6.もう少しテンプレと非テンプレの比較をやってみる
何か、急にポイントが増えると逆に不安になります。
ともあれ、評判が良くて困る事も無い。ポイントが~などと言いつつ、あれば嬉しくなるのも作者のサガである。ともあれ本編も読んで欲しい、いやマジで。
それはともかく「テンプレなろう」の批判やら、レビューと言った類はよく見かける。……主に、どれだけ酷いかと言う話が大半なのだが。
そして「小説家になろう!」で初めて文章に触れた、と言う人も居ると思う。
こちとら、70年代SFからこっちずーっと読みふけっている、人生の先輩と言っても良い年頃だ。「文字に溺れる」のが好きな性分なのだ。
そんな私が、多少なりとも『小説の書き方』を教えられるだろうか。……そういう機会ってあんまり無いですしね。それも良いかもしれません。
どうなんでしょう? 前回やった同じ主題で「テンプレ」とそうでないストーリーの考え方って、需要有るのでしょうか。人生初なろうという方がいれば、創作の参考になるかとは思います。
……という訳で、あまり得意では無いですが「テンプレ」っぽい物をそうでない作り方と比較してみたいと思います。下手でも許してね。
お題を考えなくては……と思うと悩む。自作の一部を使えば、多少の宣伝にもなる。あまり「テンプレ」とは言い難いが、こういう内容はどうでしょうかね?
「仲良くしていた村が、大国に攻められそうになっている。主人公は村の会議が紛糾しているのを見て、立ち向かうように説得する」と言うエピソード。
……主人公が自主的に動く、と言うのはなろう的に結構レアかもしれない。ただ、後述の理由で様々な創作物に「あるある」な展開では? と思ったので。
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私は、村の会議にオブザーバーとして参加した。大国との国境には、今か今かと準備をする兵隊がちらほらと見える。
……まずい。このまま準備もせずに雪崩れ込まれたら、この村は終わってしまうのだ。
だというのに、会議は思うように纏まらない。逃げ出そうと主張する者もいれば、抵抗せずに降伏すべきと言う意見もある。
相手の兵数はそこまで多くない。徹底抗戦で粘れば、相手の兵站が尽きるのではないだろうか。
……多少の犠牲を出してでも、村を守らなくては。そう思えば思う程、気ばかりが焦る。
「お願いします、勇気を持って立ち向かってください! この村を守りましょう。大国に降伏したって、何処でのたれ死ぬかもわからないんですよ。皆で協力すれば、きっと勝てます!」
「お嬢さん、ワシらにも事情がある。……抵抗して殺されたりすれば、村での生活も出来ん。諦めるしか無いんじゃ」
村長さんの言う事も間違ってはいない……。でも、そうやって諦めてそれからどうするの?
「皆さん! 遊牧民の誇りは無いんですか? 相手の言いなりになって、先祖や子供達に胸を張って生きられるんですか?」
「それは……」
「今やらないで、どうするんですか! 最後まで諦めないで、戦いましょう! 私達も協力します」
私は根気強く説得を続けた。相手の戦力や弱点も説明した。
逃げた先で安全に暮らせる保証も無い事。何より、この村が無くなってしまう事がどんなに悲しい事か。
……やがて、一人また一人と私の意見を聞いてくれた。
あの村長でさえ、この先どうするかきちんと向き合うと思い直してくれた。
そうだ、私達には負けられない理由がある! どんな困難でも逃げちゃいけないんだ。
何時しか、村の皆は大国に立ち向かう覚悟を決めた。それぞれ弓矢や馬を用意して迎撃しよう、と言う意見で村の皆が団結した。
かつてこの大陸を支配した誇りある騎馬軍団が、時代を超えて復活したのだ。
これなら、大丈夫だ。きっと勝てる!
……私達は、皆を先導しながら大国との決戦に参加する事になったのだ。
結果的に、先手を潰された大国は慌てて逃げだす事になり、この村の平和は守られたのだった。
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あまり上手く纏まりませんでしたが、こんな感じでしょうか。
主人公の必死の説得で、村が一丸となって立ち上がる。盛り上がるシーンです。
一見、普通じゃないの? と思うかもしれません。
……考えても見て下さいよ。主人公のポジション、お前は何様だよと。
いわゆる「主人公を活躍させたくなる病」です。有名作品と言えど、結構やってしまう奴ですね。主に大河ドラマとかで多いです。
何故に、主人公が遊牧民の誇りを語るのかと……。
要するに「主人公凄い!」と持ち上げる為に、無理矢理に村の代表になったかの様に語りだす。
ちょっとおかしいですよね。確かに主人公の演説は、勇ましくて格好良く見えます。でも、ちょっと考えるとただの部外者が何言ってんだ? と言う見方も出来ます。
こういうシーンを書きたいのなら、もう少しひねりが必要だという事。そして何より『勿体ない』のです。
今の内容で村長を見て、どう思います? どう考えても「モブ」ですよね……。
『かつて大陸を支配した騎馬民族の末裔の村長』ですよ。物語の登場人物として、最適じゃないですか!
……実際、本編では初期に登場してからずっと良い存在感を発揮して、最終盤まで主人公の良い理解者として、また騎馬軍団を率いて最終戦争まで頑張ってくれるキャラクターになりました。
「テンプレなろう作品」に良くある「主人公無双」の弊害、それは脇役キャラクターの不在です。
実際問題、多くの作品で主人公が何でも解決してしまうため、他の登場人物がモブに成り下がる事が多々あります。
個性の無いサブキャラクターのなんと多い事か。それもこれも「俺Tueeee!」をやり過ぎた結果なのです。自分の作ったキャラが好きな気持ちは分かります。
……ですが、これまた「テンプレなろう」がウンザリとする原因なのですよ。
本来、物語と言うのは主人公一人で成り立つ物ではありません。どんなにチートな能力を持っていても、専門家にはなれないし、なる必要も無い。
そう言うのは、仲間がやれば良いんです。そうして、ここのキャラクターの個性が生まれる事で物語に幅が出来るんです。
「自分一人では何もできない。だけど、皆がいれば何だって出来る!」って言うシチュエーションって、燃えません?
……これって、有名な作品ですらやってしまう間違いですからね。
という事で、それを改善したらこうなります。
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私は、村の会議にオブザーバーとして参加した。大国との国境には、今か今かと準備をする兵隊がちらほらと見える。
……まずい。このまま準備もせずに雪崩れ込まれたら、この村は終わってしまうのだ。
だというのに、会議は思うように纏まらない。逃げ出そうと主張する者もいれば、抵抗せずに降伏すべきと言う意見もある。
相手の兵数はそこまで多くない。徹底抗戦で粘れば、相手の兵站が尽きるのではないだろうか。
……多少の犠牲を出してでも、村を守らなくては。そう思えば思う程、気ばかりが焦る。
「お願いします、勇気を持って立ち向かってください! この村を守りましょう。大国に降伏したって、何処でのたれ死ぬかもわからないんですよ。皆で協力すれば、きっと勝てます!」
「お嬢さん、ワシらにも事情がある。……抵抗して殺されたりすれば、村での生活も出来ん。諦めるしか無いんじゃ」
村長さんの言う事も間違ってはいない……。でも、そうやって諦めたら……。
「ねえ、お爺さん。私、この村が好き。『自分の家と思って帰って来い』って言われて、凄く嬉しかった……」
「……お嬢」
「ここで逃げたら、私の帰る場所が無くなるわ! そんなの嫌、もっと皆と一緒に居たいの……」
私は、堪らず涙が止まらなくなった。我儘だとは分かっている。だけど……。
それを止める様に、お爺さんは叫んだ。
「……皆の衆! 我らはかつてこの大陸を支配した誇りある騎馬民族の末裔ぞ! このまま、父祖や子供らにその誇りを語る事は出来るのか?」
「お爺さん……」もう、臆病で人が良いだけの老人はいなかった。
そこには、偉大なる一族の指導者が誕生したのだ。
「奴らなど、我々が力を合わせれば撃退する事が出来る! 立て、我が同胞よ! かつての帝国の恐ろしさを奴らに思い知らせてやるのだ!」
一人、また一人と高らかに声を上げて、その演説に答える。そして村の皆は、かつての精強なる騎馬民族の誇りを取り戻したのだ!
これなら、大丈夫だ。きっと勝てる!
……私達は、彼らが戦場に赴くのを見送り、その勝利を確信した。
結果的に、先手を潰された大国は慌てて逃げだす事になり、この村の平和は守られたのだった。
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どうでしょうか。村長のキャラは生きていないでしょうか? 覚悟を決めて困難に立ち向かう勇敢な指導者になると思いませんか。
キャラクターの設定は大事です。どういう行動をするか、どんな性格なのか。それを決めるのも必要です。
……ですが、その設定を生かすのはストーリーなのです。
ただ設定しただけでは意味が無い。きちんと物語の中で昇華して、初めてキャラクターは生き生きと活動します。……作者の操るお人形では無いのです。
物語と言うのは、ゲームのイベントではありません。ましてや、作者の気持ちを良くさせる為でもありません。
脇役であるキャラクターもちゃんと描写し、活躍させるエピソードを描写する事で「テンプレなろう」では出来ない、メリットが生まれるのだと思うのです。
いかがだったでしょうか。次回は、ストーリー構成について投稿しようと思います。
では、皆さんの良き作家ライフの参考になれば幸いです。
ああ、プロット状態でストーリーを描くの楽だわ。
……本来なら、もっと書き込む内容なのですよ。
あまり、長くなっても分かりづらいですし。