格好悪い勝ち方
リョナの神髄って精神的苦痛というか尊厳破壊だと思うんですが、有識者の皆さんはいかがお考えでしょうか。
ゆるふわほのぼのガールズラブコメディである本作には無縁なことですが……。
「ミーのターン!ドロー!さて、ミーのアタッカーはオンリーワン!つまり、あるスペルが発動できマース!これはミーのようなグローバル・エリートにとってまさに金科玉条となるスペルなのデース!」
悪そうな笑みを浮かべたヘンテコジジイはバトルユニットにカードを叩きつけると、スペルを発動してきた。
「スペル【アップ・オア・アウト】を発動デース!デッキからドローしたカードが、ミーのアタッカーよりもAPの高いアタッカーであれば、召喚条件を無視して特別召喚できマース!バーット!そうでなければドローしたカードはセメタリーに送られて、ミーはELを2000ポイントロストしマース!」
『まずいよマスター!もしかしたら強力なアタッカーが出てくるかもっ!』
「所詮はギャンブルカード。運が悪ければオジサンのELはゼロになる。わざわざ負けにきたの?」
「シャラップ!クレイジーサイコガール!これまでミーはアゲインストな状況を物ともせず己の手で貪欲かつアグレッシブにチャンスをゲットしてきマーシタ!これぞグローバル・エリートのあり方デース!ユーのような目標もない無気力サイコガールとは根本から違いマース!」
「は?」
なんだそれ。偉そうに何様だよ。
所詮ここはホビーアニメの世界じゃないか。私がどんな努力をしたところで、どんなことを夢見たところで、どうせ世界の摂理だかなんだかに阻まれるんだ。努力なんかイヤになるし、目標もなくなってしまうさ。
かつて私はママに頼み込んで、それなりに強いロボット族のアタッカーを手に入れた。だけど翌日、外出中に謎の強風によって吹き飛ばされた、そのカードは永遠に失われてしまった。まぁまぁ使えるコンボを編み出して汎用カードを詰め込んだときも、気づいたら手元からすべてのカードが消えていた。こういう苦い経験を何度もしてきたんだ。
結局、私に許されたのは【JKガールズ】関連のカードか、グロテスクなスペルとアンデッド族アタッカーだけだ。
それに、もしここが私の知るようなカードゲームの世界ならば、いずれとんでもないカードのインフレがやってくるだろう。玩具会社も利益を稼ぐために、既存カードを遥かに上回る強力な効果を持った新規カードをドンドン投入してくるはずだ。生贄がいらないノーマルグレードアタッカーは、効果なしでだいたいAP1200前後が中心だが、そのうちAP1600やAP1800のアタッカーが一般的になるに違いない。
そうなれば、私に使用が許されたカードプールに強化が入らない限り、勝つことはできなくなってしまう。嗚呼、なんて悲しい未来予想図だろう。そんな将来のことを考えたら、無気力になるのも仕方ないだろうが。
人知れずイラつく私など意に介さないヘンテコジジイは、目をギラつかせながら語り出した。
「グローバル・エリートとは、単に能力が優れているだけではなれまセーン!何が何でも成し遂げたい野望と、自ら主体的に周りを蹴落として昇進する貪欲さ!この2つを兼ね備えた、孤独な捕食者こそがグローバル・エリートなのデース!なぜミーが高いAPにこだわるのか?それは孤立無援の状況でモノを言うのは結局APだからデース!アグレッシブにチャレンジするには自律した強さが必要なのデース!」
両腕を広げたヘンテコジジイは手のひらを下に向けると、一転して落ち着いた雰囲気で言葉をつづけた。
「誰かに依存したエフェクト頼みだなんてグローバル・エリートとしてありえまセーン。そうした甘え、そして現実を諦めた負け犬オーラ。クソガキッズは我がシルバー・セックス・スタンリーを去っていったルーザーたちと同じデース」
『たしかにマスターの目標はわからないし、もしかしたら現状維持が目的になっているかもしれない!でも、まだ小学生なんだから仕方ないでしょっ!このキモジジイ!マスターに偉そうに説教するなんて許せないっ!』
「長々とうるさいな。早くしてくれる?」
「オー、ソーリー!図星だったようデース!では、そろそろいきまショーカ!ドロー!」
頭に手を当てて大袈裟に仰け反ったヘンテコジジイは、勢いよくカードをドローすると不自然などほど綺麗にそろった白い歯を見せた。
「ファンタスティック!ミーがドローしたのはトップグレードアタッカー【ゴールデン・リムジン・ドラゴン】デース!こいつをノーサクリファイスでサモンしマース!カモン・ベイベー!」
「なんということだー!ゴールマン選手、AP2800の強力アタッカーをまさかのコストなしで召喚だー!」
ドローしたカードが掲げられたことで、巨大なアタッカーが出現した。金色の鱗を身にまとった2メートル超のドラゴンの股間には、なぜか長い車体のリムジンがあった。
光り輝く金竜は咆哮をあげるとともに頭の後ろで腕を組み、前後にカクカクと腰を振り始めた。そのドラゴンの動きにあわせるように、股間の金ぴかリムジンは上下に揺れている。不規則に甲高いエンジン音を鳴らすだけでなく、時折クラクションを大音量で響かせていた。
『何あのドラゴン……気持ち悪い……』
「耳障りなトカゲね」
「さらに!ミーは【ブラック・セダン・リザード】をサクリファイスしてハイグレードアタッカー【イエロー・クレーン・ドラゴン】をサモンしマース!」
「これは凄い!ゴールマン選手の場に新たにAP2500のドラゴンを生贄召喚したぞー!スルメ選手、一転して大ピンチだー!」
ヘンテコジジイの場に黄色いドラゴンがあらわれた。股間には巨大なクレーンがあり、轟音をたてながらアームが上下に移動している。
大型アタッカーが並んだことで、さきほどまでお通夜状態だった観衆のボルテージは最高潮になった。女性の黄色い声援や「あのサイコロリを倒せー!」や「外道ロリをわからせてやれー!」などといった野次も飛んでいる。不愉快な奴らだな。
歓声を受けて満足げなヘンテコジジイは、再びキラリと白い歯を見せると私の場にいるホムラを指差した。
「ファイトデース!【ゴールデン・リムジン・ドラゴン】でフールガールにアタック!ゴージャス・リモ・タックル!」
「場か墓地に、アタッカー【JKガールズ・炎激のホムラ】が存在するとき、カウンタースペル【ガールズ・フレイムガード】を発動できる。これにより相手アタッカーの攻撃を無効にし、相手ファイトシーンを終了させる」
『うおぉぉお!来るな金ぴかキモトカゲ!燃やされたくなければなあ!』
股間のリムジンを突き出して猛ダッシュする【ゴールデン・リムジン・ドラゴン】だったが、突如出現した炎の壁が攻撃を阻む。ヘンテコジジイは顎に手を添えると、したり顔で頷いた。
「アーハン。ナイスワーク、クソガキッズ。ならばミーは3枚スペルを伏せてターンエンドにしマース!」
「私のターン。山札からカードをドローしてメインシーンに移行。……ふむ。なるほど」
ドローしたカードはなんとも都合のよいスペルだった。たしか愛しのスズがくれたカードで、満面の笑みを浮かべて「これでホムラを墓地に送ってね」と言っていたはずだ。ちょうどいいので早速使わせてもらおうか。
「伏せカードが3枚か。どれにしようかな……」
『あっ……あのっ!マスターっ!?ちょーっといいかなっ!?』
「……なに?」
こちとらお前の効果で、どの伏せカードを破壊するか考えるので忙しいんだ。
だが、あろうことかホムラは、思考を邪魔されて不機嫌な私を無視し、身振り手振りで喋り出した。
『ほら!私たちが気味悪いスペルで墓地に送られるのって、酷い絵面になるでしょっ!?やっぱり未成年に配慮したカードバトルを心掛けるべきだと思うのっ!』
「そう」
『周りを見てごらん!さっきから外道ロリだとか人間の屑だとか、マスターの評判は最悪だよっ!これ以上、変なカードを使わない方が今後のためにもきっといいと思うっ!』
「そう」
『やっぱりアタッカーをたくさん並べて真っ向勝負するのが王道だと思うんだよねっ!カードバトルのプロも客商売のエンタメ重視じゃん!?こういう大会に出ている以上はちゃんと盛り上がる展開にしてあげないとダメだと思うんだ!』
「そう」
『っていうか私まだ死にたくないっ!!お願いマスター!せめてグロテスクなスペルじゃなくて戦いの中で散らせてっ!マスターのスペルを喰らっていると何かがおかしくなっちゃいそうなのっ!』
「そう」
『……あの?マスター?話聞いてる?』
聞いてないけど?
だって聞いたところで意味がないから。これから死んでいくヤツの言葉なんてどうでもいいでしょ?もうすぐ死ぬくせにピーチクパーチクうるさいな、としか思わない。
「ホムラ。私のモットーを忘れたの?」
『…………ははっ。なんだっけ?ラブ・アンド・ピースとか?』
「カードに人権はない、でしょ!私は手札からスペル【絶望と苦痛のキラー・ハンド】を発動!場の【JKガールズ・炎激のホムラ】を墓地に送り、山札からスペル1枚を手札に加える!」
『うわあああん!やっぱりぃいい!この鬼畜サイコロリぃいい!』
私の宣言とともに、ホムラの腹部に漆黒の魔法陣が描かれていく。そして陣形が完成するとともに少女の腹を裂いて巨大な腕があらわれた。禍々しい雰囲気をまとった手は、掴んでいた血色の良い胃腸を握りつぶした。
「カフッ……コフッ……」などと無様に吐血しながらビクビクと身体を揺らす魔法少女。だが、惨劇はこれでは終わらない。血まみれの邪悪な手はくるりと踵を返すとホムラの顔へと向かい頭蓋を鷲掴みした。
メリメリと骨が嫌な音を立てるとともに痙攣する少女。手足をだらんとさせて腹から血を流している姿はなんとも哀れだった。こんな惨たらしい目に遭うなんて、きっと仲間が具材となったハンバーグを食べた罰だろう。
そんなことを考えていたら、グシャリという音がした。見ると、ホムラの頭は粉々に砕けていて足元には目玉や肉片が落ちている。新鮮な少女を砕いて満足した腕は、私のデッキに手を入れるとお望みのスペルを取り出し渡してきた。
会場中から観客の絶叫や奇声、怒号が沸き起こる。突然の声援に恥ずかしさを感じながらも笑みが浮かんでしまった。いかんいかん。冷静に、クールに。私は銀髪碧眼の無表情系美少女だ。……よしっ!
「このとき【JKガールズ・炎激のホムラ】の効果発動。自分の場に存在する【JKガールズ・炎激のホムラ】が墓地に送られたとき、相手の場のスペルを2枚まで墓地に送り、相手ELを1000ポイント減らす。私はそこの2枚の伏せカードを破壊する」
「ホワーイ!?どうしてこんなにも残酷なことが平然とできるのデース!?ユー・アー・イービル・モンスター!」
「黙れよジジイ。さらに武装カード【悪魔的美食!絶望ハンバーグ】を装着したアタッカーが墓地に送られたとき、自分の場にゾンビ族のトークン【怨念の残骸】が1体出現する」
私の場に人型の地縛霊があらわれた。どこからか聞きなれた少女たちの声が聞こえてくる。どうやら2つの魂が反目していて「失せろ猪女」や「お前が消えろ冷酷女」などと罵り合っているようだ。
死んでいるくせに騒々しい奴らだな。今から餌になるんだから大人しくしてろ。
「オジサンはAPが高いアタッカーが好きなんだよね?ならコイツのこともきっと気に入るよ」
「何をするつもりかは知りませんが、トークン1体をサクリファイスしたところで大したアタッカーはサモンできまセーン!」
「それはどうかな?私は場のトークン【怨念の残骸】を生贄に捧げて、アタッカー【アンデッド・パニッシャー】を生贄召喚する。あらわれろ!屍を貪る暴虐の処刑蟲【アンデッド・パニッシャー】!」
「なんとここでスルメ選手!AP3000の超凶悪アタッカーを展開してきたぞー!しかしその見た目はグロテスク!この世の憎悪を詰め込んだような醜悪なアタッカーだー!」
「ノー!アンビリーバボー!サクリファイスなしでトップグレードアタッカーをサモンするなんて信じられナーイ!」
数多の呻き声とともに禍々しい巨大芋虫が地面を突き破りあらわれた。声にならない悲鳴のような音を発しながら、場の地縛霊は【アンデッド・パニッシャー】に吸収されていく。
ばいばい。シズク、ホムラ。
さて、これでヘンテコジジイのELはたったの500ポイントだ。場にはアタッカーが2体。つまり、伏せカードがスペルの発動を妨害するものでなければ、私の勝ちだ。幸いホムラの効果で、そうした妨害スペルは破壊できたので、もう大丈夫だと思うがどうだろうか。
「さらに私は手札からスペル【アンデッド・バースト・ストリーム】を発動。自分の場にAP2500以上のアンデッド族アタッカーが存在するとき、手札1枚を墓地に送ることで相手の場のアタッカー2体を墓地に送る」
「ホワッツ!?ノー!マイ・ゴージャス・アタッカーたちがー!?」
「現世の憎しみを背負いし悲しき獣よ!破滅の光で敵を浄化しろ!呪いのアンデッド・バースト・ストリーム!」
私の宣言とともに、悪霊を付き従えた【アンデッド・パニッシャー】が熱戦をドラゴンたちに向かって照射した。破壊光線が敵に届くと同時に、大爆発が起きヘンテコジジイの場は空っぽになった。カンナさんがくれたとっておきのスペルのおかげで、目障りなキモドラゴンたちが一掃できて気分もスッキリした。
ちなみに、このスペルはさっきホムラが惨殺されたことでサーチできた。ホントつくづく便利な手駒だよ、お前は。これからも私のために死んでくれ。
心の中でホムラに感謝しつつ、目の前で頭を抱え慌てふためくヘンテコジジイに引導を渡す。
「言っておくけど、【アンデッド・バースト・ストリーム】の効果でアタッカーを墓地に送った場合、相手はアタッカー1体ごとにELが300ポイント減少するからね?」
「ホワッツ!?ということはミーのELはっ……!?」
「ゼロだよ。はい、オジサンの負け」
相手の敗北と私の勝利を告げるブザーが会場に鳴り響く。遅れて観衆から大音量の歓声と拍手が沸き起こった。若干、微妙な反応なのはホムラが言っていたような王道から逸れた勝ち方だったからだろう。
それでも負け犬ジジイはがくりと膝をつくと、四つん這いになって項垂れた。
「そんな……ミーのハイレアリティ・ゴージャス・ドラゴンカー・デッキが……」
「恐ろしいことが起きています!新十区のインテリジェンス・エリートが、傾奇町のサイコロリに敗北したー!これが悪魔の盤狂わせ!勝利の女神は外道少女に寝取られたー!」
なんて酷い実況だ。勝手に人を間男扱いしないでほしい。
偏向報道を無視して、来賓席に目を向けるとパパとママが座っていた。仕事が忙しくて来れないと思っていたのだが、なんとトーナメントに間に合ったようだ。嬉しい。
ただ目を凝らして見ると、ママが満面の笑顔で手を振っている一方で、引き攣った笑みを浮かべたパパは大量の冷や汗をかいている。きっとお腹でも痛いのか、1人で大舞台に立つ私が心配なのだろう。安心させるためにも微笑んでピースサインをしてやると、気まずそうに微笑んでくれた。こうして初戦は私の勝利で幕を閉じた。
・・・・・・・・・
控室に戻ると誰もおらず室内はがらんとしていた。同室だったショウタが準決勝に出場するため不在だからだろう。インリンも観客席に戻ってしまったようだ。
聞くところによると、ショウタの奴も初戦で新十区42-ヤの敏腕弁護士に圧勝したらしい。第一回戦は時間の都合上、別室にあるバトルアリーナで同時開催されるため、他の選手の試合を観戦できないのが残念だ。
とはいえ、出場者が8人しかいないトーナメントなので、第2回戦は準決勝になる。一番大きな会場を使って、準決勝からは一戦ごと順番に進めていくらしい。ショウタの試合も控室のモニターで見れるので少し楽しみだ。
『うぅ~……酷い目に遭ったよ~……。あんなのもう懲り懲りなんだからねっ!マスター!』
「勝つためには仕方がないでしょ。ほら、準決勝が始まるよ」
『あの赤髪ツンツンのガキンチョでしょ?随分とキラキラしたバトルパワーを纏っていたし強いんだろうな~』
「さて!準決勝からは俺様、マイク・イチガヤが実況させてもらうゼーイ!さっきの試合で正直ちょっと気分悪いけど、しっかり頑張らせてもらうゼーイ!」
テンションの高い実況のオジサンの声がモニターから聞こえてきた。少し顔色が悪そうだが、おそらく食あたりでもしたのだろう。そんなどうでもいいことは置いておいて、そろそろ試合開始のようだ。
「まずは新十区で暴れまわる小さなバーサーカー!手当たり次第に老若男女をカードバトルでボコボコにしてきた最強の小学生!姉崎ショウタだー!」
『あのクソガキもしかしてヤバいヤツ?』
「そうかもしれない」
「そんな少年の相手をするのが異国の新星!ビックボとハイデン馬場の成り上がり者!カレーとキムチと刀削麺をこよなく愛するパク・バハドゥール・チン選手だー!」
「その勝負、オレが乗っ取らせてもらう!」
『何この厨二ファッションのクソガキ。こんな奴、選手登録されていたっけ?』
いや、知らん。あんなトサカみたいなヘアスタイルの中性的な美少年、忘れないと思うけど。少なくともトーナメント表にはいなかったはずだ。腰までのびているであろう橙色と青色のツートンカラーの長髪は、なんとも目に痛い配色をしている。
黒のコートを羽織り、真っ赤なシャツとダメージジーンズを着た少年が壇上に現れて、観衆もざわめきだした。すると、実況のオジサンが慌てた声色で状況説明を始めた。
「なんということだー!今入ってきた情報によると、控室でボコボコにされたパク・バハドゥール・チン選手が発見されたとのこと!第一試合から波乱万丈のトーナメント!傾奇町には悪魔が潜んでいるのかー!?」
「オレの名は暗黒院ホクト!そこの姉崎ショウタのライバルだ!今日こそお前を倒すぜ!ショウタ!」
「なんだぁ?ホクトが相手してくれんのか?いいぜ!楽しいバトルにしようぜ!」
「行くぜ!オレのターン!ダークネス・ドロー!」
「対戦相手が急遽変更となりましたがこのまま続行とさせていただくゼーイ!さぁ乱入者の暗黒院ホクト選手!一体どんなバトルを見せてくれるのかー!?」
「いや、いいんかい」
普通、乱入者は追い出すだろ。なにやってんだ運営は。前世の常識が通用しないのも、やはりここがホビアニ世界だからだろうか。もし主人公がショウタならば、きっと暗黒院少年はライバルキャラなのだろう。
戦隊ヒーローのようにカッコつけたポーズでカードをドローしたライバル君は、不敵な笑みを浮かべるとカードを頭上に掲げた。
どうでもいいけど、ネックレスやリングなどのシルバーアクセサリーを沢山身に着けているが、あんなに大袈裟な動きをしていて邪魔にならないのだろうか。
「オレは手札から【ファリーアニマル・ラットガール】を召喚するぜ!来い相棒!」
「えぇ……あの風貌でケモナーなの……」
『てっきりドラゴンとか機械系・悪魔系みたいな硬派なアタッカーを召喚するのかと思ったよ……』
暗黒院少年のかけ声とともに愛らしい見た目のネズミ少女があらわれた。いわゆるメスケモというヤツで、世界的に有名なCGアニメ映画などで登場するキャラクターのように、かなりケモノ要素が強い風貌をしている。
【ファリーアニマル・ラットガール】は、人間よりも少し突起した鼻口部をヒクつかせながら、周りに興味津々なようだ。時折、暗黒院少年の足元で幸せそうな表情を浮かべて頬ずりしている。うわぁ……。
「来たな!ホクトお得意の【ファリーアニマル】デッキだなっ!」
『ねぇマスター。あのケモナーのクソガキからも、赤髪のクソガキと同じくらい強力なオーラを感じるんだけど。使っているカードからも凄いバトルパワーを感じるし……』
「そう。まぁ、あのカテゴリを深く愛してそうだもんね。うん……」
「オレはコイツらと一緒にお前を倒す!覚悟しろショウタ!」
暗黒微笑を浮かべた暗黒院少年はびしりとショウタを指差した。どうやらまだカードを展開するようだ。1枚のカードに触れると、さらに笑みを深めた暗黒院少年は高らかにカードを掲げた。
ファリー=Furry=????
感想や評価などいつもありがとうございます!
嬉しすぎて【ゴールデン・リムジン・ドラゴン】みたいな動きしてます!!




