放課後組〜中学生になりました〜 一話、二話
初めましての人は初めまして!乃多留夢です!
すっかり夏になりました。学生の皆さんは夏休みを満喫している頃でしょう。
しかし!そんな夏休み、「自由だー!」と思っていても、「自由過ぎてやることがない!」なんてこともあるかもしれません。
そこで、暇つぶしや空いた時間にサラッと読める短めのお話を用意しました!まぁ、放課後組の続編を書いたのを読んで欲しかっただけなんですけどね!!
夏休み投稿で投稿する放課後組は、全部で十一話までです!
毎週金曜日の六時ごろに、二、三話ずつ投稿する予定です。お楽しみに…してもらえると嬉しい。
そしてそして!!今回は放課後組だけではありませんっ!
そりゃそうですよね。どんだけ放課後組推してんですかって話ですよ。
この夏休み投稿で、『願い』というお話も載せようかなーなんて思ってます。
これは、『寿命』などが関わっており、ちょっと重い話かもしれないので、そういったものが苦手な人は読まない方がいいかもしれません…。
でも、楽しみにしていただければと思います!
それでは、長くなってしまって申し訳ありません。どうぞ、本編にお進みください!
一 中学生になりました
ついに、この日がやってきてしまった…。
本日、俺、ヨツギが向かっているのは、小学校ではない。中学校だ。
俺は、一人称が俺であることから、よく「お前男だろ。」的なことを言われるが、一応女子である。
今日は緡甫中学校の入学式がある。四月から中学生となった俺は、のんびりと中学校に向かっていた。まぁ、当たり前だが、中学生になった自覚など一ミリもない。まだまだ小学生気分の俺である。しかし、前までとは違う制服や、前までとは違う通学路に、少し気持ちが変わっているのも確かだった。
学校についた俺は、小学校の時より明らかに広い運動場に出る。そして、そこに張り出されていた、クラスごとに生徒の名前が書かれている紙の中から自分の名前を探す。
「えーっと、俺のクラスは…、あった!三組か。」
自分のクラスを知ることができたので、他の知り合いのクラスを見てみることにした。
「あちゃー、ナギサもタツキもショウもミハルも、みんな別のクラスにいっちゃったか…。残念だなあ。」
さっき言ったこの四人は、小学六年生の時、特に仲が良かったメンバーである。よく放課後遅くまで教室に残っていて、担任に『放課後組』と名付けられたのも、いい思い出だ。
自分のクラスにその四人の名前がないことを知り、俺はガックリと肩を落とした。
「はぁ。まぁでも、話せる子が何人かいるだけマシか…。」
俺はそうつぶやいて、先生方の指示する方へ向かった。
「一年三組の人ー、こちらで組章を受け取って下さーい。」
名前も知らない先生の言う通りに動いていると、見覚えのある人影が見えた。
「ん?あれ、そこにいるのはまさか…。」
あの姿、間違いない。あれは…。
「ミハル⁉︎」
「げっ、ヨツ姉…。」
この人物、ミハルは、先程言った通り、放課後組のメンバーのうちの一人である。なぜか俺に見つかると逃げ出す習性があり、僕っ子&敬語キャラである。
俺に気づいたミハルは、やはりその場から逃げ出そうとする。しかし、そこを俺はすかさず捕まえる。
「おっと、逃げる気でしょ?」
「あ、どーも…。」
あっさり捕まったミハルは、軽く挨拶をする。
「お前ぇ、なに別のクラスにいっちゃってんのさ。」
「いや、僕に決定権とかないんですけど…。」
困ったように返事をするミハル。そりゃそうだ。ミハルは何も悪くない。ただ俺が意味のわからないことを言っているだけだ。
「まぁいいや。じゃーまたね。」
俺は適当にミハルと別れると、そのまま自分のクラスに向かった。
無事入学式を終えると、俺達はまた運動場に出ることになった。
そしてそこで再びミハルを発見した俺。もちろん捕まえに行った。そしてもちろん逃げられた。
「ミハル、待てー‼︎…って、うわあ⁉︎」
ミハルのすぐそばに追いついたかと思えば、人影から突然タツキが飛び出してきたのだ。
「タツキぃぃ‼︎ビックリしたでしょうがぁ!こけるかと思った!」
「うぇーい。」
「あぁーもうホントうざい!」
これがタツキ。ミハル同様、放課後組のメンバーであり、よく煽ってくる。また、話が通じない時もよくあり、当たり前のように意味不明なことを言う。実に面倒な奴である。
そう言いながら俺はタツキを思いっきり睨む。だが、いちいちイラついていてはキリがない。ふぅ、と息を吐き、自分を落ち着かせる。
「はぁ、ねぇタツキ、ナギサどこにいるか知らない?確か君ナギサと同じクラスだったでしょ。」
もちろん、ナギサも放課後組のメンバーだ。詳細は後に説明する。
さっき、クラス分けの書かれた紙をもう一度見直した俺は、タツキとナギサが同じクラスだということに気がついたのだ。そこで、タツキに聞いてみた、というわけだ。
「んー?あぁナギサか。さあね。アイツ帰ったんじゃね?」
「えぇっ、またぁ?」
実は卒業式も、ナギサに会うことができなかった俺。
「うぅ…、じゃあまた放課後組のメンバーで写真撮れないじゃん。」
俺が頬を膨らませてそう言うが、タツキは平気そうだ。
「まぁいいんじゃねぇの?四人で撮ればi──」
「ぅおりゃー‼︎」
「うわあああああ⁉︎」
今度はなんだ⁉︎と叫びそうになるのを必死に堪えた俺。声の正体は…。
…ショウだ!
ショウ。コイツは放課後組の中でも特に煽りがキツい奴である。また、絶対世代じゃないだろうというネタを知ってることがあり、担任と俺らの世代じゃない話で盛り上がっていたこともあった。そしてメンバーの中でおそらく一番足が速い。
「おーまーえー‼︎ビビらせんなっての!」
「なんだよー、来てやったってのに。」
ショウは全く悪びれる様子はなく、すぐにタツキと談笑を始める。
「ほんっと、切り替え早いよね…。」
「え?何?」
「なんでもないですーっと。」
「なんだよそれ…。」
しばらくの間、そんな会話をしていたが、流石にずっと運動場にいるのもアレだ。
「じゃ、もう帰っていいっぽいし、ぼちぼち歩きますか。」
「ん、そうするか。」
そう言って、俺達は中学校の門をくぐって外に出た。
歩く、とは言ったものの。
俺達は今、中学校のすぐ隣にある公園の桜の木の下で、のんびりと会話をしている。どうやら、帰る気がある人はいなかったようだ。
「…ってことがあって…。」
「あぁー、アレな。」
それぞれのクラスの話、そこでどんなことがあったのか、などを楽しく会話していた。そこで、タツキとナギサ、そしてショウの三人が、同じクラスだった、ということを知った。
「え、三人、同じクラスだったの⁉︎」
「そーそー。」
「嘘でしょ…、めちゃくちゃ固まってるじゃん…。」
俺はガックリと肩を落とす。あれ、これさっきもやった気が…。
「あれ、じゃあミハルは?何組だったの?」
「六組です。」
サラリとそう答えるミハル。
「あ、なるほど、クラスのある階が違うんだね。そりゃ、会わないわけだ。」
俺が一人納得していると、ふと、あることに気がつく。
「ん?ねぇタツキ、タツキ達のクラスって七組だったよね?」
「おぅ。それがどうした?」
タツキが首を傾げる。それに対して、俺は衝撃の事実を告げた。
「…俺だけクラスのある階が違う…!」
その場が一瞬静かになる。だが、その静かさはずっとは続かない。
「え、あ…。うん、ドンマイ。」
タツキはそれほど重大そうではない。
「ちょっと!もう少し悲しんでくれてもいいんじゃないかな⁉︎」
「いや、まぁ…。乙。」
「はぁぁぁあ⁉︎酷っ!」
と言った俺だが、さほど気にしていないのも俺である。実際今、こうやって話すことができているのだ。クラスが違っても、放課後組が崩壊することはなさそうだ。
だが、タツキ達三人は同じクラス、ミハルはその隣のクラスだ。ちょっと固まりすぎではないか?そうは思ったものの、クラスを変えることなど俺にできるはずもなく、はぁ、とため息をついた。
「まぁもういいよ。ナギサも帰っちゃったっぽいし、まだいたとしても帰る方向逆だからね。会えそうにはないから、四人でだけでも写真撮ろう。」
俺がそう言ったが、返事がない。
「ちょっと、三人とも?聞いてr──」
「あれナギサじゃね?」
「えぇ⁉︎嘘でしょ⁉︎」
指をさされた方を見ると、確かにそこにはナギサがいた。すぐ近くにはルナもいる。
ナギサは、俺の小学五年生の時からの友達だ。そして、放課後組のメンバーでもある。だが、色々な人と仲良くするナギサは、六年生後半ではほとんど放課後組のメンバーに加われていなかった。残念である。
「ナギサ!それにルナも‼︎なんでここに⁉︎」
「やほーっ。」
「いやぁ、なんかヨツギ、この人のこと探してたっぽいし?」
ニコッと笑うルナ。そんなルナに、俺は感謝しても仕切れなかった。
「よぉっし!みんな揃ったし、写真撮ろう!」
「「「「おぉー!」」」」
卒業式で撮れなかった分、たくさん写真を撮った俺達だった。
二 校門にて待つ!
ミハルからみんな宛にメッセージが送られてきたのは、始業式の朝のことだった。
俺が、まだ慣れない中学校の制服を着て、準備万端、な状態になった時。いきなり、スマホの通知音が鳴った。なんだと思い見てみると、ミハルからこんなメッセージが送られてきていた。
『タツキ、お前を校門にて待つ!だからヨツ姉もそこで待て!』
そんな命令的で一方的なメッセージだったが、俺はすぐ、『了解』というメッセージを送った。
その日は始業式のおかげで、午前中を終えたらそのまま帰ることができた。しかし、俺には約束がある。すぐに帰るわけがない。
校門に向かうと、思っていた以上に人で溢れていた。どこを見ても知らない人ばかり。放課後組のメンバーどころか、同じ小学校だった子達すら見当たらない。流石、小学校が三校も集まっただけある。一年生だけで二百人を軽く超えているのだ。他の学年も合わされば、もっとすごい人数になるだろう。それだけの人数がこの同じ校舎で動き回っていると考えると、中学ってすごいな…と思ってしまう。
しかし、同じ場所にずっといても、道の邪魔になるだけだ。それに、先生達も「人を待ってないで先に帰れ。」と、俺の知らない人達に声をかけていく。その場に立ち止まっていたらすぐに声をかけられそうだ。
とりあえず、再び校舎に入ることにした俺。門の前だと、道が広がっていて、多くの人を見なければならないのだ。それなら、門の手前で、門をくぐる人達を見ていった方が見落としが少なくなるだろう。よし、そうしよう。
俺が再び門をくぐり、ある人の前を通り過ぎた時。自然と体が歩くのをやめた。そして、数歩下がってその人の前で立ち止まる。そして、ゆっくりと首を動かして例の人の方を向く。
「あぁー‼︎」
思わず声を上げた俺。しかしその人は特に驚いた様子はない。俺は再び声を上げる。
「ミハルだあああ⁉︎」
「え?あ、はい。」
名前を呼ばれたミハルは、なんてことないような表情で返事をする。
「えぇ⁉︎い、いつからそこに…。」
「ヨツ姉こそ。というか、どこにいたんですか?」
「門のとこって言われてたから、ずっと前で待ってた。まさかこんなとこにいるとは…。」
にしても、中学に入ってから、ミハル遭遇率がやけに高くなった気がする。
「んで、タツキ達見かけた?」
「いいえ、僕が見ていた限りでは…。そちらは?」
「いたら今頃引きずってでも連れてきてるに決まってるでしょ。」
「わぁ、恐ろしい。」
そんな会話をしていると、ふと、知り合いの姿が目に入る。
あれは…。
「あぁっ!タツキとショウ!」
「うぉ、こんなとこにいたのかお前ら。」
少し驚いたような顔で、二人はこちらにテクテクと歩いてきた。
「あ、ねぇ、ナギサは?」
俺はナギサと同じクラスである二人にそう聞いた。二人は顔を見合わせると、代表してタツキがこう教えてくれた。
「さぁ。あ、でも、教室のとこらへんにいたのは見たぞ。だからまだ帰ってはいないんじゃね?」
どうやらナギサはまだ校内にいるようだ。だが、俺達とナギサは帰る方向が違う。ここで合流しても、すぐ別れてしまうのだ。
なんだか、些細なことで、ナギサとの距離ができていくような気がした。クラスは違うし、一緒にいる友達だって違う。帰り道も違っているし、このままじゃ、ナギサと…。
嫌な考えが脳内によぎり、ブンブンと首を振ってその考えを打ち消した。きっと今は少し距離があいているだけ。いつか元に戻る。また前のように、一緒に遊んだり、くだらないことで笑い合ったりできるはず。でも…。
『いつか』って、いつのことなのだろうか。
「ヨツ姉?どーした、ボーッとして。」
「ぇ、あ、ごめん、なんて?」
「いや、だから、ナギサは方向違うんだし、帰った方が良くないか?って…。」
「あ、あぁっ!そ、そう、かも…ね。」
タツキの発言に、また少し嫌な考えが浮かぶ。
このまま、ナギサとの距離があいていって、悪気があるわけじゃなくても、まるでナギサを仲間はずれにするような行動が増えてしまい、次第に男女で仲良く、なんて関係もなくなっていく。それはつまり、「放課後組の崩壊」。
そんなの、上手くは言えないけど、すごく、ものすごく、嫌だ。
「…ッ。」
「ヨツ姉、行くぞー。」
「ぁ、ぅ、うん…。」
もうやめよう。こんな悲しいことを考えるのは。
みんなには、俺は必要ないかもしれないし。この関係も、なくなっても別になんとも思わないかもしれない。
きっと、過去に囚われているのは俺だけ…。
「っていう話を聞いてね。」
「マジかよ、ヤベェな。」
いつも通りの会話。このメンバーで話をすると、どんな嫌なことも、辛いことも、全て吹き飛んでしまう。随分と俺に合ったメンバーだ。
「そういえば、中学といえば部活ですよね。どこ行くか決めました?」
ミハルが、タツキとの茶道ごっこをしながらそう聞いてきた。
「まだ決められないよー。だってどんな部活があるかわかんないもん。」
「そーいや、今度部活紹介的なのやるらしいな。」
ショウがそう言う。そんな会話から、自然と話は部活の話になった。
「なんかさ、こんな部活あったら入りたいなーとか、この部活入りたいなーとかある?」
「おれは小学校の時からやってたし、吹奏楽入ろっかな。」
「あぁー、タツキ鼓笛隊入ってたもんね。」
話にはあまり出てこないが、実はタツキ、鼓笛隊の打楽器をやっているのだ。
「やりたいこと決まってる人いいなー、俺は全然考えれてないや。」
「なるほど。まぁ、今度の部活紹介で、気分が変わるかもしれませんし。」
「だねー。楽しみだなぁ…。」
次回に続く。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
今回の話では、ヨツギが放課後組の崩壊を恐れる、という話でした。
この中学生編では、ヨツギの放課後組に対する想いや考え方などがよく出てきます。中学生になったことで、この関係について深く考えるようになったんでしょうか…。そういうシーンが何度も出てくると思います。
中学生になって、関係などがガラッと変わってしまう。それは、良いこともあれば、あまり嬉しくないこともあります。
ヨツギや放課後組は、これからどうなっていくんでしょうか…。気になります!(作者です。)
さて、振り返りはこの辺にしておいて。
皆さんも、放課後組のような仲良しグループができている人は少なくないと思います。
その関係がずっと続くように、飽きないように。
そんな、素敵なメンバーのグループができたら、きっと毎日が楽しくなります。
一から見直すと、放課後組のメンバーって、考え方や価値観、性格などが、結構バラバラなんです。
でも、だからこそ、何か気づきなどがあるんでしょうか…。
あえて全然考え方の違う人と関わるのも、面白いかもしれません!
久々の投稿(?)で、前書きや後書きが長くなってしまいましたね。
今のところ、特に放課後組に対する批判などは無さそうなので、こうやって投稿しているのですが、残念ながら良い評価なども無くて…。ネットって怖いですね…。
そんな放課後組が、いつか色々な人達に好かれる物語になれば良いなと思っております!
それでは、また次の小説でお会いしましょう。
以上、乃多留夢でした!