20限目・・・幸一の過去(その1)
ー正樹視点ー
「で、どういうことなんだ?」
俺は思い切って幸一に聞いてみた。あのエフレムって奴と幸一は兄弟らしい。絶対なにかある。
「………………」
「……だんまり?私たちに話せないってこと?」
玲奈がしびれを切らし、口を開いた。その言葉にははっきりと棘がある言い方だった。
「そうよね?だってそんな大事なことを話せないくらい信用ないもんね私ら」
「おい、玲奈!それは言い過ぎ……」
「どこがよ!だって言ってくれなかったじゃない!それって私たちの信用がないってことじゃないの!?」
玲奈のあまりの剣幕に思わず口が閉じてしまった。確かに、玲奈の言うことにも一理ある。あるが、幸一の気持ちも少しは察して欲しかった。目の前で好きな人が攫われたんだ。その気持ちは、想像を絶するだろう。
「違う、そんなんじゃない」
幸一が、やっと口を開いた。ただ、その顔は暗く、いつもの余裕そうな感じは全くなかった。
「なにがそんなんじゃないの!?言ってみなさいよ!」
なおも、玲奈はものすごい剣幕で幸一に迫る。
「……出来ることなら一生話したくなかった。思い出したくなかった。でも……もう駄目だな」
幸一は覚悟した顔で、俺たちにというより、一人言のように呟いた。玲奈も、そんな幸一を見て落ち着いたようだった。そりゃそうだろうな。……こんな幸一、見たことない。
「分かった、俺の過去を全部話す。ただし、今から話すことは全部本当のことだ。信じてくれ」
「……分かった」
「……うん」
俺らの了解の言葉を受け取り、幸一は一呼吸置いて語り始めた――――――――――。
20話終了です。今回は笑える場所が一つもない!こんなの初めてだ……。
まぁシリアスなんだから当然っちゃ当然なんだけど。
今回めちゃめちゃ短いのはサブタイトルの幸一の過去のプロローグみたいなものだからです。まぁあんまり期待しないでください。
ではでは~。