第1話 幕間 クルガンとケイティ
昼食後の手の空いた時間を見計らってケイティさんを見つけ、声をかけた。
「ケイティさん!ちょっと作戦前にお話が・・・。」
「どうしたのクルガン?今回の作戦について?」
社長の手料理を堪能した後、本来だったら多少余韻にふけりたいところであるがこれからのことでやるべきことが増えている。どうにも今回の依頼はやはりきな臭いのだ。ケイティさんは今回の作戦中も社長の近くで護衛として一緒にいるだろうと思うから声をかける。
「いや、すいませんね。どうやら今回の依頼は忙しくなりそうですから・・・。」
「気にしないわ。今回の依頼で何か気づいた点があるのね?それに私にしてほしいことがあるってこと?」
頭をかいて呼び止めることを詫びるがケイティさんはこちらを慮って話を進めてくれる。
「どうすればいいの?」
「ケイティさんと話すと話が早くて助かりますよ。といっても正直、いつも通り社長の護衛なんですけどね。ただ気になっている点があるとすると、今回の救助活動の職員が現場慣れしていないうえに戦力が少なすぎるんです。」
ケイティさんは顔を曇らせて考え込むが、今はそれを考えても予想されうる事態が多すぎる。
「これは奴らのよくやる手口なんですが、今回の指揮官であるロジエスのような無能な働き者を作戦の中枢に据える場合は大体別の思惑があります。本腰を入れて救助活動するなら恐らく100%ちょうどを達成する人間を送り込んできますから。」
肩をすくめて語るとケイティさんもふふっと笑って同意する。
「確かに今回の襲撃はリスク考えないで120%求めたからこそ起きた、ってことが言えるものね。」
「そうなんです。ただ、それには前提がいくつか出てきます。奴らはホームからの依頼に対して本腰を入れていないということ。六番街に情報が流されるということを知っていること。少なくとも救助活動が行われるタイミングや戦力が分かっていなければできないですから。それに、いささか自意識過剰な言い方ですが、私たちの戦力分析が二の次であること。どれもあまり前提にするには厳しすぎるのですが・・・。」
ホームの仕事は絶対の達成が求められるため、救助活動の失敗は許されない。加えて、少なくない資材や戦力を送り込んでいる中でわざわざ被害を受けることを良しとしている。そして、戦力分析を図るならばイレギュラーは少ない方が良いはずだ。あんな芝居がかったやり方でそれも実働部隊が動いた中で、本当にただ戦力として有用だからうちに依頼したのなら、奴らはただの馬鹿ということになる。
「大企業なら戦力が多少削れてもとかないの?」
「少なくとも、多少はリスクとして見込んでいたとしても、ホームからの依頼に対して目標値にたどり着けない可能性があるような状況にすることはあり得ないですから。」
「そうよね。救助部隊が出たのちに手薄な方を奇襲できた、ということは情報が流れているか、よほど思い切りがいいのかだけど・・・出来すぎよね。情報が流れていると見た方がいいわよね。」
お互いに腕を組み、考える。今のところはやはり情報が少ないのが痛い。できるだけ集めてきたものの、そもそもこの仕事そのものに対してホワイトヘザーがやる気がないという前提で調査はしていなかったのが痛い。
「ホワイトヘザーの上層部の意図が全く見えないんです。私たちに何が求められているのか分からないのが恐ろしいですね。」
「戦力が少ない方に配属されるか多い方に配属されるのか、そして少ない方に配属されて襲撃を受けた場合は『情報が流れている』という予想は当たり、ということね。おそらく外様の私たちは少ない方に配属されるのかしら?」
「・・・十中八九、そう見ています。ケイティさんにお願いしたいのは社長の身の安全の確保です。」
「いつでも撤退できるようにして、戦線維持のため社長が人質になりそうな状況は避けるってことでいいのよね。」
「ありがとうございます。ファルフリードさんにも同じ話をする予定ですが、現場の彼では社長の身の安全の確保まで気をかけることはできないと思います。そして、その間に僕は最も戦力配備が大きい部隊に潜入してきます。彼らが自然に救出量を目標値の倍以上を確保しようとしているならば、部隊長レベルでも敵側に情報が流されているおそれがでてきます。」
救出活動でもう一度救助活動するにもかかわらず、襲撃の恐れがある中で過剰に人を収容し足が遅くなる可能性を取るということは他の部隊に襲撃があり、自分たちの部隊に襲撃が来ないことを知っている可能性が高くなる。
「わかった。社長は私に任せて。あなたも気を付けてね。」
「当然。私はせめて社長が引退するまでは職場に居続けるつもりですから。」
「・・・私もよ。ふふっ、まったくいったいいくつまで働くつもりなのやら。」
二人は顔を見合わせて笑い、改めて戦場に向かうのであった。」




