■ 土曜日の早朝、木森亜樹に飲み物もらった
「〔だぁからぁ、マジなんだぜぇー。今すぐ行ってみろよぉ! マジだぜ、マジ!〕」
まだ日の出前に、ゲンタのバカが電話してきやがった。もう、何回「マジ」って言葉を聞いたかわからねぇ。もうわかったよ、マジだって事は。コンビニに行きゃあいいんだろ、行きゃあ。
「〔オイラ、うっかりしてたぜぇ! あの子、実は学生アイドルの木森亜樹だったんだぜぇ!〕」
ゲンタは電話の向こうで勝手に盛り上がってやがるが、俺はどうもアイドルってのは興味が無ぇ。キモリちゃんがアイドルだろうが何だろうが、俺にはコンビニ店員のキモリちゃんだからな。
「いらっしゃいませーぇっ! あ! タマオ社長! おはようございまーすっ!」
やはり、キモリちゃんの挨拶は早朝からシャキっとして、いいな。透き通る明るい声と満面の笑顔が、寝ぼけ眼をバチッと開かせてくれる。
さて、ゲンタとの会話による成り行きで来たのはいいが、特に買いたいモンも無いんだよな。
しょうがねぇから、焼きそばパン四つとスティックサラミ十本、あとはアメリカンドッグ五本でも買って帰るとすっか。
あ、それと、安いパンツも一枚買おう。ケツが破れてフンドシ以下の能力になっちまってるんだ。
「わぁ! タマオ社長、今日もたくさんお買い上げ、ありがとーございまぁす!」
何とも言えぬ、元気な声だ。こりゃあ、アイドルだと言われりゃ、そうかもしれねぇなぁ。
ミズキちゃん、アミカちゃん、カナザワちゃんにカナちゃんにリンカちゃん。俺に気がありそうな脈アリの子たちとは、また違った魅力がありやがる。学生アイドルか。確かにファンも多そうだ。
「ところでタマオ社長? パンにサラミにアメリカンドッグじゃ、喉渇くと思いますけど・・・・・・」
あ、確かに言われりゃ、そうだな。もそもそしたモンばっかり買っちまった。パンはパンでもパンツは食い物じゃねぇしな。しょうがねぇ。また、第三のビールでも何本か買って・・・・・・。
「タマオ社長っ? はい! これ! みんなには、ナイショだよっ? (キラッ☆)」
ぬ、ぬおおっ。なんだこれは。「メロンみるくオーレ」だと。キモリちゃん、こんな飲み物をナイショでくれるなんて嬉しいじゃないか。こういう心遣い、ほっこりしちまうぜ。
しかも、その眩しい笑顔と煌めく瞳が、俺にクリティカルヒットとなっちまった。どうしてくれるんだ、キモリちゃん。
だが、俺だけじゃなく、きっと他の客にも同じように笑顔を振りまいてサービスをしているに違いない。きっとそうだ。
「いいえー。なんか、理由はわかんないけど、タマオ社長だけだよ。ナイショだからね、これ?」
なっ、なにぃ。俺だけなのか。こりゃあ、間違いねぇ。キモリちゃん、あんたはきっと、俺に特別な気があるな。脈アリ間違いなしだろう。
「売れ残りをあげたなんてバレたら、大目玉食らっちゃうから。おねがいネっ? (キラッ☆)」
残り物には福があるのさ、キモリちゃん。その眩しさに、みんな射貫かれてるわけね。きらっ☆




