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第二話 色んな日常


***


(アヴァの路地裏にて)

(空はいつものように雲一つ見えない)


(…ダダダダダダダッ、と銃の音がする)



「チッ…あいつ、どこ行った!!」

「(……こわい…………)」


「黙って五万くらい払えばいいものを、人のシノギにケチつけやがって!!」

「落ち着きなよ。このあたりはうちらの仲間が封鎖したんだしさ、あの二人組が見つかるのも時間の問題だって」

「…そうだな。はぁ…今月のノルマギリギリなのに…」


(タタタッと、不良達の靴の音は遠くに過ぎ去っていった)


「……う……うぅ……怖かった……………………」


***



***


『勇者カイン、行方不明から一ヶ月』

『治安悪化――責任の場所は』


勇者が行方不明になる、という例はこれまの歴史上に三度あったとされているが、建国からの歴史上では初である。『世界の文明合理化』の各国の動きから勇者の政治的な影響力は減少していた。この経過の行き先によって、さらなる世間の政治への不満を招くことがクレトリア家諸派では懸念されている。クレトリア家は取材に対し、当主であるアーリアスマ・リーン・クレトリアの体調が回復するまで、コメントは差し控えるとし、詳細は明らかにされていない。


帝国新聞の声

(23)性別:男 アカグロ派

【七つの技能】は、この国が有する絶大な力を持つスキル。そのスキルの持ち主の行き先が不明となるなど国防上許されることではない。即刻、勇者カインの行方を探し、相応の罰を与えねばならない。「勇なる者」の称号を持つ人間がこの有様とは、なんとも皮肉なものだ。


(24)性別:女 アオカゲ派

勇者カインにかかる責任は、十八歳の少年が抱えるものにしてはあまりに重すぎたのだ。勇者の技能を持つとしても死の危険は常に付き纏う。世界共存文明開花のこの世の中でこの国が各国と比較し、『遅れている』ということを、この勇者は無意識にも、「勇敢」にそれを示したのではないだろうか?


おわびの言葉:社内の意見派閥闘争による新聞記事完全におくれが生じたことにより、一週間の発売延期に至ったことをここにおわびします。 


帝国新聞出版部


第二面 つづき

第三面 つづき

第四面 帝国新聞の声つづき

第五面 第四目つづき

第六面 第五面つづき

第七面 おわびの言葉つづき

第八面 アカグロ派アオカゲ派閥間意見闘争による逮捕者について


第三九面 日刊八コマ漫画「創作のくるしみよ」

第四五面 魔女ベールの占い


『連載作:ダンジョンに転生する俺、偶然配信者の美少女と出会った 〜いつのまにか最低値SSSランク!!?〜』


###


(水溜りにうつるこの顔は間違いなく自分だが……)


(……ここISどこ?俺はだれ?)


なんてね。

俺は所謂『転生』をしたらしい。


前世の自分が死ぬ記憶もある。

そしてここは所謂『異世界』というものなんだろう。


(辺りを見渡すと限りなく緑が広がっている)


「歩くしか無い……か」


(この森の地理なんて分かるはずもないが……)


(……まず誰でもいい、人に会うしかない)


「あの……旅人さん?」


(そうして……俺が出会ったのは……)


(一世を風靡する配信者、ネロ・メイドアーヌだった)


つづく


###


***


警察署事務所にて。


「……社会不安…………か………………」

「どうしたの?カリンちゃん」

「セラスちゃん……いや……どうも……こういう新聞が増えてきたなと思ってな……」


「ああ、確かに」


「それに警察の我々から見ても、治安が悪化している……」


「いやまぁ……勇者消えたしね」


「私もな、思う所があるんだ……メルファさんみたいな人が、社会に沢山いる訳じゃない」


「カリンちゃん?……どうしてメルファさん、って?」

「彼女は勇者なんか居なくったって、気にしないだろうと思ってな」


「…………」

「だって自分で自分を守れるだろ?その強さを彼女は持っている。力も、生きる意思も」

「まあ、レアな人だよね……」


「…………はあ……どうにか、この憂鬱さを吹き飛ばしてくれる天使でも現れないものかなぁ……」



「そこでカリン君!実験に協力してくれ!」

「うわでた」

「は、やれやれ失礼なもんだな、君の愛しのロックだぞ」

「ふざけるなっなんでお前なんか」

「いいからいいから、これ飲め」

「むぐー!!」



「……あの……セラス先輩………」

「どうしたの新人ちゃん」

「……なんで彼……犯罪者なのに牢から……出てるんですか……??」


「……あ、あ、ははは……」

「えぇ……先輩も分かんないんですか……?」

「いやまぁ……害は……ないよ……」


「ウワー!!!!!私の股間にマジカル棒がは、生えてーいる!!!!!」

「所謂TS薬さ。経過観察させてくれ!」

「くそが!!お前も飲めロック!!!」

「ぐあっ何をするこのワンコ!や、やめろー!!俺が美少女になったってなんの需要もないだろう!!!」

「いいやきっとあるよこのマッドサイエンティスト!!!喰らえ!!!」

「ノーーーーーーー!!!!」


「……害、無いんですよね?」

「………………多分…………」


***



「……♡」

「な、な、何をする」


「おじさん、『運命』って信じる?」

「何、何のことだ!!!」


「『運命』はね……」

「もっ、もういい!こんなイカれたガキとつきあってられるか!取引は中止だ!!!」


「おじさんが、二〇秒後頭を打って死ぬ……って♡」

「……帰る!!!」


そう吐き捨て、男は暗い路地に消えた。


「あーあ」

「……くそ……何だったんだあいつは……」


「おじさん……『運命』のことも知らないなんてね」

「……私は社長だぞ……?」


「私、心配しただけなのになー、本心だよ?」

「こんな所でスキャ」


ガ、チン。

ピチャア。

ピチャアと、血が噴き出す。



「あーあー本当に、死んじゃった」


まさか、宙で死んだ鳥と激突して死ぬなんて、面白いよね。……うん。これで99.99%、『運命』は事実になった。


けど、たった一例、外れた。

面白い。


すっごく、面白い。


命を運ぶ、と書いて『運命』……かあ。

いいね。


「私が見つけた『運命の人』……」


「メルファお姉ちゃん、退屈させないでね?」

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