よし、反抗開始!!
無事カルティエナと第二王子の婚約が決まり、今日
は婚約披露パーティー。このパーティーで婚約者候
補を見つけるぞー!!
「いや、難しいと思うぞ?」
「あら、聞いてたの?というか口に出てた?」
「がっつりな。」
おめでたい場というのもあり、私はいつもより少し
豪華なドレスを着ている。さっき見たけど、カルテ
ィエナは真っ赤なドレスを着て髪はぐるんぐるんの
縦巻きロールにされていた。たしかにカルティエナ
は赤も似合うけど、水色やピンクみたいな淡い色の
方が似合うと思うんだよなぁ…。カルティエナの趣
味というわけでもなさそうだし…。かくいう私はカ
ルティエナとは対照的に、目が痛くなるほど鮮やか
な青いドレスを着ていた。シンプルなデザインだけ
ど、その分宝石がキラキラと照らされて綺麗なドレ
スだ。だけど肩も首元も開いていて、だいぶ落ち着
かない…。こういうのはもう少し大人になってから
の方が良いんじゃ…?明らかに7歳児が着るような
デザインじゃないよね?とりあえず私は上からボレ
ロを羽織る。
「お嬢様、そのボレロはお脱ぎください。」
「?どうして?」
「今回のドレスは全て、旦那様がお選びになったも
のです。公爵家の人間ならば、下位貴族の人間に下
に見られることはあってはならないと、直々にお選
びになりました。」
つまり、カルティエナの真紅のドレスも、私のこの
背伸びドレスもお父様の趣味ってことね?…てか最
後まで私に婚約者がつかなかったのってお父様がド
レスを選んでたからなんじゃないの!?だめだ、ち
ゃんと自分で考えなきゃ…。
「…ねぇ、パーティーまでまだ十分時間はあるわよ
ね?」
「はい。」
「なら、着替えます。」
「お嬢様!?」
「いくら公爵家の人間だからとはいえこんな年齢に
合わないドレスを着ているのはおかしいでしょう。
それにお父様の選んだドレスはあまり似合っていな
いし。」
クローゼットを開き、ドレスを見ていく。うーん、
私自分に似合うドレスを探すのは苦手なんだよな。
「ねぇあなた。」
「は、はい。」
「私にドレスを選んでもらえないかしら?自分で自
分の似合うものを選ぶのは苦手なの。あなたが思
う、私に似合うドレスを選んでくれる?」
使用人は人形みたいだけど、仕事自体は一流だと思
うんだよね。ベッドはふっかふかでシーツはサラサ
ラ気持ち良いし、湯浴みは丁寧で眠たくなるし、な
により屋敷中どこもピッカピカだからね!満足顔で
振り向くと、なんかすっこぐ驚いた顔をしてた。
え、なんで?
「……私が、選んでもよろしいのですか?」
「?ええ、あなたに選んでもらいたいの。ああ、も
し不安なら、他の人も呼んでいいから。そうだわ、
カルティエナのドレスも一緒に選んでしまいましょ
う!連れてきてもらえる?」
「はい…ミュゼレット様。」
深々と礼をして、部屋を急ぎ足で出ていくメイドさ
ん。そんなに急がなくてもいいのに。
「何をする気だ?」
「あら、乙女の部屋に勝手に入るなんて、不躾だと
教わりませんでしたか、ダリオス?」
「お前しょっちゅう俺の部屋に勝手に入ってくるだ
ろーが。」
「私のはバレてないから良いのよ。」
「いや、バレてるから。」
ダリオスは扉のところに寄りかかり、呆れたような
目で私を見ていた。
「それで、何する気だよ。さっきメイドが人っぽい
表情をしながら走ってったけど?」
「人っぽいは失礼じゃない?まあ分からなくもない
けど。…そうね…強いて言うなら反抗、かしら?」
もしかしたら、私たちの行動一つ一つからこの先の
ストーリーが変わるかもしれない。この婚約披露パ
ーティーでも、何かを変えられるかもしれない。
「破滅に繋がりそうな芽は摘んでおかないとね。」
「……なんか、すんごい悪い顔してるぞ。」
「あら失礼。」
この時の私たちはまだ知らなかった。まさかこのち
っぽけな反抗によって、ストーリーが大きく変わっ
てしまうことを…。
「とかってありそうよね。」
「………。」