第2話 幕間 緊急会議、企業連合にて
その会議室ではホログラム投影による4人の姿が映っており、一人、悠然と造りの良い椅子に座る白髪混じりの髪をし、整えられた口髭を蓄えた壮年の男性の姿があった。
「さて、定刻となった。会議を開催させていただく。」
若白髪の男性は目の前にある造りの良い卓に両肘を乗せて、胸の前で手を組みながら語り始めた。
彼の仕事部屋でもあるこの場所は一瞬にして通信会議ができる場所を設けるために広いスペースとなっているが、ここを訪れる人にとって彼の部屋は狭いと思わせるものがある。その部屋には調度品の類が一切なく、簡素とも言うことができるがこれはこの会社に連綿と続く考え方の体現であり、トップは侮られないことが大事だが、下が侮られるようでは結果的にトップが侮られるのだという考え方の元、質実剛健という言葉が似合う部屋となっている。
言い方を変えれば殺風景な部屋で彼は端に数名を待機させて会議開始の音頭を取った。
「ふふ、不思議なものじゃな。この世界の中心たる5企業が1つの問題に協力して当たるなど、世界の終りにしかありえないと思っていたんじゃがな。長生きするもんじゃ。」
会議開始と言ったにもかかわらず会話の腰を早々に折りに来る年寄りを睥睨する。どうせ話の主導権を握るためだろうが無意味だ。この場所はそんな些事から影響を受けるようであればこの世界の未来は暗い。この場所にいるのはこの星で最も力を持つ5つの企業の代表者5名なのだから。
「そうですね、なかなかない機会ですから今後もこういう場所があるのは望ましい。ですが皆さんもなかなかに忙しいのでは?」
穏やかな壮年の男性の声が流れる。投影された映像に褐色の女性、年老いた剃髪の男性、茶色の髪に清潔感のある姿をした男性、老齢の方メガネをかけた女性がそれぞれ表示される。
「そうですね、忙しいのですから早速本題に入りませんか?現状、時間が用意されているとは言えませんし・・・。」
「ほっ、若い女性はせっかちでいかん。会議を円滑にするためには遠回りだとしても、意思疎通のための会話が必要じゃぞ。」
「若い女性でなくても思いますよ、これからの議題のことを考えれば猶予は無いのではないでしょうか。」
「その通りだ。アルタベーン社には悪いが議題には早速入らせてもらう。」
このままではずるずると老人のペースで進められそうなので強引に会話を切る。終了後に情報収集するならまだしもこの段階で話をされても迷惑なだけだ。
「あの声明について末端組織に送り込ませたスパイ曰く・・・、緑化組合による襲撃は確かに事実なようだ。しかし、このタイミングで襲撃予告となるとこちらとしてはわざわざの挑発であると考えているのだが。さて、であれば貴君らとしてはいかがするか。私としては『あれ』の初戦としては良い機会だと思う。」
本題に入ったところ、全員の居住まいが正される。代表者としてやっているだけあり、それぞれに威厳はある。
「まったく、少しくらい良いではないか。議題についてじゃが、儂としてもこういう状況であれば大々的に試す良い機会と考えているんじゃが・・・、ここまでおあつらえ向きじゃとどこからか情報が漏れていると思いたくもなるんじゃがの。」
「右に同じく、我が企業としても問題は全くなし、です。稼働可能ですね。今回の襲撃についてはわが社も皆様と同じ考えをしています。これは実験機会をもたらすよい機会でしょう。」
「あらあら、だとしてもデータの取りやすい戦場を作らなければいけないでしょうし・・・。どうしましょうかね?案はどなたか考えていらっしゃいますか?」
初老の女性が皆に問いかけると、少し沈黙が流れる。事前に根回しはしているが、あえて議長として提案する。
「緊急依頼という形をホームに提案するのはどうか。それで戦力が必要としてS,Aを他の街区に配備させれば良いだろう。そうして状況を見て戦力を投入すれば試戦場としては十分であろう。」
恐らく、中央政府の政務官たちも中央街区に被害が出るのは嫌であろうから反対はしないだろう。金はこちらが用意すればよい。
「それに、そもそもこの技術の完成にはホームへ依頼し改善を貰っている。ホームとしても実戦の機会とするこの判断は問題なしと判断するだろう。また、緊急依頼となればこちらが戦力を出す良い口実となるだろう。」
一息で言い切る。周囲の反応を見ても反対は無いようだ。
めいめいに賛成の声が上がる。
「さて、ではどこまでの戦力を出すか、だが・・・各社実験機は2機までとするのはどうだろうか?」
異議なし、と全員から声が上がる。
「感謝する。」
感謝を述べた後、マイク入力を一時的に切り部下に指示を出す。緊急依頼の発注要請と実験機の用意が必要になるのだから時間は少ない。
「さて、緊急依頼についてはこちらですでに指示を出した。ティタニアル社からは何もないのか?」
これまで黙っていた褐色の女性に水を向ける。
「いえ、特に何もありません。若輩者ですしおこがましいですわ。ひとまずわが社に影響がないようであれば皆様の決断に合わせます。」
脚を組みながら笑う。整えられた顔で鈴を転がすような声で語るが、そこにある存在に対して不気味と思わせる何かがある。その若さでこの場所にいるのだから何かがあるだろうがその情報は漏れ聞こえてはこない。
思考を元の場所に戻す。
恐らくどの企業も緑化組合について真剣に調べているだろうが、それでも具体的な組織力がつかめないという不気味な組織だが、そもそもこちらがやることは変わらないのだ。
「そうか、では以上で会議を終了とする。各々がた準備をお願いする。」
言い切ってスイッチを落とす。アルタベーン社の社長が何か言いたげな顔をしているが構わない。
部屋が一瞬暗くなった後に光を取り戻す。光を取り戻した部屋で一息ついて、合図を出して部屋から部下を出して更にイスに深く腰を掛ける。
眉間に深く刻まれた皺も見つつ考えるが、今回の騒動について思いを馳せれば不自然な点は多い。そもそも各社にとって最大機密の完成後、運用開始できるだけの状況を作ったとたんに今回の襲撃予告だ。まるで、試す機会をどうぞと言っているようなものだ。疑っても意味がないのであの場で言わなかったが、情報が漏れている可能性が微かながら存在するのだ。だがそれは最大機密の情報が漏れているということを指し、どんなに隠していても何らかしらの情報が漏れる状況があるということでもあるため非常に恐ろしくもある。
「さて、我らが新戦力はどこまで戦えるのか・・・。」
改めて深呼吸し、今後のスケジュールに思いを馳せて改めてホワイトヘザー社会長のクライスは居住まいを正して気を張り、手元の備え付けられた電話機をとりどこかへ電話をかけるのであった。




