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【メイドアチートスキル】貴族学園の落ちこぼれている天然少女はレジェンドだった〜追放されたら魔法使い、ないし冒険者の王女〜  作者: 猫村有栖
『竜化少女「マリア・ノバラ」救出特殊作戦』.ep2〜即席の仲間達と暴走する少女を救出する〜
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第七話 人間、コンピューター


***


「ああ。援軍だ!あと五分以内に頼む!!」

「だ、大丈夫ですけどお……アキラさぁん……」

「どうした、早くしてくれナザリー!これ以上待てんのだ!!洞窟の入り口で待ってるからな!!」


女を捲し立てる声のすぐあとに、携帯から「ぶつ」と音が聞こえて通信が切れる。


「軍を好き勝手に動かして上官に怒られるのはあたしなんですけどぉ……分かっていただけてるんでしょうか……あの人……」


***


メルファは考えた。

敵勢力には地下に襲来した人間一名と、『通信妨害を行った』地上にいる人間数名がいるはずだと。


通信妨害……それがどこから発せられたものなのか。


「逆探知すれば……手がかりが掴めるかもしれない」


メルファのスキルはそれを可能にする。

例えすぐ全体が解けてしまいそうな糸だとしても……それを手繰り寄せることができる。


【コンセントレイト】


実際のところはただ魔術の能力を向上させているだけのスキルだ。しかし異常なのはこの向上する程度。人間の限界の臨界点まで容易く達してその状態を維持させてしまう。


メルファは杖を手にして唱える。


「……【コンセントレイト】」


魔力を弾丸のように発射させることも、

結界を破ることも、

ほんの微々たる信号の発信源を特定することも、


人間にとっては可能だが不可能なことだ。

それを可能にできるのは、もはや魔法使い以外にない。


「見つけた、発信源はここだ……」


【コンセントレイト】で見つけたのは旧科学技術による簡易無線局。洞窟付近の森の中に潜伏していたのを発見したのだ。【コンセントレイト】を通して見えたのは……


「見つけた、カレン・ノバラ…………!!」


それに加えて……少女一名。


「……………………!?」


逆探知に気がついたその女……カレンは目を見開いた。カレンの目の前にある数台のモニターは全て赤いランプを発している。


……ありえない。


マリア・ノバラの母……カレンはそう動揺するばかりだった。



***


「カレンちゃあん、これはハッキング?」


その黒服の少女は面白い出来事が起こったと言うように笑う。


「笑いごとではありません。……ありえない。一体どうやってこんなことを……」

「あーあ。コンピュータの制御権までぜーんぶ一瞬で奪われてるよ?あと記録してた『ラビュリントスの弱点』まで……けど……ふふふ!面白いよこれ!!こんなことができるスペックのパソコンがあるなんて……漫画に出てくる超能力でも使わなきゃできないでしょ!」

「ありえないあり得ない有り得ない……だってこの結果は、『預言者』の『運命』の注釈の範囲を明確に超えている……」


「……って、カレンちゃんはパニック状態かあ……残念。ここは無線局ほおって、カレンちゃん連れて撤退しなきゃあの口うるさいドクターに怒られちゃう。だから……」


その黒服の少女は全てを知っているような態度を見せる。


「あ、ハッカーさん。はじめまして〜」

「…………」


「ふふふ〜、結界破りと無線局のハッキング……竜は殺せなかったけど……面白いものを見せてくれてありがと♪」

「な………………!?」


「私の名前はベウァー・フランシス……あなたの勝ちだよ、メルファお姉ちゃん。期待してるよ〜?また面白いものを見せてね♡」


べヴァーと名乗った少女はカメラを通して自分を見ていたメルファに向け、手を振り微笑む。


まるでその碧眼の目がきらりと光を呑んでいるようだ。

その黒服は、カレンと共に闇に飲まれて消えた。


そうしてもう無線局には、人ひとりいなくなった。


***


「……ワトソンさん!ワトソンさん!」

「メ、メルファさん……通信は繋がってるよ。だからそんなに大きな声を出さないで……」

「ごめんなさい。けど繋がって良かった……これで最後の作戦が実行できます!」


忘れてはならないことがある。


この状況で最も優先すべきことは少女マリアの処置。

不安定な精神状態にある彼女の精神を安定させること。


その為には私が地下に向かって、私が敵勢力に対処しアーちゃんが治療に集中出来るようにするのが一番良いと思っていたけれど、それは元から不可能だったことが分かった。


この迷宮『ラビュリントス』の中枢、アーちゃんの待つ地下まで短時間辿り着く方法……それは『存在しない』ことが分かった。


しかし目的を達成するための手段は……まだある。



幸いにもワトソンさんとメリルはあの空間から逃げられていたらしい。それは私にとって大きな幸運だった。


「…………メルファさん」

「メリルさん?」


通信機器を通して聞こえるメリルさんは暗い口調だった。

先とは随分と異なっている。


……何か、彼女の本質に迫るようなそんな声色。


「……あんたは、親友を救う為に頑張れるんですね」

「?誰だってそうじゃないですか?」

「それを放棄するひとでなしも、たまにいるんですよ」

「………………?」


「…………けど、まだ頑張ってみようと思います。……すみません!」

「………………」


「さて!メルファさん!私達は何をやれば良いんでしょ?」

「あ、はい。では先ずは私との合流をお願いできますか?」

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