■ 木曜日の夜、深山花菜がお酒を飲んでた
「おぉ、タマオ君。今日はこんな閉店間際の時間に来るとは、珍しいなぁ」
まぁ、そんなことだってあらぁ。俺はこの「小関酒店」の雰囲気が気に入ってるのさ。
ボロくて小さいが、品揃えは抜群だ。しかも、店内で買った酒が飲めるコーナーがあるんだぜ。店主のオヤジがビールケースを置いといたら、いつしか客がそこで飲むようになったんだとさ。
つーわけで、俺も久々にここで飲んでみっか。可愛い子三人がみな、脈アリなんだ。こいつぁガソリン注入しておかねぇと、俺の方が舞い上がって変な風になっちまいかねないからな。たぶん。
おいオヤジ。俺はこのすげぇ高そうなウィスキーをもらうぜ。いくらだ、これ。
「あー。それは高いよ? いいの? 一本、八千円だけど、キープしちゃう?」
は、八千円。まぁ、いいか。一万円だったら買わないけど、八千円なら俺のサイフのキャパ内だ。
ん。なんか飲み場に他の客がいるじゃんか。どうすっかな。狭いし、家に帰るか。
「んんー? あ。・・・・・・誰かと思ったら、タマオだっぺー。・・・・・・おーい、飲んでけ飲んでけー」
なにっ。あ、よく見たら、カナちゃんじゃねぇか。おいおい、どうしたんだ。そんなにベロベロになってちゃ、スキップするどころじゃねぇだろうな。
「ほっとけーっ! ウチはぁ、飲まなきゃやってらんねぇんだっぺよーっ!」
ご、ご乱心だ。おいオヤジ。このカナちゃんは、いったい、どんだけ飲んでんだよ。
「え? その子、タマオ君のちょっと前に来たばかり。缶ビール一本程度だと思うけど・・・・・・」
な、なにぃ。カナちゃん、ビール一本でお潰れか。酒弱いんじゃ、無理に飲まねぇ方がいいぜ。
「ほっとけ、タマオ! ウチはぁ・・・・・・遊ばれてたんだっぺーっ! わーん!」
ど、どうすればいいんだ。今度は泣き出した。あ、なに笑ってやがんだよオヤジ。助けてくれ。
「聞けぇ、タマオ! ウチは、初めて、ホストくらぶっちゅうとこ行ったんだぁ・・・・・・」
ホ、ホストっつったか今。おいおい、まさか、遊ばれてたっつぅのは・・・・・・。
「そこの野郎に、ウチ、惚れたんだ。『深山花菜か、素敵な名前だね』って笑顔で言われて・・・・・・」
こりゃダメだ。カナちゃんよ、そいつぁホスト接客の、定型文中の定型文だろうが。それだけで惚れちまうなんて、茨城のどんなとこから上京してきたんだ。
ちなみに俺はゲンタとキャバクラに何度も行くが、キャバ嬢に惚れることは無い。あくまでも、あっちは商売としての対応だからなぁ。
「タマオー・・・・・・ウチ、悲しい。・・・・・・なんとかしてよぉ、タマオー・・・・・・。慰めてよぉー」
なっ、なんて破壊力だ。可愛いカナちゃんに涙パワーが加わって、さらに今のセリフ。こ、これは参ったぜ。
どうする。俺にはミズキちゃんにアミカちゃん、そしてカナザワちゃんがいるんだぞ。
「ウチ・・・・・・なんだか、タマオに話してっと、安心すんだー・・・・・・。ね? タマオー・・・・・・」
お、俺の肩を枕にして寝ちまったっ。これは、完全に脈アリな男にしかしないはず。
この俺はスーパーモテ期到来って事か。俺はついに、ホストのレベルを超えたに違いねぇぜ。




