■ 小山内珠夫は結局、誰を選んだ?
「〔・・・・・・――――なんだよぉ、それぇ! まぁ、オイラはそんなこったろうと思ったぜぇー〕」
妙に鼻につく言い方だな、ゲンタの野郎。まったく。他人事だと思って面白がってやがるな。普通に話している感じだが、電話越しにも笑いを堪えてるのがわかりやがる。くそったれいっ。
・・・・・・ちーん
「〔ん? おぉーい、タマオ! レンジが鳴ったぜぇー。どうせ今日も、肉の弁当かぁ?〕」
うるせぇ、ほっとけ。知ってるくせに。「牛とろとろこってりジャンボハンバーグ弁当」だ。こうなりゃ、食える時に食うだけ食ってやるぜ、ちくしょうめ。
「〔んで? もう一回聞かせろよぉ。いったい、誰がどういうことになったんだよー?〕」
くそったれめ。今日は大学に行こうとしたが、やめだ。このまま、家で酒飲んでゲームやって、気分を晴らすことにするぜ。まったく、何だったんだちくしょう。
俺はあれから、「告白の一週間」だったんだ。
人生で初めてだ、こんなことは。
この小山内珠夫の人生始まって最初で最後かもしれねぇ告白ラッシュ。
良い経験だったぜ、ちくしょう。
「〔風呂屋のながねぎ娘は、どうだったんだって?〕」
ながねぎじゃねぇ。なぎなただ。くそぉ、コーヒー牛乳パワーで、絶対いけると思ったんだが。
《 タマオさんの顔が面白いから、緊張ほぐしにするって意味だけだったとよ? ごめんっちゃ! 》
俺を想って、じゃなかったんだ。俺は緊張を解くための人形に過ぎなかったのさ。
「〔ヒョーイ! んで? 木森亜樹にも告る強メンタルなタマオ。何て言われたんだぁ?〕」
何が強メンタルだ。今すぐにでも豆腐メンタルになりそうだぜ。あの飲み物はうまかったな。
《 丸さがメロンみたいだから、そんな気分になったんかな? 付き合うのは無理! ごめーん 》
だからメロンみるくオーレだったのかよ。くそぉ、いっそ、鶏ガラみたく痩せちまおうかな。
「〔さすがに、あの学生アイドルは無理だぜーぇ! んで? 東帝大の子とはどうなったんだぁ?〕」
絶対に面白がってやがるだろ、ゲンタのアホめが。東帝大は、恋でも最難関だったんだろうな。
《 好感は持てるけど好意は寄せてないですね。ごめん、それ以上でもそれ以下でもないのよー 》
そう言われちゃ、もう、どうしようもねぇ。「4じ」の答えがやっと昨日わかったってのによぉ。
「〔それで? 訛ってるスキップの子には、何て言われたって? もう一度聞かせてくれぇ〕」
なにがもう一度だ。慰めてくれと言われたから、人生ずっと慰めてやる気だったのにぃ。
《 え! ウチ、んなこと言った記憶、まーったくなかっぺ! 覚えてねーし、無理だっぺ! 》
記憶にすらねぇときたもんだ。残念極まりなかったぜ。今の俺はスキップもできねぇかも。
「〔一番だせぇぜぇ! ま、忘れちめぇ! んで? 弁当屋の子とは、どんなだったぁ?〕」
うるせぇなぁ。しばらく、カロリーの低い弁当しか食えなさそうだぜ、俺。
《 え! こ、困っちゃうな。・・・・・・ご、ごめんなさい。無理です。でも、お弁当は買いに来てほしい 》
弁当は美味いが、なんだか気まずい感じになりそうだ。いや、まずくなっちゃだめだな。
「〔弁当ばっか食うなよなぁ? んで? どっかの旧家のお嬢様だかは、どうしたって?〕」
お嬢様とサンダル履きの俺とじゃ、世界は違ったんだ。ま、ゲンタにも縁の無い子だろうがな。
《 も、申し訳ありません。わたくしは、どうしてもそういう心持ちには、なれなくて・・・・・・ 》
まぁ、いいんだこれで。いつかきっと、良い人に出会えるだろうよ。諦めねぇぞ、俺は。
「〔だいたい、タマオは目移りしすぎだぜぇ? 最初に気に入った子は、どうしたんだよぉ?〕」
おめぇに言われたかねぇやい。七連戦の黒星七連敗。負け越し前の力士的な気分なんだぞ。
《 あたしと付き合いたい? ・・・・・・うーん。タマオは友達かなぁ。・・・・・・またね! じゃ! 》
ミズキちゃんが去っていく時の明るい笑顔が、忘れらんねぇなぁ。
アミカちゃんも、真っ赤に顔を染めて走り去っていったっけな。
カナザワちゃんは、困っちゃうなと言いながら、溜め息ついて店の中へ戻っていった。
カナちゃんなんか、酔って記憶すらないんだから。すげぇ不審がってたっけ。
リンカちゃんはもう、恋するだのしないだのという次元じゃねぇんだわな。
キモリちゃんは体育会系らしく、スパッと言い切った。俺はメロンより生ハムだと思うがな。
マイサちゃんは、俺よりもなぎなたが恋人だろう。俺の今の傷心をぶった切ってほしいぜ。
何にせよ、何だかんだ言っておもしれぇ二週間だったな。
部屋に籠もってまったく面白くもねぇ人生でいるより、何か一つでも、こうした刺激があるのは良いモンなのかもしれねぇ。
まぁ、生きてりゃ何とかなる。この東京にしばらくいりゃ、こんな刺激ある日々がまた味わえるかもしれねぇ。
もう一年、大学生やってみっかな。今年は卒業しなくていい気がしてきたぜ。
・・・・・・ピンポーン
「〔タマオー。玄関の呼び鈴鳴ったんじゃねぇかー? じゃ、オイラはもう、電話切るぜぇー〕」
わかったよ、またな、ゲンタ。・・・・・・さて、誰だこんな時間に。はいよぉ、誰だぁ。
「・・・・・・タマオ? また外に、ゴミがあるんだけど! ・・・・・・あと、バランスよく食べてる?」
こ、この声は。何てこった。俺の家を訪ねてくるのは野郎ばかりだったというのによぉ。
俺は東京理数大学の理学部に通う、タマオってモンだ。
どっかで会ったら、よろしくなっ。
――― ウィーク & ウィーク ―――
~ おわりっ! ~




