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2.神様の耐えられない存在感の薄さ

 テンプレなろうの小説は多い。……何を読んでも個性が感じられず、ウンザリとする。


 どの辺りがそう思わせるのか、幾つか要点を上げて考えてみよう。


 良くあるものと言うと『神様』と『スキル』になるのではないだろうか。


 基本的な話の導入部分だから、といい加減な感じで扱ってしまう事も多いのではないだろうか?


 1.神様の手違いで主人公が死亡してしまい、生き返らせる事は出来ないが異世界に転生させる+特殊なスキルも渡してくるパターン。


 2.その世界で15歳になると、神様からスキルを与えられる。教会などが鑑定して、見た事も無いスキルが与えられて……。


 と言うのが基本パターンだと思う。特殊な例だと、定期的に神様に会える、もしくは下界に降りて来た女神様がヒロインになる、と言うのもあるだろう。


 個人的にこの段階で気になるのは、神様の扱いである。神様と言うからにはその世界を含む多数の世界の創造主もしくは管理者なのではなかろうか。


 下っ端の女神様と言うバリエーションもあるが、ともかく何かしら力を持っている、と言うスタンスである。一方で教会があり、神官達がいる以上は宗教として敬われている筈なのだ。


 ……だと言うに、その世界での神様の扱いの酷い事。宗教という事は、基本的な世界の価値観を共有していないといけないのに。具体的に神様をその世界の住人がどうとも思っていない事。


 テンプレなろうにおける神様とは、いわゆる『都合の良い存在』すなわち作者本人の意思である事が多い。


 でなければ、「勇者」だの「剣聖」といった重要な職業や特殊なスキルを与えすぎだと思う。あまつさえ、誤解を招くようなユニークスキルなんて問題しか起こさない物を与えるなよ! と言う感じ。


 そこはストーリーの導入部分だから、と言うのは思考停止では無いだろうか?


 少なくとも、「これがなろう系でございます」と言う風潮の原因なのではなかろうか。


 要するに「デリケートな部分に無頓着すぎる!」もっと考えて下さい、という反応になる。



 神様とスキル。どちらも「なろう系」では、ストーリーの根幹になる筈なのに都合の良すぎる解釈のせいで、それに集中出来ない……。いかにも作者の「ぼくのかんがえたさいこうにおもしろいおはなし」を見せられるだけ、と感じてしまうのは自分だけだろうか?


 自分も神様をテーマに色々と物語を動かしたりする。だがそれは、あくまでも『超越者』であってそこら辺の人間と同じような思考はさせない。


 だって、神様ですよ! あっちから見たら人間なんて蟻んこ同然ですよ。個体の区別が付くとも思えないのだ。それこそ、世界中の人間を見ていないといけないのに、主人公だけに忖度する神様なんて興が削がれる。


 あくまでも、神様は手の届かない存在であって特殊な理由無しには決して介入しない、位の理知的な行動を見せて貰いたいものだ。


 神様が「宇宙人」で、異世界への転生を「アブダクション」、チートスキルを「変な機械を体内に埋め込む」に変換した方が、逆に説得力が増すケースさえ存在する。話の流れが、それほど強引過ぎるという事だろう。


 何にせよ、簡単にミスをするような神様に威厳は無いし、人間世界に興味津々な女神様も必要ないのだ。妙に俗っぽい行為にしか感じられない。


 ……むしろ、何で「元の世界に戻せない」って決まって言うのか。神様なのに出来ないの? もしかして、自分の管轄外の世界から魂を横取りしただけで、元の世界に対する権限なんて持っていないのでは? 要するに「そいつ、邪神じゃね?」とさえ思えるのだ。



 スキルや職業を与える神様も同様だ。……その世界では、スキルや職業を持っていないと人として扱われない事が多い。……ましてや努力で魔法を覚えようとするのが無駄だったり、神様から与えられた職業に就かないという選択肢も無い。


 現代の世界観からすると、随分とディストピアめいた感じがする。


 ……とにかく、酷く歪んだ世界観だと思う。恐らく、追放系の為に無理矢理に理屈をこね回しているからだろう。そこに矛盾が浮かび上がる事も多い。


 神様的には、主人公を優遇する為の処置なのだろうが、周囲の人間にとっては迷惑でしかない。


 順当に親と同じスキルや職業を望んでいるのに、意味の分からない特殊なスキルのせいで追放される。


 ……良くある展開である。そして、その無理のせいでうんざりする部分でもある。


 だって、物語の根幹部分なのだ。……主人公サイドを貶めたり、持ち上げたりするための「作者の都合」が満載になっているのを見て、良い気持ちはしない。


 そう言うのを見る度、「流石に、もうちょっと考えてから書こうね」と言う気持ちにさせる。



 どちらにせよ、その後のストーリーに無理なく進める為の「テンプレなろう」の筈なのに、それが障害となってストーリーに矛盾を孕む、と言う構造はその作者の力量不足である。


 どうやったって不自然な状況と説明にこちらの頭がついていけない。本来なら「複雑な設定を書かなくても良い」というなろう系のメリットを殺している。


 ……結論として、作者が「テンプレなろう」の実態を把握せず、他の作品の真似しかしていないから、ではないだろうか? 


 本来なら、矛盾や違和感のない様に登場人物の台詞や世界観を考える必要のある部分なのだ。


 それらを無視して「ナーロッパ」と言う固定の世界観を共有する事が出来る仕組み。ただそれだけの事の筈である。


 何も考えていないから、変な行動をする神様や登場人物が出てくる。いかにも不自然な話の流れで主人公が追放されたり、迫害を受けたりする。


 その辺りが良く設定されている作品も少なくはない。……もちろん、ごくわずかだが。そういう作品はサクッと読み進める事が出来る。


 ……メリットがあるのだ。初期設定を物語の初めに入れてしまう作者は少なくない。それが無くても良いというのは、実際読みやすい。


 つまり、その「ナーロッパ」と言い張る世界観が、本当に正しく機能しているか? と言う疑問になる。


 「テンプレなろう」自体には、問題は無いと思う。Web公開と言う縛りの中で生み出された、世界観説明を不要にする書式、だと考えている。


 一般の読者がウンザリしてしまうのは、表面上は「テンプレなろう」であっても世界観の矛盾やら違和感やらを浮かび上がらせるケースの方が多数だからではないだろうか。


 とにかく、神様を出すのなら何のために主人公に接触して、何をさせようというのか。そう言う背景位は頭に入れておいて欲しいと思う。一番大事な世界観を他人の作品の真似にするのは論外だ。


 正直、神様=作者の都合 と言う関係性が見え隠れする作品は、もう読みたくないのです。

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