■ 日曜日の朝、錦野舞沙とコーヒー牛乳を飲む
買ったばかりのパンツは、なかなかの履き心地だ。腰回りとケツによくフィットしやがるぜ。
そして、朝風呂上がりの一杯がまた、こたえられん。酒じゃねぇぞ。コーヒー牛乳だ。藤の湯に置いてある古ぼけた冷蔵庫にマッチした、厚紙フタのガラスびん。これがいいじゃないか、まったく。
首にはタオル、脇には風呂グッズ。Tシャツ&ハーパン姿で腰に手を当て、がしっと立ったまま一気に飲むんだ。番台横の木製ベンチに座るのは、ちいっと違う。
「あ! タマオさん! 何ね、あなたも同じ時間に入りよったとね? 今出たと?」
おお、九州訛りなマイサちゃんではないか。うーむ、風呂上がりのマイサちゃんは、妙に艶があり色っぽい。だが待て、変なことは考えるな。怒らせたら、なぎなたで斬り刻まれちまうかもよ。
「あ、コーヒー牛乳飲んどると? おいちゃん、アタシも飲みたか。一本もらうとよー」
「あいよぉ。そこに百円入れて、勝手に持ってけやぁ。ビンは決まったとこに置いといてな」
女湯の暖簾がかかる横で、同じような勢いで一気に飲んでやがる。
白いタオルに白いTシャツ、そして黒スパッツ姿、か。このメガネの女子大生がなぎなた女王だと知る客は、この銭湯にどれだけいるのだろうか。
先週、動画サイトで調べたら「九州一の腕前! 錦野舞沙」だの「他校圧倒! 薙刀のマイサ」だの、マイサちゃんの試合動画がゴロゴロ出てきやがった。
こんなに美人で可愛くて良い匂いなのに、その道の世界じゃ、有名な子だとはな。人は見かけによらないもんだぜ。
なぎなた何段かわからんが、俺の腹は四段あるぜ。どっちが上なんだろうな。
「ぷはぁ! うまかとよっ! タマオさんに教えてもらって、感謝ばい!」
良い飲みっぷりだぜ、マイサちゃん。さすが体育会系。清々しささえ感じる飲み方だな。コーヒー牛乳も、さぞ喜んでいることだろう。じゃあ俺も、せっかくだからもう一本飲むとするかな。
「おっ! タマオさん二本目! じゃ、アタシももう一本! これ、本当にうまかっちゃん!」
何てこった。番台を挟んで、まるでコーヒー牛乳飲み選手権のようになってるじゃねぇか。他の客も見てやがるぞ。どうするんだマイサちゃん。
「ごきゅ・・・・・・ごきゅ・・・・・・ぷはあっ! あーっ! めっちゃうまかーっ! ありがとさん!」
は、速ぇっ。なんてスピードだ。でも、わざわざ俺が二本目を飲んだら、マイサちゃんも二本目に付き合ってくれるとは。いったい、どういう・・・・・・。
「楽しかね! アタシ、試合で緊張したら、タマオさんの顔を思い出すことにするったい!」
な、なんだと。九州一のなぎなた女王も、全国大会は緊張するのか。でも、俺の顔を思い出すことにするって、それはつまり、俺のことを想って戦ってくると言うことか。これは、脈アリだっ。
どうするんだ。ミズキちゃん、アミカちゃん、カナザワちゃん、カナちゃん、リンカちゃん、キモリちゃん、そしてマイサちゃん。どの子も美人で、みな可愛い。
すまねぇ、みんな。みんなは七人、俺は一人。さぁ、どうする。誰と付き合えば良いんだ。いっそ、全員と付き合いたいくらいだぜ。




