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21限目・・・幸一の過去(その2)

お、遅くなりました……。何回も書き直ししてたらこんなに遅くなった……。

ー作者視点ー

そこは荒れ果てていた。緑はなく、水は枯れ、空は暗い。


そんな場所で人々は争っていた。わずかな水と食料を求め、殺しあっていた。


それを5歳くらいの少年は丘の上から悲しそうに見ていた。


「ハンス」


その隣にいた大柄な男が少年の名前を呼んだ。その声は太く、威厳のあるものだった。


「……認めたくないが、これがこの国……いや、この世界の現状だ」


男は悲しそうに言った。ハンスは目をそらしながら聞いていた。


「……この国の王として、これほど悲しいものはない」


「…………………」


ハンスは何も言わなかった。王は構わず続けた。


「出来るなら自分のこの手でこの世界を救いたい。……だが、王となった今の私ではなにも出来ない」


王は辛そうに顔を伏せる。ハンスは王の気持ちが分かっていた。分かっていたからこの全てから逃げ出したい衝動を懸命に抑えていた。


「だから、この世界を救えるのはお前だけなんだ、ハンス……」


王はまだ低いハンスの目線に合うよう、かがんで言った。その真剣な眼差しの中に、何も出来ない自分自身への怒りと、こんな小さな子供に全てを任せるという不甲斐なさを後悔が見てとれた。


ハンスはその眼を見て、そして今まで決めかねていたことを決意した。


「……分かりました。地球へ……行けばいいんですね」


「…………ハンス、すまないっ……」


「…………お父様……」


王はついに泣き崩れた。限界だった。自らの息子をどんな世界かも分からない、もしかしたらこの世界より危険かもしれない地に送らなければならない悲しみは相当なものだったのだろう。


そんな自分の父の姿を見て、ハンスも泣いた。

ハンスもまた、限界だった。5歳でありながら、自分がこれからしなくてはいけないことの重大さを理解していた。だからこそ、5歳というまだ未熟な精神ではそのプレッシャーに耐えられなかった。


…………ハンスがこれから行い、この世界の人々を救う方法、それは―――――――――――――










―――――――――――――――地球に存在する人間を滅ぼし、この世界の人々を移民させること、だった。


そもそも、なぜこんな世界になったのか。もともと、この世界、魔界は緑豊かな世界と言うわけではなかった。それでも、人々の表情は明るく、日々を懸命に生きていた。


……しかしある日、空から突然隕石が降ってきた。その大きさは、魔界の十分の一もの大きさで、まだこの世界が存在していることは奇跡だった。


だが、この隕石は魔界に存在する全ての生き物に影響を与えた。少なからず存在していた緑は完全になくなり、今まで青かった空も粉塵により完全に黒くなり、水は枯れ、動物たちも死滅していった。


もちろん、人間たちにも影響があった。人々の顔から笑顔はなくなり、毎日のように争いの絶えない世界になってしまったのだった。







「では、行ってきます」


「……気をつけるのよ」


次の日、早くもハンスは地球へ行くことになった。行くならば早く地球をこっちのものにしたほうがいいと、議会で決まり、今日になった。


なぜ、ハンスだけが行くというのは、地球へと行ける道は、代々、王子にしか使えないものだからだった。他の者も行くとなると大量に魔力を消費してしまい、もしかしたらハンスが死んでしまう可能性もあった。だから、ハンスの弟である、ランスがこの術を使えるようになるまで、ハンスが人間を滅ぼす、ということが議会で決まったからだった。


ランスがこの術が使えるようになれば、魔界と地球から同時に使い、大量の人が移動できるようになるということを知り、議会はこんな方法を提案し、決定したのだった。

もちろん、王と、王妃は反対したが、議会は王の権力より強く、功をなさなかった。

結果、ハンスが単身地球へと攻め込むことになってしまったのだった。


「……頑張るんだぞ」


「……はい」


正直、行きたくなかった。自分の親と、しばらくとは言え、離れるのも嫌だったが、そもそものこの方法自体も嫌だった。


この方法をとらねばこの世界がいずれ滅ぶことは確実だったが、他の世界で平和に暮らしている者たちを皆殺しにする、ということに納得をしていなかった。

が、所詮5歳の子供であるハンスの意見が通るとは到底思えなかった。


「無事に……帰ってきてね」


そういう母の手の中には今年4歳になるランスがすやすやと眠っていた。


ハンスはランスが羨ましかった。自分が弟だったらいいのに……と思ったりもした。


しかし、そんなことを考えても仕方ないので、考えることをやめ、目の前の空間に穴を開ける。


「……行ってきます」


最後に両親にそう言い残し、ハンスは穴の中に入った。そしてその数秒後、穴は消えた。


「……うっ、……うう、なんで、……な、なんであの子が……」


「…………仕方ないさ、無事に帰ることを祈ろう」


そして両親はその場にその場に膝を着き、すでにこの荒れた世界から逃げでしたであろう神に祈りを捧げた……。

21話です。サブタイ、変更しようかな……。

幸一君の過去まだまだ続きます。

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