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3.推定悪役令嬢

連日投稿です! なのでちょっと短めです… 

 その夜。

 自室の寝室で、鏡でまじまじと自分の顔を眺めてみる。


 ──可愛い。

 濃い紫色の瞳、チェリーピンクの髪。まつ毛は長く、瞬きするだけで音がしそう。気は強そうなややつり目。唇はふっくらと赤く艶やか。体型はスレンダーなのに、胸はしっかりある。そしてさすが10代、肌のハリが良い。

 もしかして焼肉たらふく食べても胃もたれしないのかなー、最高じゃん。焼肉食べたい。

 

 ぼぶっ、

 ホテルみたいに綺麗にベッドメイクされた寝台に飛び込む。

 1人で使うには大きな寝台。

 ここは本来なら、夫婦共用の寝室らしいのだけど──でも氷の公爵様がいないので、独り占めして眠ることができる。

 ……というか、公爵様の寝室は別にあるらしい。自分の寝室にはメイドにすら入られたくないみたいで、前妻の妹姫さまも当然入れず、なので新しく夫婦の寝室を作ったんだそうだ。夜の夫婦の時間を持つときはこの部屋に公爵様が訪室し、そして営みが終わったら自分の寝室に帰って眠るとのこと。

 というわけで、一応夫婦の寝室となってはいるけど、実質は私の寝室ということだ。

 前妻が王族だったということで、部屋はかなり豪奢に作られている。ベッドは当然天蓋付きだし、細工もかなり細かくて金の装飾があしらわれている。灯りは当然のようにシャンデリアだし、絨毯もふわふわ、布団もふわふわ。なので文句はないのだけど、……普通、前妻が使ってた寝室をそのまま使わせるかな。デリカシーが無さすぎる。

 ……公爵様のヤバさについては今は考えたくない。



 寝転がって、ベッドの天蓋をぼんやりと眺める。

 目が冴えてしまって、眠れない。



「異世界転生、ってやつだよね……」



 急に前世の記憶が蘇ったけど、不思議と混乱はない。

 あぁそんなこともあったなーって、遠い昔のことを思い出す感覚に近いのかも。

 でも、メイベルとしての人格に、朝陽としての感覚が混じり合ったのは感じる。やっぱり人間を作るのは、経験と記憶なんだろう。

 朝陽はあんまり家族に恵まれなかった。だからこそ、同じような想いを抱えてる子の力になりたいと思って児童精神科医になって、恋人も作らず仕事に勤しんでた。

 前の世界に戻りたいかと言われると、強い未練は無いような気がする。突然私が死んで、患者さんたちに申し訳なかったなとか、同僚に引き継ぎで迷惑かけただろうな、とか、そのくらい。

 こうやって転生してみると、いかに私が希薄な人間関係の中で生きてたのかわかる。それがさみしい。



 ──ここはいったい、どこの世界なんだろう。



 こういうのって、前世でハマってた乙女ゲームとか漫画とかに転生するのがセオリーじゃない? でも、全然この世界に心当たりがない。

 私もオタクだったから漫画はある程度は嗜んでたはずけど、……ゲームはあんまりやってなかったからなぁ。やっぱり乙女ゲームの世界なのかなぁ。


 だって明らかに世界観がおかしい。


 中世ヨーロッパみたいな時代設定してるくせに、せっけんも冷蔵庫も水洗トイレもすでにあって、お風呂も温かいお湯が出るシャワーがあって、現代水準の生活に必要なものはだいたい揃ってる。

 明らかにオーバーテクノロジーだ。

 朝陽として感じるこの世界の違和感、メイベルとして過ごしていた時には気付くことすらできなかった。

 

 ……私のいた学園が、やっぱりゲームの舞台だったんだろうな。だってミモザの周囲、あり得ないくらい高スペックのイケメン揃いだったもん。卒業パーティーの婚約破棄騒動もいかにもそれっぽいし……あれ、ってことはもしかして私って、



「悪役令嬢だったの?!」



 驚きすぎて、思わず声が出てしまった。

 私が悪役令嬢。

 ピンと来すぎる。


 顔だってめちゃくちゃ可愛いけど、主人公ってよりは悪役令嬢寄りの顔だし。瞳も髪も派手な色だし。なんならメイベルのお気に入りの髪型、縦ロールだったし。


 悪役令嬢による逆ざまぁの漫画も流行ってたよね?

 ……逆に私もしかして主人公だったりする?

 旦那様、氷の公爵様とかいう二つ名ついちゃってるし。あり得ないくらい顔面が整ってるし。だいたい自閉スペクトラム症の子どもがいる公爵家に嫁いだ私が、児童精神科医してた記憶を取り戻すとかいうのも都合が良すぎるし。え、もしかして氷の公爵様に溺愛されましたとかそっち系?


「……ははは、ないわ」


 私も乙女の端くれなのでね、そりゃぁちょっとはこの結婚に期待してたんですよ。でもさ、結婚式で新妻に話しかけすらせず初夜すっぽかして放置して、新妻に前妻の部屋をそのまま使わせるような男、どれだけ顔面が整ってても、私が好感を持てない。無理。こんなに帰ってこないってことは、外に女がいるのかもしれないし。


 どうせ、乙女ゲームのエンディングで雑にテキストで説明が入ってざまぁされる「悪役令嬢は嫁ぎ先で冷遇され、愛されることなく生涯を終えた」みたいな方でしょ。


 何かの乙女ゲームの推定悪役令嬢。

 おそらくそれがこの世界の私。


 思考が一区切りしたところで、ようやくうとうとと意識がまどろんできた。


 明日は、朝食をいただいたらレオくんの部屋に行って、まずは対人意識の向上を目指すところからかな……

 考えているうちに眠気が増してきて、思考が溶けていく。

 そのまま睡魔に体を委ねて、ようやく長い1日が終わった。


ようやく世界観の説明パートが終わりました! 次回から療育が始まります。


貴重な時間を使って読んでいただき、ありがとうございました。

もしよろしければ、感想や☆の評価をいただけると嬉しいです…!

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