第1話 幕間 整備士の戦いと賭け
アルガスの顔を横から眺めていると元からしわが多い顔をさらにしわだらけにさせながら帰還した機体をにらみつけている。
この前の戦闘のすさまじさを物語るかのように機体のところどころにもう意味をなさなくなってしまうほどダメージを受けた装甲版がなんとかくっついているという状態になっているのであった。
「おい!ファルフリード!要望はあるか!!」
ここまで難しい顔をしているアルガスは初めて見る。緊迫した状況に何も口に出すことができない。
ファルフリードは考え込みながらいくつか注文をしていく。
「次の襲撃場所までゆっくり行って1時間30分つってたよな。右手の交換は無視していい。足回りは入念に、左だけは完全に取替で頼む。」
ファルフリードは機体の損傷データを難しい顔で見つめながらアルガスに向かって要望を加えていく。
「よし、なら何とかなるな。しかし、時間を考えると本当のぎりぎりだな。ったく、お前は分かってんな、こんちくしょう!おいクルガン!!お前は左腕だ!ニコ!電装系の確認を頼めるか!」
アルガスが急ぎ、整備の段取りを組んでいく。機体チェンバーの中で大型のクレーンが何本も動いて機体を持ち上げて機体を点検していく。
「悪いアルガス!電装系は俺がやる。ニコには別途で頼みたいことがあるんだ。」
ファルフリードが難しい顔をしながらこちらを見ている。
「ニコ、お前にしか頼めない、力を貸してくれ。」
・・・何とも驚いた。普段、どちらかというと残念な男が見せる初めての緊迫した表情でいわれるとも妙にこちらも緊張感がます。
「どうしたの?」
「動作プログラムの追加を頼む。最悪の場合に備えておきたいんだ。この短時間だ。テストもしなくていい。ただ、最後の一あがきができるようにしておきたい。」
ファルフリードから渡されたプログラムを見てさらに驚愕する。
―機体の腕が無い時の起き上がりの挙動・・・?こんな短時間でできると思っているの!?
「わかってる、時間もないし無茶な頼みだ。だが、できるか?」
ファルフリードの表情を見ると先ほどの戦闘で頭のネジが飛んでしまったわけではないのだろう。正直、かなり難しいがこれまでの研究者生活で積み上げてきた自分のプライドにかけてあまりできないとも言いたくないようなぎりぎりの内容だった
「最低限、そのパターンを記録させればいいってこと?」
「・・・ああ・・・。最悪の中の最悪のパターンはさっきの狙撃機と『サジタリウス』がコンビで来た場合だ。正直、不意を打てる1撃がほしいんだ。」
言いたいことはわかる。先ほどまでの戦闘を見ていなかったわけではない。その2機は色々と桁が違うというのは素人目で見た自分でもわかる。だとしたら、1秒でも無駄にしたくない、急いで自分の端末を取りにいかねばならない。
「やってみる・・・!」
ニコは力を込めてファルフリードに言い切って見せるのであった。
整備士にとっては今こそが戦いの時なのだ。




