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ウィーク & ウィーク  作者: 糸東 甚九郎(しとう じんくろう)
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■ 俺はタマオ。文句あっか

   ばくばくばく もしゃもしゃ ごくごく ばくんばくん・・・・・・


 俺は東京理数大学とうきょうりすうだいがくの理学部に通う、タマオってモンだ。あ、私大だぜ理数大は。


 東京都京文区(きょうぶんく)にある、汚い四畳半アパートの二階に住んでいる。もう、田舎から出てきて五年。

 適当に過ごしてたら一年留年しちまった。友達はみな、先に卒業しちまったなぁ。俺はまた四年生をもう一年やってんだ。なんてこった、くそったれ。


 金はないし、女はいないし、まともなメシも冷蔵庫に入っちゃいねぇ。近くの弁当屋で好物の「牛肉とんかつ鶏から弁当」を買い、タンクトップにパンツ一丁姿で、こうして窓枠に寄っかかって食うのが、オツってもんだ。一緒に飲むコーラが、また、うめぇ。

 何だかんだで、ここはある意味、「好条件」な立地だ。近所は大学だらけ。しかも、女子大がやたら多くて、目の保養にはいいんだこれが。このアパートは通りからやや奥まってるが、あちこちの大学に通う女子学生が歩くのはよく見える。


 あ、先に言っとくが、別に変態チックなことをしてるわけじゃねぇぞ。

 俺は太ってて眼鏡もかけてるが、それが自分の部屋から女子学生を見ていたからって、別に何の問題もないだろう。

 メシを食った後、俺は必ずここで寄りかかったまま、文庫本を読むのが日課だ。大学には行ってないのかって言われると、ちと、答えるのが面倒だ。

 行ってるよ。ちゃんと行ってる。月に何度かは、な。これでいいだろう。

 大学が近くに多いと言ったが、マジで多いんだこれが。さすが東京だぜ。俺の実家がある栃木とは、大学の密度がまず、違うんだ。ざっと見ても、俺のアパートは六つの大学に囲まれてるぜ。


 国立御湯ノ水女子大学おゆのみずじょしだいがく。まぁ、お嬢様系が通う、頭良い国立大だな。でも、いい女が多いぜ。

 私立女子日本大学しりつじょしにほんだいがく。俺のアパートの、ほんとすぐ近くにあるとこだ。いい女が多いぜ、ここも。

 私立習学院大学しゅうがくいんだいがく。皇族なんかも通う、エリート大学だ。女子顔面偏差値の高いとこだぜ。

 私立習学院女子大学しゅうがくいんじょしだいがく。習学院と何が違うかって言われりゃ、いい女のいる女子大だこっちは。

 私立早稲畑大学(わせはただいがく)。超有名な、東京六大学の一校。もちろん、女のレベルも高いんだぜここは。

 国立東帝大学(とうていだいがく)。誰もが知る、この国トップの大学だ。いい女レベルも、抜群に高そうだぜ。


 まぁ、こんなもんだ。他にもいろいろ大学はあるが、めんどくせぇから割愛させて戴こう。

 俺んちの近くには、弁当屋、銭湯、八百屋に本屋、そしてコンビニがある。どれも歩いて五分以内の距離だ。そんな場所に住んでる俺の、びゅうてぃふるな一週間を、あとで教えてやるぜ。


 そういえば、俺のアパートには、風呂が無ぇんだ。困ったもんだぜ。家賃が月二万円というぶっとんだ安さなのも頷ける。たまに、大して電気を使ってねぇのにブレーカーが落ちやがる。

 そんなボロアパート住まいの俺だが、いたって健康だ。っていうか、健康診断は嫌いだから、大学入ってから行ったことすら無ぇ。わけわかんねぇ理屈かもしれないが、医者の診断さえ下されなきゃずっと「健康」なんだ。へたげに医者に行くから、わけわかんねぇことになっちまうんだ。

 こんな俺は、スーパースペシャルなボディも持ってんだ。

 身長、一八〇センチ。体重、一〇五キロ。

 どうだ、驚いたか。別に、相撲やら柔道やらやってるわけじゃねぇんだぜ。それなのに、このスーパーナチュラルストレートパワーなボディを作れたんだ。弁当と安い第三のビールとコンビニの焼き鳥やホットドックで、格闘家並みのカラダを手に入れた俺を、褒め称えてくれたまえ。

 そういや、俺は田舎からこの東京のど真ん中に出てくるまで、このかた一度も女に恵まれたことは無い。だが、ここに住んでからは違うんだぜ。


   ちーん


 お。レンジが鳴りやがった。コンビニの天丼を二つ、あっためてたんだ。腹が減ってどうしようもねぇ。とにかく、食うぜ。

 天丼には、レモンサイダーが一番だ。なに。美味いわけがねぇだろうって。ふざけんじゃねぇ。俺はいつも、こうしてメシを食ってんだ。文句があるなら、やってみろ。異論は受け付けないけど。


 そういや、一緒に卒業するはずだったが、先に卒業しちまったダチは、公務員なんていうオイシイ仕事に就きやがったんだとよ。今頃、税金由来の大金を毎月もらって、遊びほうけてやがるに違いねぇ。たまには、ここに呼び出してやるとすっか。学生時代を思い出させてやるぜ。

 そうそう。そいつが言ってたっけ。そいつの職場の同期には、可愛い女がいねぇんだとさ。地元の田舎に帰って、田舎の公務員になんかなるからだバカタレが。

 俺は違うぜ。俺はいつか、国を動かすビッグな男になるんだ。いつかなれるはずだけど、とりあえず、明日にまた本気出すことにするぜ。


 ボロアパートに住みながら、俺が毎日生きている中で目星を付けた女が、七人いるんだ。

 やることも無ぇから、とりあえず、その女たちについて話しながら、ビールでも飲むとするか。あ、そういや俺は、めっちゃ飲むぜ。どうせ嫁にするなら、一緒に飲んで楽しい女で可愛くて頭が良くて金持っててメシ作りが上手くて、あとは適当に人付き合いのできるやつなら、誰だってオッケーだ。世の中の女諸君、タマオをぜひとも、マークすべし。そうだろう。


 じゃ、さっき言った俺のびゅうてぃふるな一週間を、話してやるとすっか。聞いて驚けよ。目星を付けた女が、どんな七人なのかをな。このタマオの目に、狂いは無ぇ。留年デブの名にかけて。



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― 新着の感想 ―
うおっ!? 一人称文体で会話もなくこれだけ書くの!? これを続けるのは大変そうだ…………。 とりあえず、国を動かすビッグな男は…………難しいんじゃないかなあ?
[良い点]  ひらきなおりっぷりが、いさぎよいですね(笑)  私も、恋愛脳なので、ひとのことは言えませんが。……はい、もてた試しないですけど(苦笑) [一言]  何気に、私大にコンプレックスありそう…
[一言] な、なんだこいつは!? 文句ありまくりだwww
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