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偉大なる母とはこのことか…。

太陽も沈み始め、空が薄暗くなってきた。ダンスホ


ールには既に何人かの貴族たちが集まり始めてい


る。王子と公爵令嬢の婚約なだけあり、上流貴族も


多く見受けられた。



「ミュゼレット様、そろそろお時間です。」


「ありがとうアン。」



ドレスを選び直してくれたメイドさんは名前をア


ン・リーストと言った。たしか、リースト男爵家は


平民から成り上がった新参貴族で貴族向けの雑貨や


お菓子の商売をしていたはず。平民出の男爵令嬢が


公爵家に仕えることは滅多にない。それだけアンは


優秀な人材なんだわ…。アンが選んでくれたのは、


私の瞳と同じ翆色のレースがふわりと広がる綺麗な


ドレスだ。金髪がよく映えて、背中のデザインが好


き。



「マジかよ、本当に着替えやがった。」


「別にいいでしょう?お父様のドレスはとにかく私


には合っていなかったのだから。」



ダリオスはさっきのものと同じまま…つまりお父様


が選んだものを着ている。昔からコイツは親や先生


など自分より目上の人に対して刃向かうような真似


は絶対にしなかった。



「…んだよ。不服そうだな。」


「いいえ?あなたは着替えないのね。」


「…あぁ。何を着ればいいのかわからないからな。


まあそんなに気にするほど悪いわけでもないし。」



たしかにダリオスの着ているものは年齢に相応しく


も幾分か大人っぽく見える。少し古いデザインみた


いだけど、それでも刺繍一つ一つが丁寧で繊細だ。



「…あら?布地が違うわね…もう少しサラサラして


いたと思うけど…。」


「ダリオス様のお召し物は奥様がお選びになったも


のですから。」


「お母様が?」


「はい。ダリオス様のお召し物は奥様御用達の仕立


て屋に特注で作らせたものです。」


「へぇ…。」



お母様御用達…きっと相当な数の貴族たちが手を伸


ばしているお店なんだろう。お母様は前王の姫、つ


まり現国王の妹君。今は部屋に引きこもり気味だけ


ど、時々参加する貴族のお茶会や舞踏会はいずれも


大繁盛で主催した貴族は社交界に名を馳せることに


なる。そしてめちゃくちゃ美人だ。美しい銀髪にそ


れこそサファイアみたいに綺麗な瞳。色白で華奢だ


けど、お母様の歩く姿は見る人を圧倒させる。ダリ


オスはお母様似だから将来は絶世の美青年とでも謳


われるんだろうなぁ…。というかなんでダリオスだ


け!?私たちのも選んでよお母様!!!



「そろそろ時間だろ。行くぞ。」


「おう!!」


「オ、オウ?」


「お、お嬢様…?」


「あ…えと、ゔうん!!行きましょうか。」


「ごまかしきれてないぞ」


「うるさいですわ。」





「け、結構人が沢山いますのね…。」


「さすが公爵家って感じだな。」



アンによるとまだ参加者の3分の1ほどしかきていな


いらしいけど…これほどとは…。規模が大きすぎる


わ…。思わず圧倒されていると近くに誰かが駆け寄


って来た。



「お姉様お兄様!!とっても素敵な夜会ですわね!


今宵は楽しみましょう!!」



いつになく目をキラキラさせている妹はいつになく


大人びたことを言う。



「カルティエナ?そのご挨拶は…?」


「あ、私夜会が初めてなので恥じぬ行動をしようと


思い、先ほどまでお母様について回ってたのです!


この挨拶はお母様が使ってらしたものを参考にして


みましたの!」



さ、さすが未来の完璧悪役令嬢…!!小さい頃から


こんなにしっかりして向上心の高い子だったなんて


…!!



「あら、3人とも何をしているの?」



そこに響く、綺麗な声。



「…ごきげんようお母様。」



そこには青の布地に銀色の刺繍が入ったドレスを着


た、お母様が立っていた。









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