんかなって思ったんだけど、でもレオくん全然普通の子どもなんだもん。で、観察してたらメイベル様かなって思ってはいたんだけど確証はなかったから──」
「──待って待って待って」
話を続けるミリちゃんを制止する。
ストーリー?
ミリちゃんはこの世界のことを、知っている?
「あ、ごめんなさい、申し遅れました! わたしも転生者です! 死因はバイクの単独事故、20歳の大学生でした! 前世の記憶が戻ったのは、レオくんともめて転けて頭打った時です!」
「自己紹介ありがとう。私はアラサーの大学病院勤務の医師でした。ええと……」
違和感がすごい。
5歳の……レオくんとそう変わらない女の子なのに、話す内容は大人。
見た目は子ども頭脳は大人、の漫画みたいなことになってる……
というか、転生者なら賢いのは納得だ。5歳の中に20歳の精神が入ってるんだもん。そりゃあギフテッドに見えるわ。
「ミリちゃん、この世界のこと知ってるの?」
「はい!」
さも当然なことを語るかのように、彼女はあっさりと。
「ここ、乙女ゲームの『宝石色した7つの恋〜運命を超えていけ〜』の世界ですよね?」
ちょっと短めですが投稿させていただきます。
貴重なお時間を使って読んでいただき、ありがとうございました。
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