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第一話 とんがり耳のフロイライン


〜昨日のこと〜



「…………」

「…………」


キイ……


「…………し、失礼します」

「一同皆、礼!!組長の客人だ!!!」

「へ」


「(バッ!)」

「(バッ!)」

「(バッ!)」


「我ら冬蝶風節一同!!!!!」

「メルファ・クラークはんを歓迎します!!!」

「ようこそ!!おいでなすって下さり!!」

「ありがとうございます!!!!」


「………………わ、わぁ……」

「くくくく。客人はんが押されてしもうとるやないか。」



そう言うのは……



「…………エルフ……?」

「ええ、ウチは正に正真正銘全身エルフや。この国では珍しい族種やろうけど」

「ああいえ、エルフの中でもお綺麗だなと」


「くく。褒め言葉が上手やなあ」


……その、13歳ほどにしか見えない少女は、見た目に釣り合わない言動を次々と口から吐いている。


その風格は幼さとは無縁だった。


「ウチの冬蝶風節にようこそ、メルファ・クラークはん」

「……こんにちは。私の自己紹介は……」


「メルファはんには必要あらへんくらいやな。ウチな、あんたはんの記事見とるで。毎日毎日人の為に働いておられるんやろ?犬の散歩に鳥のフン掃除、挙句に教職なんて……ほんまに人ができてらっしゃる方や」


「そ、そんな大層なものでは……」

「ウチはレギーナいいます」

「レギーナ……レギーナさんですか」

「うんうん、よろしゅうな。ウチ、メルファさんのこと応援しとるんで〜?ファンやしな」

「ふ、ファン、ですか。光栄です」


「どうぞすわって、すわって!」

「は、はい……」


「…………緊張しとる?」

「……少しは……そうですね……」


「茶どうぞ〜」

「あ、ありがとう、ございます」


(……あ、おいしい……)



「この茶、どや?魔法使いはんのお舌に合うならええな」

「あ、おいしいです……」

「そりゃ良かったわ!一億の食器使うたかいがある!」

「いちおく」


……今私が空中に浮かべている……これが………………?


「(……え?落としたら……まさか……指を)」


「ジョークやよ」

「よ、良かった〜……もう!からかわないで下さいよ!」


「アッハッハッハ!ごめん、ごめんよ」

「組長……(お客さんカアイソ)」



『冬蝶風節』は、このアヴァ地方に縄張りを持つ反社会組織だ。


〜また話は少し遡る〜



アヴァの下宿先にて。


「最近、教職の方は順調?」

「はい。お陰様で」


私はこの地方で、先生をやることにしたのだ。

魔法使い業と兼業するのに丁度いい条件だった。

それに……あの二人のこともある。


マリアちゃんと、メイちゃんのことだ。



一般の教師や学校が、特殊体質な彼女達の面倒を見れるとは思えない。少し気の毒だが、教師は負担を負ってしまうだろう。それに、事情を抱える彼女らが馴染めるかどうか……


なら自分達で教えた方が効率的だ。


アヴァの中学校……ガレス学園の魔術特別教室。

私はそれを設立し、責任者になった。



「特殊な体質、スキルを持つ子供を専門に魔術を教える教師……か。大変でしょ?」


「いえいえ。子供達からは毎日活力を貰ってます。……ふふふふふ……かわいいし……」

「(この人が言うとちょっと……あれだな……)ヨカッタネ」


「?ワトソンさん?」

「なんでもない。それでね……私達ジェイムズ研に、竜殺しを依頼してきた『冬蝶風節』を覚えてる?」



「ワトソンさん、あのマフィア組織ですか?」

「それがね……竜殺しを断った件を話したら」


「はいはい」

「……どうやら、メルファさんに興味を持ち始めたみたいでさ」


「!?」

「はいこれ冬蝶風節からのお手紙」


「まさか私、もしかして恨みを買ったんじゃ……」

「逆だよ。むしろ……」

「むしろ?」



「…………めっっちゃ気に入られてた」


「…………???なぜ…………???」


「それは直ぐに分かるよ……メルファさん」

「はい」



「……あの、竜化事件の犯人について」

「!」

「メルファさんはハッキングで、彼女らの存在を特定できた。流石は魔法使いだ」


マリアちゃんに『竜化』のスキルを埋め込み暴走させ、逃走した……あの黒服の二人組。


「ありえないあり得ない有り得ない……だってこの結果は、『預言者』の『運命』の注釈の範囲を明確に超えている……」


成人の、狂気を纏った女性と、


「私の名前はベウァー・フランシス。あなたの勝ちだよ、メルファお姉ちゃん。期待してるよ〜また面白いものを見せてね♡」


黒服の、ベウァー・フランシスというらしい少女。


「その情報を冬蝶風節は持ってる」

「…………!」


「もしそれが気になるなら行ってみるといいよ。……あいつらはアヴァのチンピラだけど、頭は悪くない」


「……分かりました。情報提供、ありがとうございます」

「ん。メルファさんの役に立ったのなら良かった……あ」

「?」



「……気をつけてね」


***


「ほんま、肩の力抜いてもらっても構わへんよー。だってあんたはんは魔法使いなんやから」

「魔法使い……」


「(あ、魔法使いさん!ウチのバカネコ見つけてくれてありがとー!)」

「(まほうつかいさん、火起こしの魔術、おしえてくれてありがとう)」

「(魔法使いさん、投資とか興味ない?えー勿体ない!実質ソンするよ!?)」


アヴァに住んでもう3ヶ月。

運が巡っているのか、私が活躍させて貰える機会が多い気がする。


「お人良しもほどほどにな……怪しいの混ざっとるやん」

「祖父の投資失敗でマツリ家潰れたみたいなものなんですよね」


「そ、そう……」

「アッハッハ絶対やりませんしキレそうでした」


「……投資……ヒッ…………」

「……客人さんやめてください……投資の話は……」

「うぁぁ……怖い…………」


「ごめんなぁ、投資トラウマ持ちがおるんや」

「……(ど、どんな過去が……)」



「まぁええわ。そろそろ本題に入ろか……シロエ!」

「組長!いかがなさいましたか?」


控えていた一人が席で答える。


「なるべく話を聞かれたくない。メルファはんと二人にしてくれや」

「はい組長、お気をつけて……貴方たち、組長の指示です!退出して下さい!」

「はい!!!イエスマム!!!」


ダダダダダダ……



「……(兵隊みたい……)」


「すまんのう、騒がしいやろ」

「いえいえ。私は全然」


「では、本題と行きましょう」

「!?」

「あぁ、どうかお気になさらないでください。私、仕事モードは敬語と決めていまして」

「あぁ……なるほど……」


「ではメルファさん、これをご覧下さい」


【機密】と、印が押された書類を受け取った。


「レギーナさん、これは……」

「それはアヴァ地方での『スキル暴走』の事件について、私が個人的に纏めたものです。混乱や悪用が予想されるため、世間には未公表の機密文書になります」



「…………死者……三名……」

「はい。既に死亡者が数名、更に生存する被害者の殆どは意識不明魔術反応消失などの重症を負っています」


「……っ」

「冬蝶風節はこの犯人を追っています」


「……失礼ですが、何故…………?」



「責任です。私らは、過ちの責任を取らなければならないのです」

「……」


「今はそうとしか表現できません。申し訳ない」

「いえ……やっぱり何にでも事情はありますよ」


「…………少なくとも……今は……」


「……そうですか。しかしなるほど、だから私を……」

「はい。そしてメルファさん……この事件に関して、犯人の情報をお集めになっているそうですね?」


「はい。魔法の悪用は、見過ごせません」

「そして貴方は実際に人を救った。その理念……敬服に致します。メルファさんにお越し頂いたのは、この解決への協力を要請する為です」


「……!ぜひ!」





「…………そな簡単に承諾するとは。やっぱ人が良すぎや。お人好し過ぎてな……くくふ、ウチらヤクザやで?」



「!……けど、それは……」


「けど?」


「信頼したい」


「……少なくとも、先に貴方を信じたいんです」

「それはまた、どうして?」



「……あなたは、責任を取ると言った」


「……その言葉の重さを私は信用したい。……そう断言できる人を、私は先に信頼したい」




「……ふふふ。将来投資とかで騙されんといてな?」

「……うっ…………」


「……けど……ありがとな。魔法使いはん」



「……(顔つきがまた、元に戻った……)」


「……この一連の事件の解決は、貴方の意思にかかっていると形容していい。これは不気味であり、不可解であり、しかし現実に実害を伴う怪現象です。警察、軍、ジグラット、全てがこれに対応していますが、犯人について何一つ手掛かりを掴めていない……しかし」


「?」

「私達はそれについて、一つだけ決定的な情報を得ています」


「!それは……一体……?」

「……すみませんが、私共からは、簡単には口にすることが出来ない情報です」


「……(私共……から?)」


「貴方の正義を存ずる、その上でお聞きしたいことがあります。最後に、どうか無礼をご容赦下さい」


「(息を、のんだ)」


「……あなたは、人の希望を潰す覚悟はありますか」


「…………!?」


「……そして……」


「……アイドルのプロデューサー(人の希望を作る者)になる覚悟は、ありますか」


「……………………」

「……………………」

「………………………………」


To be continued

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